AXCR2015 取材レポート 求むチャレンジャー! 世界へのトビラは開かれている!!

掲載日:2015年09月04日 エクストリームラリー    

取材協力/アジアクロスカントリーラリー日本事務局  取材・写真・文/田中 善介(BikeBros.)

Asia Cross Country Rally 2015 Special Report

当サイトでも2014年参戦レポートをお伝えしてきた国際ラリー。2015年で20周年を迎える記念すべき本大会は、タイ北部チェンマイをスタート&フィニッシュとして8月9日から14日まで、7日間に及び開催された。日本からは17名が参戦、そのうち14名が順位を残し、そして総合1位も日本人が獲得。レースとは一味違う海外ラリーに同行取材した。

異文化に触れながら自分への挑戦
コスト的にも敷居の低さが魅力

異国の道を自分のバイクで思いっきり走る。山を走り、村を抜け、川を渡り、スロットル全開で土煙を上げながらひたすら前へ進む…。

毎年8月に開催されるアジアクロスカントリーラリーは、もともと4輪のみの国際ラリーだったが数年前にMOTO(2輪)クラスが新設され、今年は日本人をはじめタイ、韓国、カンボジア、インドネシア、スウェーデン、カナダなど総勢41名のライダーが参戦した。台数では4輪(28台)を上回り、いかにライダーにとって魅力的なイベントなのかがうかがい知れる。

レースに美女は欠かせない!! 華やかなイメージもしっかりあります。

マシンはKTMやハスクバーナ、ホンダ、ヤマハ、ガスガス、フサベルなどさまざま。1日の移動距離は軽く300キロ(SS含む)を超えるため、まずは燃料タンクの容量増と給油タイミングがキモとなる。

チェンマイ市内で行われたセレモニアルスタートでは、2輪4輪すべての出走車両がゲートをくぐった。

ライダーは前日夕方に翌日のルート(コマ図)を受け取り、その日の晩に移動距離やどんな道か(コマ図に記されたマークのみ)を把握し、設定されたターゲットタイムと照らし合わせ、マシンの整備も含め翌日に備える。翌朝、まずはホテルからSS(スペシャルステージ)のPC(パッセージコントロール)スタート地点へ時間までに辿り着けるかに始まり、SSをフィニッシュしたらその日の宿泊地へ駆け出す。

ホテルに到着したらマシンの整備。もちろん自分の身体を休める時間も必要なのでそのバランスをコントロールする。毎日この繰り返しだ。途中でミスコースや転倒、マシントラブル、怪我などを負ってしまうとそれだけ到着が遅くなり、翌日に備える時間も短くなる。

毎晩見る光景。コマ図をマップホルダーに巻きつける作業は必須。ライダーによって整備内容は異なるが、だいたいタイヤ、オイル、エアクリーナーエレメントの交換は基本のようだ。

同行取材で傍から見て思ったのは「これはキツイなぁ~」というのが正直なところ。走るだけじゃなく何からなにまでぜ~んぶ自分でやるからだ(当然のことだが…)。しかしライダーの口からは「あそこはキツかったよな~」とか「リエゾン長過ぎだろー」とか「道無くない!?」とか、全身から噴き出す汗や寄って来る蚊などお構いなしに、整備をしながら明るい声が発せられる。中にはマシントラブルや負傷で先へ進めなくなった人もいたが、それはそれ。サポート側に回ったり松葉杖をついてホテル周辺でのんびりしたりと転換が早い。

日本人は骨折、打撲、マシントラブルに見舞われ3名が走るのを止めた。でもまあそれはそれとして、いまこの場所と空気を楽しめばいいのだ。

「何が起こるかわからないのがラリーですよ」と主催者は言う。状況を受け入れ前へ進むために対処する。ときには止まる勇気も必要だ。このラリーには本来人間が持っている能力を呼び覚ますきっかけがたくさんある。困難に立ち向かうチャレンジ精神やそれを乗り越えたときの達成感は計り知れない。それに国境を越えた助け合いの精神がある。言葉の壁など関係ない。

この大会は良い意味で競技色が薄い。個人参加で国をひとつのチームとし、サポートスタッフもいる。サポートはSA(サービスエリア)で燃料補給や整備を手伝い、冷たい水や軽食を用意してくれる。自分で準備した部品や工具類もサポートカー(今年は2台体制)にお願いし、宿泊はホテルでお湯のシャワーときれいなベッドが待っている。

このラリーに協賛している中央自動車大学校から、成績優秀な4年生数名がメカニックやサポートとしてチームに参加。現場の厳しさや難しさを経験し、将来に役立てて欲しいというプログラムの一環だ。

