2013年のISDEレースがいよいよスタートした!

2013年のISDEレースがいよいよスタートした!

掲載日:2013年12月02日 エクストリームエンデューロ    

文/大川 誠  協力/KTMジャパンAnimalhouse Web

緊張と期待のレーススタート

ISDE(International Six Days Enduro)はもっとも古いオフロード競技で、6日間にわたって1,000キロ以上を走破する過酷なレースです。エンデューロ競技は、その他のモータースポーツと異なり、選手本人だけがマシンに触れることが許されているため、ライディングだけではなく、短時間で的確に整備・修理する技術が求められるなど、オフロード競技のトライアスロンに例えられます。ISDE(International Six Days Enduro)はそのエンデューロの最高峰と言えるレースです。

ついに迎えました1日目。国内のレースと同じように前日に走れる準備、そしていつも通りに朝食を摂り、ライディングギアに着替えパドックに向かいます。いつもと違うのは、通称“食券”を忘れない事です。毎日をスタートするにあたって必要となるもので、ホテルのドアにはスケジュールと一緒にこの食券が貼ってあります。このほか、ホテルを出発する前にはチームで持ち物チェックを行うのが、チームジャパンの毎朝のルーチンでしたね。

 

このような準備を経てパドックに向かい、自分のスタート時間を待つ事に。既にISDEのようなフォーマットのレース経験者の方にはご存じかと思いますが、スタートまでのルールや手順をここで簡単に説明します。

 

まず、パルクフェルメ(競技バイク用の駐車場で、決められた時間以外は入場出来ない)に入り、マシンをピックアップしたのちにワーキングエリアに移動(整備エリア)。そしてやっとスタートとなります。パルクフェルメにワーキングエリア、スタートはライダーごとに決められた時刻にしか入れません。パルクフェルメ入口には続々とライダーが集合し、自分の入場時間を待っています。まぁ、見るからに体格が良かったり、雰囲気が速そうなライダーばかりで、ですが自分の入場時間が迫るにつれ周りの事なんてまったく見えなくなってきました。そして、パルクフェルメ入場! この瞬間にやっと、ISDEに来たことを実感しました。その後、ワーキングエリアでマシンの最終チェックとなりますが、自分はKTMサービスを利用していましたから当然、KTMサービステントを利用。初日という事もあり最終チェックのみでしたが、合間にはイギリスから来たジェニーからレースの変更点などの情報収集と伝達、それにKTMサービスから提供されるライダーごとのスケジュール表を受け取り、スタートラインへ。

 

総勢700名ほどのライダーが次々と紹介されたように、自分もルーチンのごとくスタートをきりました。この瞬間は、緊張とか期待とかではなく、始まりなのになぜか爽やかな気持ちでしたね。こんな感じで1日目が始まりましたが、今日の目標というか作戦は、まずコースや雰囲気に慣れる事と、オンタイムでゴールする設定にした上で、自分の中で苦手としているルートをスムーズに、転倒しないようにクリアし舗装路である程度遅れを取り戻す事としました。さて、1日目の流れは、『スタート→海岸線のルート→テスト①→海岸線のルート→タイムコントロール①→岩混じりで所々林を抜ける一本ラインのルート→テスト②→林道のルート→タイムコントロール②→テスト③→林道のルート→タイムコントロール③→岩場の下りが続くルート→テスト④→林道、一本ラインの尾根、岩場のアップヒルを組み合わせたルート→タイムコントロール④→海岸線のルート→2度目のテスト①→→海岸線のルート→タイムコントロール⑤→岩場交じりの一本ラインの尾根道と林道を組み合わせたルート→2度目のテスト②→林道と林の間を走り抜けるルート→バドック直前のタイムコントロール⑥→ワークタイム→フィニッシュ』、の走行距離は約230kmです。

 

岩場以外はダストが凄く、特にほぼすべてと言っていいほどテストはいたるところで視界を十分に確保が出来ない程のダスト量。自分のスタートしたポジションは、出走全体の中盤から後半にかけてだったので、前には約350台ものマシンが通過した事になります。となると、テストのギャップやワダチは想像を超えていて、イメージしたような走りも出来ず、終始試行錯誤しながらのテストをこなし、結局1日目が終了となってしまいました。また、ルートでは岩場のアップヒルで登りきる手前で転倒してしまい、ラジエターを凹ませてしまうなど、大きなトラブルには至らなかったもののマシントラブルにも会い、初日にしてISDEの洗礼を受けてしまいました。ただ、オンタイムでペナルティーなしの成績で1日目は終了出来ました。それぞれのタイムコントロールでは、5~10分程度の時間的余裕があったので、タイムコントロール前のKTMサービスで給油の他、メカニックのアドバイスを受けながら各部の増し締め、スポークの緩みチェックと大切な自分のエネルギー補給などのサービスを済ませました。KTMサービスでは、タイムキーパーやマシンチェック、整備のアドバイスなどメカニックそれぞれに役割が与えられており、サービスを受ける側も混乱なく安心してレースが出来る体制であった事が非常に印象的でしたね。

 

