ヤマハ トリシティを乗りつくす!(その1)「デザインと使い勝手をチェック!」の巻

掲載日:2016年10月28日 トピックス    

取材・文/一間堂  写真/井上 演  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

ヤマハ独自のLMW(リーニング・マルチ・ホイール)テクノロジーを採用し、2輪の軽快感はそのままに、3輪ならではの安定感を両立させた原付二種スクーター『TRICITY(トリシティ)』。今回、そんな注目モデルを数回に渡って検証します。まずは車体をじっくりと見て、その魅力に迫っていきましょう。

元気なヤマハ原付二種スクーター!
なかでも注目すべきがトリシティだ

いま、ヤマハの原付二種スクーターに注目が集まっている。その最大の理由は多彩なラインナップだ。

絶大なブランド力に加え、カスタムパーツも豊富で、スポーツ走行から通勤までをこなす『シグナスX SR』を筆頭に、最新のブルーコアエンジンを搭載したMAXシリーズの末弟『NMAX』。さらにオフロードテイストを盛り込んだデザインが新鮮な『BW’S125』、リーズナブルな価格で通勤を楽しくしてくれる『アクシストリート』など、ひとくちに原付二種スクーターと言っても、じつにバラエティ豊かなモデルによって、多くのライダーの支持を集めているのである。

そんな個性的なモデル群にあって、ひときわ異彩を放っているのがトリシティだ。

その最大の特徴はひと目見てわかる通り、フロント2輪、リア1輪を採用した3輪スタイルにある。3輪スクーターはこれまでも海外モデルなどでラインナップがあったが、ヤマハはそれらとはまったく異なる独自の機構「LMW(リーニング・マルチ・ホイール)」を開発。横風や段差、コーナリングなど、従来の2輪スクーターではバランスを崩しやすいあらゆるシーンで、抜群の安定感を見せるのだ。

ビギナーやリターンライダーもこれなら安心! 気軽に乗れるという理由でセカンドバイクとしてチョイスするビッグバイクユーザーも少なくないという。もちろん、3輪による超個性的なフォルムも大きな魅力となっている。そう! 「乗って新鮮! 走って新鮮!」それこそがトリシティの人気のポイントなのだ。

迫力あるスタイリングだけど
実際はスリム&コンパクト!

フロントに2輪を装備するトリシティは、一見するとその迫力あるボディに圧倒される。なかには「原付二種らしからぬサイズで普段使いに適さない」なんて思うユーザーもいるかもしれない。しかし、真後ろからの姿を見ればわかるとおり、フロントホイールはそれぞれカウルやマフラーよりも内側にセットされており、車幅は決して大きくはないのだ。

スペックシートを確認しても、トリシティの車体サイズは、全長1,905mm、全幅735mm、全高1,215mmとなっている。対して同じヤマハの人気モデルNMAXは、全長1,955mm、全幅740mm、全高1,115mmだ。なんと、全長と全幅はNMAXの方が大きいのだ。さらに、ホイールベース(軸間距離)もトリシティの方が40mmも短い。ホイールベースは短いほど小回りが効くとされているので、少なくともトリシティは、一般的な原付二種スクーター同様の取り回しが出来ると言えるだろう。

見た目のインパクトで「大きい」と感じるのは錯覚で、じつはスリムでコンパクト! だから、他の原付二種スクーター同様「足」として気軽に乗れる。実際に乗ってみると、3輪による「LMW機構」は雨の日や風の強い日でも安心だから、他の原付二種スクーターよりも「さらに」気軽に乗れる!と感じる。個性は強いけれど決してアクは強くない。このギャップもまた、トリシティの魅力と言えるだろう。

デザインチェック!

中央にヘッドライト、その上にはLEDポジションランプを装備する。視認性、被視認性ともに優れており、夜間走行も安心できそう。詳しくは今後検証する予定。

テールランプにもLEDを採用。グラブバーと相まって、実用性を高めながらもシャープなフォルムを作り上げている。シートはタンデム側の座面も広く、長距離タンデムランも楽にこなす。

機能チェック!

フロントサスペンションは左右別々に動くので、さまざまな路面状況を的確に捉え、高い安定感を保つ。段差だけでなく、横風や濡れた路面など、ライダーが不安に感じるシーンで強い味方になってくれるのだ。

水冷4ストローク2バルブエンジンを搭載。発進から力強いトルクでマシンをグイグイと押し進めてくれる。燃料供給は国内モデルでは初となる、ヤマハ独自の「YMJET-FI」を採用する。

左右それぞれのホイールにディスクブレーキを装備。撮影車両はスタンダードだがABSモデルもラインナップされている。より高い安全性、安定性を求めなるなら、ABSモデルが断然オススメだ。

左ブレーキレバーを握るだけで、前後輪にバランス良く制動力を発生させる「UBS(ユニファイドブレーキシステム)」を標準装備。ブレーキ操作をサポートしてくれるので、ビギナーでも安心。

利便性チェック!