つねに先を走っていた2014年チャンピオン#1前田さん(総合8位)。キャメルバッグに水を補給するのは#34吉野さん(総合34位)。この日はとくに暑かった。

このラリーを簡単に言うなら「レースほどではないがツーリングではない」だろうか。ナンバーワンを競う必要は無いが、すべて自己責任という点において「海外ラリー体験の最初のトビラ」として最適だ。実際に、初参戦でおよそ2,500kmの距離を完走したライダーもいる。無理や油断さえしなければ、笑顔でセレモニアルフィニッシュを迎えることが出来るのだ。

そしてルートがまた素晴らしい。コマ図に沿って走るとその土地の空気、景色を全身で感じながら駆け抜けることになる。これは国の協力があってこそ。観光旅行でもないしシビアなレースでもない。緊迫した空気よりもどことなく和やかな雰囲気が漂っている。じつに不思議だ。

青い空に白い雲。広がる畑の風景の中をダァ~っと走る…だけだったら気持ち良いかもしれないが、実際は暑さとの闘いだ。

費用については、参加料が20万円強。期間中の宿泊費(朝晩食事付)が含まれ、自分の車両と整備に必要な工具、消耗品などをコンテナケースに格納して横浜港へ持って行けば、輸送手配は事務局任せでオッケー。あとは身ひとつで現地に向かえばいい。輸送代、自身の渡航費、保険費用、チームサポート費用、ガソリン代などもろもろ含め、ざっと50万円程度という費用はとても魅力的だ。

詳細は未定だが来年の開催も決まっている。海外を自分のバイクで思いっきり走りたい、ラリー体験してみたいと思ったら、今から来年のお盆休みに向けてプランを立ててはいかがだろうか? 現地での直前準備と終了後の休息を考えると、この大会のために10日間は確保したい。あとは「やってみるか!」という強い気持ちがあればいい。すでに世界へのトビラは開かれている!?

アジアクロスカントリーラリー2015の様子

大会初日はチェンマイ中心部でセレモニアルスタート行なわれる。地元警察の協力を得て会場へ向かってラリーマシンが大移動。カオスな道路が分断される。

LEG1のSSスタート地点。いよいよラリー開始だ。いまのところジャージもバイクもみんなの顔も小奇麗な状態。リラックスと緊張感が混在している様子。

今年のステージはタイ北部の山岳地域。この先は鬱蒼としたジャングルのなか曲がりくねった赤土の道が続く(#38 伊藤さん・総合24位)。

コマ図に沿って走っているといつの間にか村の中を駆け抜けている。舗装されているのは国道だけで、生活道路のほとんどの道がターマックだ(#21 石井さん・総合27位)。

太陽の近さを感じる標高を上げたステージ。山を焼いて畑にされた風景のなか、土煙を上げて快走。見てるだけでも爽快な気分だ(#7 福村さん・総合21位)。

クルマだったら容赦なく突っ込む巨大な水溜り、バイクは足元をすくわれないよう脇の盛り土の上をなぞってパスするのが賢明(#40 山田さん・総合20位)。

起伏が激しく曲がりくねった道が続く山岳ステージは、昨晩の雨でヌタヌタに。速さよりも転ばずに進むためのテクニックが重要(#3 江連さん・総合31位)。

地元の人間にとってはいつもの生活道路。路面状況がどうであっても慣れたもの。何人もの通行人を見たけど誰一人転ぶようなシーンは無かった。

普段は静かな田舎町に突然現れたラリー集団。その光景を珍しそうに見てしまうのは当然のことだろう。小さい子どもからお年寄りまで集まってきた。

LEG2のリエゾンは356.38kmという超ロングの移動距離がライダーを苦しめた。東京駅から名古屋駅まで一気に走るようなもの、と言えばわかりやすいだろう。

今年は昨年同様雨が少なく、胸まで浸かるような川渡りは2ヵ所程度だった。ほかは完全に干上がっているか、ぜいぜい足首までの深さ。

その日のステージを終えて続々とホテルへ到着するライダーたち。ここまでのルートもすべてコマ図を読まなければ到達できない。

ホテルの食事はもちろんタイ料理。夕食はその時間に行かないとすぐに無くなってしまう。到着が遅れるとこういうところにも影響する。

アジアの食卓は道端の屋台! 場所によって相当違うがビール(350ml缶)は50バーツ、食事は一皿45~75バーツくらい(1バーツ約3.7円)。だいたいおいしいけど日本食のような食い応えは薄い印象。こういう食事を楽しめたのは、実際のところ初日と最終日だけだった。

アジアクロスカントリーラリー公式サイト >>
※2015年大会のデイリーレポートやリザルトは公式サイトをご確認ください。

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