ダストとの戦い

翌2日目は、1日目と同じコースとほぼ同じタイムスケジュール。コースにも慣れ1日目がオンタイムで終えたため、若干2日目は心に余裕が出てきました。体の疲れはほぼない状態でスタート。順調にコースをこなすも、やはりテストで慣れないギャップとワダチの攻略がレースを楽に運ぶための目下の課題になります。ルートは順調であってもテストで速く走れないと、結果オンタイム出来なくなる可能性があるという状態であることを少しずつ認識し始めます。また、コースは相変わらず乾いているため、終始ダストとの戦いであります。30分も走ればゴーグルに薄らとダストが積もり始め、視界も悪くなってくる程です。もっとわかりやすく言えば、ルートからいくつも先の山にあるテストの位置がよくわかる。なぜかというと、テストの位置が分かるほどダストが上空に舞っているので、否が応でもその状況が目に飛び込んでくるのです。そのような状態だとスピードも上がらなく、ギャップを拾ってしまい疲れにもつながってくるため、ラインをよく見ながらの走行を心がける事にしました。

 

この日も無事にオンタイムで終了しましたが、レース中にはこんな事がありました。海沿いのテストでライダーが転倒しレスキューが入り、テストの入口がクローズとなってしまいました。後続のライダーは続々とテストの入口に集まり、やがて渋滞が発生。自分もこの渋滞に巻き込まれ。次のタイムコントロールの時間が刻々と迫ってきます。やがてコースオープンになるものの、テスト入口は相変わらずの渋滞で進みも牛歩状態。やっとの思いでテストのスタートを切るものの、これまでのテストより前後のライダーとの間隔も狭く、輪をかけてダストが行方を阻みます。テストを終えタイムコントロールを目指しますが、計算していた余裕の時間も使い果たし、とりあえずがむしゃらにタイムコントロールを目指しますが100%遅着決定。やっとの思いで、ガソリン給油が必要なためKTMサービスでガソリンを補給していると、「ここのタイムコントロールはノーペナルティー」、「自分のペースでタイムコントロールを通過し、次のタイムコントロールには決められた区間の移動時間を守れば問題ないぞ!」というアナウンスが流れ、これでほっと一息。ここで非常に助かったのが、これまで仕事での海外経験で英語に対して少し耳が慣れていたので、落ち着いて重要なアナウンスが聞き取れた事です。幸運であったと一つ言えると思います。ISDEの出場を考えている方がこのレポートを読んでくれているのであれば、ここで一つアドバイスしたいのが、少しでも英語に慣れておくことをお勧めします。コミュニケーションも十分にとれるし、雑談だってジョークだって言い合える。もちろん緊急の時だって意志を伝える事が出来るので、話せないよりも話せたほうがよりレースを楽しめるので、ちょっと背伸びをしても英語に対しての準備もお勧めします。

 

悔しい遅着

今日、3日目を完走するとちょうど折り返し地点に来ます。今日のメニューはという、1日目と2日目のほぼ逆走になりますが、一部のルートとテストはこれまで走った事のない場所になります。その一部違うルートというのは、ボーリングの玉より少し大きいくらいの石が敷き詰められた干上がった沢を、1kmちょっと走るルート。これが後の遅着に繋がりました。1日目と2日目は2回通過する場所と1回しか通過しない場所がありましたが、3日目はこの沢が2回通過する場所に設定されていました。テストは、100%攻めるまでいかないものの、自分なりにこなれてきてきましたが、3日目のルートは絶妙というか、よく考えられたルートでした。沢を通過すると岩場交じりの尾根道で、これまでの2日間で出来たギャップの中を走るため、スピードも上がらず疲労も蓄積する一方。こうなると攻められないテストが更に攻められなくなるという、自然と悪循環のような状況に陥ります。そして、3日目の終盤に「さぁ、これでパドックに戻るぞ」と思っていたらどんどん遠ざかり、「ここ通ったよな」と思った次の瞬間にあの干上がった沢に到着。そう、自分は今日のルートを間違って覚えていたため、自分の中のペース配分が狂っていた事に気づき動揺し慌ててしまい、その瞬間に1mほどのステアケースで前転しバイクの下敷きに。ここは運よく地元のギャラリーが近くにいたため救出してもらったと思ったら、なぜか握手攻めに会い、おそらく転倒から再スタートまで3、4分費やしてしまったという計算のもと、次のタイムコントロールを目指しますが、テストを一つ消化しタイムコントロールに到着したのは指定時間の40秒遅れ。ここで初めての悔しい1分の遅着(ペナルティー)となり、あえなくここでISDEオンタイムでの完走が消滅してしてしまいました。しかし、失格ではないのでルーチンをこなし、前転はあったものの3日目も無事に終了。いつものようにフィニッシュ前のワーキングタイムでリアタイヤを交換しホテルに戻り、またこれもルーチンのように洗濯と食事をして就寝。今日もお疲れ様でした。

 

さて3日目も終了したこの日くらいから、だんだんと時間の設定が厳しくなってきて、KTMサービスでは3~4分程度しか余裕がない状況になってきて、自分にとって一番の問題は空腹となりました。KTMサービスは果物、サンドイッチが主体だったので腹もちがいいものがあまりないのです。これは次回への宿題ですが、朝食に腹もちの良い食べ物をたくさん食べるというところにも気を使いたいと思いました。

 

さてさて、これでレースは折り返し地点に来ました。次回は後半戦についてお伝えしたいと思います。

 

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