フロントブレーキキャリパーのクリーニング

掲載日:2017年01月14日 特集記事    

文・写真/田口勝己、栗田晃

登場車両:ホンダ エイプ100

ピストンを押し出したら、外周の汚れを拭き取る。細く切ったウエスを巻いて乾布摩擦のように擦ると効果的にクリーニングできる。シリコングリスを塗布した後に、余分を拭き取るのにも都合が良い。

キャリパーピストン表面の汚れがレバータッチに影響!!
摺動部分のスムーズ化によって得られるリニアなタッチ

前後ドラムだったエイプのブレーキカスタムとして、NSR50RやXR100モタードのディスクブレーキ流用や転用は定番コースだった。街乗りなら純正のドラムブレーキで何の不満もないが、スチールホイール+ドラムの組み合わせをキャスト+ディスクにするのは足周りカスタムとしても魅力的なメニューだった。

そんなディスクブレーキの性能維持に不可欠なのがキャリパーメンテだ。片押しピンスライドの2ポットキャリパーは小排気量モデル用の標準仕様で、必要十分な性能を発揮してくれる。ただし、ブレーキ周りが汚れた状態で放置すると、ブレーキパッドの引きずりやレバータッチの悪化を引き起こす場合もある。

特にブレーキパッドが摩耗して、ピストンの露出量が増えた状態で放置してしまった時は要注意だ。ブレーキングで摩耗したパッドの粉=ブレーキダストが雨天走行や空気中の水分と結合してキャリパーピストンに付着し、ダストシールとの隙間に入り込むと、ピストンのスムーズな動きが阻害される。ブレーキダストには多かれ少なかれ水分が混ざって固着するため、これがピストンに張り付くとサビが発生する原因になる。

そうなる前に、定期的にキャリパーを外してピストンの汚れ具合を確認して、ダストが付着していたら中性洗剤やブレーキクリーナーで洗浄して、キャリパーシールとの間のフリクションロスを軽減すると同時に、防錆効果も期待できるシリコングリスやラバーシール組み付けスプレーを塗布しておこう。またパッドが摩耗した状態が長く続くとピストンの露出量が多くなるので、パッドは限界ギリギリまで使わないのも効果的だ。

不測のパッドピン抜けを防止するため、ホンダ車のキャリパーは抜け止め用のキャップがセットされていることが多い。マイナスドライバーで着脱するこのキャップは、ネジ溝が浅くなめ易いので注意しよう。

抜け止めキャップを外したら、その奥のパッドピンをヘックスレンチで抜き取る。組み付ける際にネジ山にグリスを薄く塗っておくと、次に外す際に固着せずスムーズに作業できる。

キャリパー奥にはパッドのガタつきを抑えるためのスプリングがあり、パッドを押し出す力を加えているので、ピンを抜くと同時にパッドがピョン!と飛び出すように外れる。パッドの摩耗量は大丈夫?

パッドを2枚とも外したら、キャリパーサポートを引き抜く。スライドピンに付着したグリスやゴムのダストカバーと擦れてフリクションを感じるが、グイ~ッと引き抜く。ピンが錆びていたら一大事だ。

キャリパー内部のオイルシールとダストシールを交換するならピストンを抜いてしまっても良いが、継続使用するならパッドをガイド代わりにして、できるだけ押し出しつつ抜けない状態を維持する。

ブレーキクリーナーやパーツクリーナーなどゴムシールに影響を与えないケミカルで、ピストンとキャリパーのブレーキダストや汚れを除去する。近くに水道があれば、中性洗剤で丸ごと洗うのも良い。

ピストン表面のめっきを傷めないよう、ブラシを用いる際はナイロン製ブラシや歯ブラシでやさしく擦る。スライドピンが収まる部分に溜まった古いグリスは、綿棒で掻き出してやるとよい。

パーツクリーナーをスプレーしても、キャリパーボディ側の汚れが落ちないのは、ピストンプライヤーで180度回せば一目瞭然だ。この作業を怠ってピストンを押し戻すと、ダストシールを傷つけてしまう。

パーツクリーナーで脱脂したピストンとダストシールの接触部分を潤滑するラバーシール組み付け剤をスプレーする。塗りすぎるとブレーキダストを集める原因になるので、余計に付着した分は拭き取る。

キャリパーピストンセパレーターを使えば、2ポットピストンを一度に押し戻すことができる。対向4ポットキャリパーならさらに便利。ただ洗浄と潤滑を行ったピストンは、指で押し戻すことも可能だ。

洗浄したらグリスアップやマスターのケアもお忘れなく

洗浄で汚れが落ちると同時に油分も洗い流すことになるため、復元時には必要なグリスアップも行う。パッドピンのグリスととパッド裏のスプレーは鳴き止めに有効であり、スライドピンのグリスもキャリパーを滑らかに動かすために有効だ。

キャリパーやマスターのゴム成分に悪影響を与えず、金属部品とのフリクションを低減するラバーシール組み付け剤や、強い力や高温が加わるスライドピンに塗布するスーパーゾイルグリスは、ブレーキの作動性向上に不可欠だ。

目に見える部分だけでなく、キャリパーピストンは裏側の洗浄も重要で、ブレーキピストンプライヤーは作業の必需品だ。ディスクブレーキセパレーターは直径の大きなピストンを押し戻す際に有効。

ブレーキレバーを握った時に、クククッ……と何かが擦れるような手応えがある時は、ピストンの摺動部ラバーシール組み付け剤をスプレーした上で、端部をプライヤーで摘まんで90度ほど回転させる。スプレーが浸透して当たり位置が変わることで、スムーズさが回復する。

マスターシリンダーピストンの潤滑とローテーションを行ったら、外したブレーキレバーもパーツクリーナーで洗浄した上でピボット部と上下の面、ピストンとの接触部分をグリスアップする。塗りすぎは汚れの元なのでホドホドに。





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