速度計の他、燃料残量や時計、気温などを表示できる多機能メーター。スピードを示す数字は広角レンズで覗いたように円状に歪んだデザインとなっていて、見やすいながらも遊び心のあるものとなっている。

タンデムステップは折りたたみ式。使わないときは収納しておけるので、車体のスリムさを損なわない。ブラックアウトされていて、目立たなくされているのも大きなポイントである。

収納力チェック!

シート下の容量約20リットルのユーティリティースペースには、ヘルメットが1個入る。給油もシートを開けて行う。

足元にはコンビニフックがあり、カバンやコンビニ袋などを下げられる。使わないときは格納しておけるので、デザインの邪魔にはならない。

足つき&居住性チェック!

試乗者の身長は174cm。ライディングポジションはいたって自然なもの。フットスペースがやや狭く感じるが、実用には問題無いレベル。

足つき性は両足の爪先が地面に届く程度で不安感は無い。トリシティは自立しないが、直立状態での安定性は高いので、小柄なライダーでも不安は無いはずだ。

座面は広く、大きなグラブバーを装備している。タンデムライダーの居住性は高く、快適に乗ることができる。タンデムステップの位置もちょうど良い。

ヤマハSR400のスペシャルショップ
スラクストンの田中社長に聞いてみた!?「トリシティってどうですか?」

取材協力/バイクガレーヂ スラクストン(TEL/042-321-8212)

1978年の誕生以来、基本的スタイルを崩さずに発売されてきた日本を代表する名車と言えば、ヤマハSR400である。現行モデルでは燃料供給にフューエルインジェクションを採用するなど近代化が図られてはいるが、それも必要最小限のもの。「ザ・モーターサイクル」とも言えるスタイリングや機構は、まさに伝統と言えるだろう。

そんなSR400の専門ショップとして、2017年で創業30周年を迎えるのが、東京都小平市にある『バイクガレーヂ スラクストン』だ。同店代表の田中さんは、これまで数多くのSRを販売、修理、カスタムを行ってきた、まさにSRのスペシャリスト。今回はトリシティをスラクストンに持ち込んで、田中さんに率直な意見を伺った。

同じヤマハモデルでありながら「2輪」と「3輪」、「モーターサイクル」と「スクーター」、そして「伝統」と「革新」というまさに相反する2台…果たして田中さんの感想とは…?

「僕もトリシティには乗ったけれど、やはり3輪であって2輪ではないよね。それは良いとか悪いとかではなく、フラットな意味で“別モノ”ということ。何が別なのかというと、やっぱり安定感だね。バイクらしいヒラヒラ感はあるんだけど、安定感もある。デコボコの道なんかを走ってもちゃんと接地しているのに違和感が無い。だから、はじめてバイクに乗る人にはとても良いと思うよ」

じつは田中さんは、スーパースポーツなどのフルカウルモデルも大好きで、デザインに関しても肯定的。むしろSRとは全く異なる機構を持つモデルなので「これくらいシャープなデザインでちょうど良いくらいだよね」とのこと。

これまでSRをベースにさまざまなカスタムを作ってきた同店だけに「これを機に“3輪SRカスタム”なんてどうですか?」なんて言ってみたところ…

「2017年5月21日に山中湖でSRミーティングを開催するんだけど、それに向けて作ってみようかな?」なんて笑顔で話してくれた。

普遍的な魅力を持つSRを愛しながらも、決して新しいものは否定しない。だからトリシティのLMW機構にも興味深々なのだ。

次回はトリシティに乗って街へ繰り出します! 原付二種スクーターのメインステージとなるストリートでの使い勝手は如何なるものか? 乞うご期待!!

<ヤマハ トリシティ125 主要諸元>
  • エンジン = 水冷4ストロークSOHC2バルブ単気筒
  • 総排気量 = 124cc
  • 最高出力 = 11PS/9,000rpm
  • 最大トルク = 1kgf・m/5,500rpm
  • 変速機形式 = Vベルト自動無段変速
  • サイズ = 全長1,905×全幅735×全高1,215mm
  • シート高 = 780mm
  • 燃料タンク容量 = 6.6L
  • Fタイヤサイズ = 90/80-14 M/C 43P
  • Rタイヤサイズ = 110/90-12 64L
  • 価格 = 35万6,400円 ※価格は2016年10月現在

試乗ライダー プロフィール
浜瀬 将樹
2輪専門誌やエンタメ系のウェブライターをメインに活動中。最近ではバイク専用ギアに特化した雑誌『二輪生活』の編集を担当して物欲を刺激されている。愛車はロッカーズスタイルにカスタムしたヤマハSR400(2003年式)。

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