掲載日:2021年10月25日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
BLAZE SMART EV
排気ガスなどを一切排出しないことから、エコで環境にやさしい乗り物として注目されているのが電動バイク(EVバイク)だ。多くの製品が市場を賑わせているが、今回はその中からBLAZE(ブレイズ)のSMART EV(スマートEV)に試乗してみた。果たしてその実力や走りはどんなものなのだろうか。
ブレイズは愛知県名古屋市に本社を置く、次世代のEVブランド開発カンパニーで、ユニークな公道走行可能な電動モビリティを多く手がけている。そのブレイズがリリースするコンパクトな折りたたみ電動バイクがスマートEVだ。カテゴリーは原付一種で、公道を走る場合には原付免許とヘルメットの着用、自賠責保険への加入が必須となる。
車体は真横から見るとアルファベットの「K」のような、直線的でスタイリッシュなデザインとなっている。最大の特徴は、慣れてしまえばわずか5秒ほどでかなりコンパクトな状態に折りたためるということ。しかもその操作はとても簡単で、ナンバーとハンドルをワンタッチで折りたたみ、車体中央の丸い部分にあるロックレバーを引きながらシート部分を持ち上げるだけ。すると丸い部分を中心に、まるで傘をすぼめるかのように車体が折りたたまれる仕組みだ。これはかなり画期的な機構といえるだろう。
もう一つの注目ポイントは、車体の軽さだ。車両重量は約18kgで、一般的なママチャリとほぼ同じ重さなのだ。実際に持ち上げてみても、見た目よりかなり軽いのでびっくりする。メーカーでは「従来の原付の約1/4の重さ」とうたっているが、決して大げさではないと感じる。折りたたんで車に積むのも楽だし、体力の自信のない人でも無理なく扱うことができそうだ。
ここであらためてスマートEVの簡単なスペックを紹介すると、100%電気で動く原付バイクで、48V/417.6whのリチウムイオンバッテリーを搭載し、定格出力は0.35kwだ。最高速度は30km/h、航続距離は満充電で30km(30km/h定地走行テスト値)、満充電までにかかる時間は3.5時間となっている。家庭用の100Vコンセントで充電でき、バッテリーは車体につけたままでも取り外して単体でも充電可能だ。灯火類はヘッドライトを含め、すべてLEDを採用。また、前後ともに機械式のディスクブレーキを装備している。気になる価格は18万2,600円(税込)となっている。
ほかにもユニークな装備が満載だ。車体にはBluetoothスピーカーが搭載されており、スマホとつなげば音楽やナビの音声を流すことが可能。USBポートも備えているので、スマホの充電も可能となっている。また、ボタン一つで設定できるクルーズコントロールやセキュリティアラームを搭載するなど、小さなボディに便利な機能が詰まっている。
試乗の前にスマートEVをあらためて見ると、その華奢ぶりに驚かされる。ハンドルを持って押し歩いてみても、びっくりするぐらい軽い。真一文字に突き出たシートに果たして体重70kg超えの成人男性が乗っても大丈夫なのか? そう思いながら恐る恐るシートにまたがってみると、折りたたみ式ゆえの細かい接合部の遊びはあるものの、予想に反してがっちりとした剛性感がある。調べてみると耐荷重はライダーを含めて120kgとのことなので、実は全然余裕があったのだ。
フレームにあるメインスイッチをオンにしてスマートキーのボタンを2度押しすると、メーターが点いてマシンが起動する。その際、スピーカーからBluetooth接続の音声が流れるのがちょっと愉快だ。
走行モードは1~4まであるが、これは加速の強弱を切り替えるもので、最高速度はどのモードでも30km/hで変わらない。まずは1にセットしてスタートしてみると、電車の発車時のようなゆるゆるとした加速で、少々もどかしい。そこで4にセットしてみると、ヒュイーンというモーター音を発しながら、見違えるようにスーッと車体が進み出した。勢いよくスロットルグリップをひねると、車体がウィリーしそうになるほど元気がいい。モードに関しては、慣れと好みで調節するのがいいだろう。
軽い車体と短いホイールベース、そして12インチ相当のタイヤサイズもあってか、ハンドリングはかなりクイックだ。不用意にハンドルをこじると大きく車体が動くので、ゆっくりとした操作を心掛けたい。フロントには一応サスペンション機能があるものの、リアはリジットだしシートは硬めなので、路面からのショックはけっこう伝わってくる。ところが、決して快適ではないはずなのに、低めのハンドルとバックステップ気味のポジションはけっこうスポーティで、走らせるとこれが結構楽しいのだ。たとえば海岸近くまでこのスマートEVを車に積んで行き、海沿いのフラットな道路をこのマシンで走れば、エンジン音がしない分、海や風の音、鳥の声などを聞きながら爽快なライディングができるだろう。ちなみに任意のスピードでメーターパネル下のボタンを3秒長押しするとクルーズコントロールが働き、その速度を維持できるので、長い直線などでは重宝する。
スロットル全開状態だと平地では30km/hをキープすることができるが、坂道に差し掛かると勾配に応じて徐々にスピードは落ちていく。メーカーの参考値として最大9度(勾配率では約15.8%)までの登坂能力があるとのことなので、実用性としてはまずまずと思う。
実際に通勤や通学で使うとなると、50ccのバイクと違って最高速度が30km/hしか出ないため、幹線道路では車に抜かれっ放しで気が休まらない。比較的フラットな土地に住んでいて、住宅街や裏道を使って駅まで行ける場合には、経済的で環境にも優しい手段となるのでおすすめだ。通勤のほか、気軽に車に積んで遊びにも使えると考えると、18万2,600円(税込)という価格は、バリュープライスと言えるだろう。