オレンジマッハ号(500SS H1B)大爆煙は何故おこる? チェックバルブ不良でオイルが落下し続けている?!

掲載日:2018年09月05日 メンテナンス    

文/田口勝己 写真/モトメンテナンス編集部
記事提供/モトメンテナンス編集部

カワサキ500SSマッハIII/H1や750SS/H2と言えば、2スト「大爆煙トリプル」として知られているが、何故、これほどまでに白煙が多いのか? 本当にエンジンオイルを大量消費しているのか? それとも他に理由があるのか? ここでは、オイルラインの途中にある「チェックバルブ」に注目してみよう。

硬球=スチールボールが
しっかり当たってオイルリークを防止

2ストロークエンジンの「分離給油式」にはオイルポンプがあるが、そのオイルポンプからシリンダーへとオイルを送給する途中には、エンジンオイルの自然落下を防止するための「チェックバルブ」機能が付いている。このチェックバルブが機能不全を起すことで、停車中=気がつかないうちにオイルタンク内のエンジンオイルがクランク室に送り込まれ、最悪でクランク室内がエンジンオイルで満たされてしまうことがある。

こうなると最悪で、事態に気がつかずにキック始動を試みると、クランク室に溜まっていたエンジンオイルが燃焼室に回り、ウォーターハンマー現象となって行き場の無くなったオイルがピストンを破壊!! 最悪でコンロッドを曲げてしまうことにもなる。

また、油圧の力でヘッドガスケットが先に吹き抜けて、不幸中の幸いで「命拾いした!!」なんて経験をしたことがある2スト乗りもいるはずだ。旧車のトラブルは思いも寄らないことが多いが、特に2ストロークエンジン車では、想定外のトラブルに見舞われてしまうことも時にはある。

分解可能ならバラしてメンテナンス
非分解式なら部品交換なのだが……

ヤマハ2ストエンジンでは、オイルポンプから吐出されるエンジンオイルのフィッティング部(バンジョーや樹脂フィッティング部)にスチールボールとスプリングが組み込まれ、ポンプボディーにスチールボールをセットし、そのボールをスプリングで押し付けオイルリークを防止。オイルラインを取り外したときには、このスチールボールとスプリングを紛失しないように要注意だ。

カワサキトリプルの場合は、オイルラインのシリンダー側バンジョー内にこのチェック機能が組み込まれており、初期シリーズのトリプルでは分解可能だったが、後期モデルでは非分解式でバラすことができない。

取り外したオイルラインは全体をパーツクリーナーで洗浄し、チェックバルブ側を下向きにオイルラインを吊り下げて点検してみると良い。バンジョーからオイルが滴り落ちなければ良い。

大爆煙シリンダーのオイルラインを分解したところ、スプリングが拡がってスチールボールが沈んでしまう寸前だった。こうなるとバルブシートとの当たりが悪くなり、オイルリークが発生してしまう。

分解可能な初期モデル用オイルラインをバラしてみると、スプリング張力の低下やスチールボールの当たり不良でチェックバルブ機能が低下している例が多く、特に、スプリングの中にスチールボールが沈む(食い込んでしまう)ことでチェック機能不全になった初代モデルが特に多い。

単純な汚れやゴミ噛みが原因なら、分解洗浄(綿棒でバルブシートの当たりを磨いても効果的)で回復する例もあるが、ダメなときには何らかの策を講じたいところ。しかし、なかなか名案がないのが正直なところである。

ここでは、スチールボールの交換とシートの当たり確認、さらにリークチェックの様子をご覧頂くが、普段、例えば数週間乗らなかったことで久々にエンジン始動したところ、それこそマフラーからは大爆煙!! といった車両はカワサキトリプルに限らずチェックバルブ機能の様子を点検してみるのが良いだろう。

スチールボールの当たりが今ひとつ良くないときには、スチールボールに平ポンチを当てて、軽量ハンマーでコツ、コツ、コツ、コツ、コツ、コツッと叩き、スチールボールを新品に交換する。ベアリング硬球を利用できる。

バンジョーボルトを通してからナットで仮固定。バンジョーボルトの通路にオイラーを押し付け、ライン内にエンジンオイルを送給する。そしてオイル落下が無いか? しばらく吊って確認してみよう。

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