ホンダ VFR1200F
ホンダ VFR1200F

ホンダ VFR1200F – ホンダ最高技術の象徴が凱旋

掲載日:2010年03月18日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

ホンダ最高技術の象徴
VFR1200Fが国内仕様として凱旋

「今でも、ホンダの最高技術を投入したモデル、というポジションに変わりはないですか?」という私の問いに対して、「はい、間違いありません」と、ある担当者が発表会の会場で力強く答えてくれた。

そう、“V4(=V型4気筒エンジン)”は、やはりホンダテクノロジーの象徴であり、“VFR”は特別なブランドなのだ。1979年のワークスマシン「NR500」には楕円ピストンというホンダの執念が注入され、V4の歴史はそこから始まった。その後約30年間、V4を搭載した数々のモデルが販売されてきたがVFRは常に特別な存在だった。その3文字は、いつの時代もホンダの最高技術が投入された市販車を意味していたからだ。

そして、欧州などで先行販売されていた最新のVFR1200Fがようやく日本仕様として凱旋を果した。VFR不在の国内ラインナップに不自然さと寂しさを感じていたファンも、これで溜飲を下げることができるに違いない。しかし、それだけにハードルも高いはずだ。今や世界一厳しいとも言われている日本の各種規制をクリアすることは容易ではなかったと思うが、VFRという符号に対する我々の期待は常に大きい。果たして、数々の壁を突破して我々の前に姿を見せてくれたホンダテクノロジーの象徴は、どのような走りで楽しませてくれるのだろうか。

ホンダ VFR1200Fの試乗インプレッション

ホンダ VFR1200Fの画像

ホンダの最高技術を味わうには
このVFR1200Fに乗るしかない

独特のこもったような排気音と空気を振動させるビート感。あのホンダV型4気筒エンジンの黄金時代を知っている方なら、ちょっとブリッピングしただけでも思わずニンマリとしてしまうに違いない。そして、10メートルも走ればその喜びはさらに強くなるだろう。どこまでもフラットに伸びて行くかのようなV4のトルクは、ライダーに一切の恐怖感を抱かせないまま、一瞬にして公道には相応しくない速度に誘ってしまう。それを知ってか知らずか、このVFR1200Fの発表試乗会が行われた千葉県房総半島のゴルフ場周辺の道路環境は決して良好だったとは言えない。採石場などを往復するダンプが砂埃を撒き散らし、それが路面を白く染めている。通常であれば意識的にペースを落とさざるを得ない状況だが、VFR1200Fにとっては大したことではないらしい。256度→104度→256度→104度という独特の不等間隔爆発がタイヤを介してガッチリと路面を掴み、こうした環境であってもその駆動力は抜群だ。2気筒的なトルク感と4気筒的なレスポンス、そしてマフラーの排気デバイスが開く速度域では刺激的な加速も楽しめる、多面性と上質感を兼ね備えたエンジンだ。

ホンダ VFR1200Fの画像

タイヤを路面に密着させ続ける前後足回りと、磐石なブレーキシステムもエンジンの良さを引き立てる。歴代VFRが採用した片持ち式のプロアームは、プロペラシャフトを内蔵したオフセットピボット式スイングアームへと昇華したが、シャフトドライブであることをまったく意識させない仕上がりだ。ショックやトルクリアクションもなく、強固なスイングアームは淡々と路面を舐め続ける。前後ともにセッティングはもっとソフトでも良いと感じたが、全体的にはしなやかで乗り心地も良好。そして、いざハードブレーキという場合には剛性感タップリの前脚が奥の方でしっかりと踏ん張ってくれる。この高級感溢れる足回りに組み合わされるブレーキシステムも絶品だ。新設計の6ポットキャリパーによるフロントのダブルディスクブレーキが操作性に優れ強力無比なのはもちろんだが、コンバインドABSのコンビブレーキシステムによる前後連動ブレーキがVFR1200Fの走りと相性抜群。ブレーキペダルを踏むとフロント左側キャリパーの一番上のポット1対がリアブレーキと連動し適切な制動力を発揮するため、今回の試乗のように路面状況がベストとは言いがたい環境でも、信じられないほど効果的なブレーキングが誰にでもできてしまう。通常の走行であればブレーキレバーは不要と感じるぐらい良くできたブレーキペダルなので、機会があれば是非試してみてほしい。

ワインディングや高速道路、そしてタンデム時の走りの良さと快適性もVFR1200Fの強力な武器だ。並列4気筒に比べると圧倒的に横幅を狭くできるV4エンジンがもたらすリーン方向の運動性が悪いはずもなく、豪華なフルフェアリングを纏っていることを忘れそうになるほど、ハンドリングは軽くそしてニュートラル。タンデム時であってもライダーの意思を裏切るような挙動は皆無で、トルキーなエンジンとコンビブレーキシステムを駆使すれば前後両輪の強い接地感に身をゆだねながら軽快にワインディングをクリアできる。進行方向から押し返すようなフロントブレーキを酷使するよりは、リアブレーキの制動力を最大限に活用するコンビブレーキシステムをアテにした方がタンデムライダーにとっても快適であるのは言うまでもない。また、VFR1200Fは高速道路が待ち遠しいと思えるバイクだ。スポーティに走りたい時は適切なギアを選択して右手を操作、飛ぶように流れる景色と空気の層を引っ叩くような排気音に酔いしれれば良いし、のんびりと走りたい時は高めのギアを選択してコンスタントスロットルに徹すれば、大排気量ツインのようなまろやかなビート感が疲労を残すことなく目的地まで連れて行ってくれることだろう。

ホンダの最高技術を味わうには、やはりこのモデルに乗るしかない。そう思わせるに十分だったその仕上がりと、“VFR”の3文字が国内ラインナップに復活したことを素直に喜びたいと強く感じた。

ホンダ VFR1200Fの特徴は次ページにて

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