掲載日:2010年11月15日 バイク用品インプレッション
かつてはバイクを降りた後に電車に乗ったり、人と会ったりする予定がある場合は何を着て行こうか迷ったものだが、近年では用品メーカー各社が街着のようなデザインのライディングジャケットを多数リリースしているので、それほど困ることもなくなった。だが、毎日袖を通すような一着こそ、ライディングウエアとしての機能を重視したいものだ。本来ライディングジャケットは万が一の事態に備えるライダーの装備品でもある。街着感覚を重視するあまり、ライディングフォームを考慮しないデザインとなっていたり、機能しないほどプロテクションを薄くしたりというのでは、安全確保のために着用するライディングジャケットとしての意味がない。さて、今回テストをしたのは、RSタイチがニューモデルとして発売した「696 スマートウインタージャケット」である。製品を見る限りデザインは街着そのもの。手にとるとあまりにも軽くソフトなので「これも…」と思ったのだが、その認識は間違っていたようだ。
まずデザイン。アウター素材は手触り・風合いともに柔らかなコットンを採用しているのだが、縫製が非常にしっかりとしているうえに、ライディングフォームが十分に考慮されている。裾の両サイドや背中のセンターには突っ張りを解消するファスナーが備わり、これを開くことで前傾したライディングポジションにも対応。特に背中にはファスナーを開いたときだけ現れる反射材を装備するなど、ライディングウエアを熟知したRSタイチらしい工夫が凝らされている。また、肩と肘に標準装備されるCEプロテクターは着用しているうちにジワッと身体の曲線に馴染む素材となっておりアウターに全く響かないのだが、実際にはかなりの厚みがあり頼もしい。背中のフォームプロテクターも、簡易な1枚物としてはしっかりとした作りで好感が持てる。さらに、街着そのものといったデザインでありながらオプションのチェストプロテクターに対応するなど、こと安全装備に関しては標準的なライディングウエアと同等のスペックを実現していると言ってよい。
そして着心地。今回のテストでは撮影を兼ねてほぼ1日このジャケットを着用していたのだが、首回りの疲労感や肩こりが極めて少なかった。無駄な切り返しやボタン類、ベンチレーション、防水機能などが一切ないシンプルな軽量設計としたことがかなり効いているという印象だ。レディース向けのカラーとサイズも設定されているので、軽量ジャケットを探している女性ライダーにもオススメできる。また、唯一の機能装備とも言える着脱式のインナーはシルエットに影響しない薄手でありながら、高い保温性能を誇るサーモライト中綿を採用。よほどの厳寒期やロングツーリングでなければ、十分な温かさだと感じた。手首の絞りがやや甘く、そこからの風の侵入が気になったものの、最も寒さを感じやすい襟元の防寒対策はフロントのベルトとリアのドローコードで万全だ。このジャケットを細部まで観察していてとても感心したことがある。着脱式インナーの袖口が3つのホックによりアウター側に固定されていたのだ。この部分、多くのジャケットは愛用しているうちに切れてしまいガッカリすることが多いのだが、この入念な固定方法であればそうしたことも少ないはず。ライディングジャケットとして手抜きがない証だと言えよう。
裾の両サイドにはマチが設けられファスナーにより開くことができる。余裕あるライディングフォームとフロントファスナーの保護に貢献。
背中中央にも突っ張りを解消するファスナーを装備。写真では見え難いが、中には反射材を内蔵しており夜間の被視認性を向上させている。
ライディングジャケットとしては珍しいボタン留めを採用。もちろん、風の侵入を防ぐファスナーを併用する二重構造となっている。
ポケットつきの着脱式インナーにはサーモライト中綿を採用。オプションのチェストガードにも対応する固定用ホックも装備している。
前側のベルトと合わせて、襟の後ろ側にはドローコードを装備。引くだけで襟元から侵入する寒風をシャットアウトできる。
左手の袖口には、あくまでもさりげなく「Taichi」の刺繍が。ポケットは厳寒期のハンドウォーマーとしても有効な装備である。
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