掲載日:2020年01月20日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/Chops
写真/海保 研(フォトスペースRS) 取材、文/淺倉 恵介
F.B Mondial HPS125
F.Bモンディアルは、1948年イタリアで創業。1950年代にはWGPで多くの勝利を手にし、世界チャンピオンを獲得するなど高い技術力を誇っていたが、経営不振に陥り1979年に解散。その後、同社の権利は、名門ブランドのバリューを求めた多くの人の手に渡ることになるのだが、2014年いよいよ再生のプロジェクトがスタート。そうして生み出されたマシンの一台が、今回紹介するHPS125だ。
HPS125のネーミングは、1940年代のF.Bモンディアルの人気モデル、Hipster Generationに倣ったもの。”Hipster”とは、個性的であったり奇抜なファッションを好む若者をあらわす言葉。HPS125は、まさに”Hipster”な一台だ。あえてジャンル分けをするのならスポーツネイキッドなのだろうが、そのスタイルはカテゴリーの壁を越えている。マシン全体のイメージはクラシカルにまとめ上げながら、各部を構成するディティールはラジカル。旧き良き時代性と、革新的な未来感が違和感なく同居している。現在、F.Bモンディアルのバイクは、デザイン・設計を本国イタリアで、生産は中国の工場で行っている。このHPS125の意匠は、さすがデザインの国の作品と唸らされるものがある。
搭載されるエンジンは、排気量124.2ccの水冷4ストローク単気筒DOHC 4バルブで、アプリリアのRS4 125と基本設計を共有している。車体はオーソドックスな鋼管ダブルクレードルフレームに、ツインショック式のリアサスペンションを持つコンベンショナルな構成だが、フロントサスペンションには倒立フォークを奢るなど、装備の充実ぶりも魅力のひとつ。
まず、跨っただけでも、国産車とは違う感覚に新鮮な印象を覚える。シート高は785mmと、決して高いものではないのだが、足つき性は意外なほど悪い。その原因となっているのが、座っても沈み込みがほとんどないシート、そしてマフラーのヒートガードだ。HPS125はスクランブラー的な2本出しのアップマフラーを採用しており、それがデザインアイコンにもなっている。実際、このマフラーはカッコイイ! だが、テールパイプが右足の脛のあたりを通るレイアウトのため、乗車時には右足を外側に広げるかたちになるためだ。慣れないうちは、右側のステップ操作にも違和感があった。マフラーを内側に追い込むか、ステップを外側にオフセットするか、メーカーになんらかの改善を求めたいところだ。
もっとも、テスターは身長163cmと小柄な上、伝統的な日本人体型で足も短い。身長が170cmもあれば、足つきについては気になるものではないだろう。そもそも車重が軽いので、シート高のワリには足がつかないと感じはしたが、足つきに困ることはなかった。取り回し性は、かなり良好だ。シートとハンドル、ステップの位置関係で、ライディングポジションには腰高感がある。ストリートファイター的な乗車姿勢で、ハンドリングもかなりクイック。このマシンは、ネオレトロ的なスタイリングにそぐわぬ、過激な運動性を持っているようだ。
コーナーではあまりバンクさせなくても、マシンは容易く向きを変える。純正装着タイヤは、トラッカー的なブロックパターンなのだが、フロントからは予想外の高さで接地感が伝わってきた。その反面、リヤからのインフォメーションがやや弱い。これはサスペンションの設定も関係しているように思える。実は、試乗後にリヤショックを確認したところ、プリロードが最弱になっていたのだ。もう少しバネを締め込めば、また違った印象であったかもしれない。
パワーバンドは7,500回転から上、中でも一番元気が良いのが8,000〜9,500回転の間。そう聞くと、ピーキーで扱いにくいのでは? と感じるかもしれないが、パワーバンドをキープするのは別に難しいことではない。高回転を使いきれるのが小排気量マシンの醍醐味、また高回転を使って楽しいのが小排気量マシンなのだ。シフトも気持ち良く入るし、なかなかに走らせて楽しいエンジンだ。ベースのエンジンが登場してから10年近く経っているのだが、より年式の新しい125ccのライバル達と比べても、その実力は未だに第一線級にある。振動の少なさなどは、トップクラスと言っていい。
カタログデータ上の最高出力は10kwだから、馬力換算で約13.5ps。エンジンのベースとするRS4 125の最高出力11kwから1kwダウンしているのは、マフラーの違いか? だが、実際のところパワーダウンを感じさせることはない。排気量が125ccなのだから、強烈なトルクがあるわけではないが、これで必要十分と感じる。峠道の上りでは、さすがに高回転を使い倒す必要があるが、街中では思った以上に元気。混雑した幹線道路を走る機会があったのだが、四輪の流れをリードするのにストレスを感じることはなかった。バックトルクも適度で、スロットルのオン/オフに気を遣わないで済むのも有り難かった。
残念なのはブレーキだ。フロントブレーキの制動力は実用レベルにはあるが、攻めたくなるエンジンと足回りを持つバイクなのだから、もう少し強力に効いてもいい。それ以上に気になったのがマスターシリンダー。かなりパツパツで、スイッチをオン/オフするようなフィーリング。レバー位置も遠目だ。もっとレバーの握りしろを大きく持たせて、コントロールの幅を広げたい。リヤブレーキはもう少し制動力を上げてもいい。と、ディティールに気になるところはあるものの、走って楽しいバイクであることは確か。そして何よりスタイリッシュ! 125ccクラスで、ここまでデザインにこだわったバイクは他にあるだろうか? 走る時は乗り手の服装にもこだわりたくなる、そんな趣味性の強い一台だ。
今回の試乗は、近畿圏で店舗を展開し多くの輸入車を手がけるChopsの試乗車をお借りして実現したもの。ChopsではF.Bモンディアルの魅力を高く評価しており、今後は力を入れていく予定とのこと。F.Bモンディアルに興味を持ったのなら、ぜひ一度Chopsを訪れ、実車にふれてみて欲しい。きっと、新しいバイク体験を得ることができるだろう。
バーハンドルはテーパードタイプ。輸入車に多い幅が広いものだが、バーエンド部が若干下がったスポーティなポジション。
リアサスペンションはコンベンショナルなツインショック。ショックユニットは、プリロードはダブルナット式で無段階可変だが、ダンピング調整機構は持たない。
ナンバーホルダーは、スイングアーム後端から片持ちステーで支持する最新デザインを採用。リアフェンダーはインナータイプも装備している。
燃料タンクの容量は9L、125ccクラスとしては標準的なサイズ。鋭角的なフォルムを持つが、ホールド性は悪くない。
シートはレーシングマシン並みに固く、沈み込みはほとんどない。シングルシート的な形状だがこれでダブルシート、タンデムは厳しそうだ。
フルLCDのメーターは、車速、バーグラフ式タコメーター、水温、ガソリン残量、時計を常時表示。オドメーター、トリップメーター、デジタルタコメーターのいずれかを選択表示できる。
フロントフェンダーはスチール製のメッキ仕上げ。先進的な他のパーツと組み合わせながら、違和感のないデザイン処理は見事。
ヘッドライトユニットは小型の異形タイプでスタイリッシュ。ハロゲンバルブなので、LEDやHIDに慣れた目には暗めに感じる。
カスタムマシンのようなテールビュー、この割り切りがイタリアらしい。テールランプはLED。小型ながら、十分な被視認性を確保。
シートはイグニションキーで脱着可能だが、小物入れスペースなどは存在せず、書類を収納するのが限界だろう。
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