フロントブレーキスイッチの追加で安全性向上 しかし、レバータッチが今ひとつ。何とかせねば……

掲載日:2017年02月04日 特集記事&最新情報    

写真・文/モトメンテナンス編集部

フロントブレーキスイッチの追加で安全性向上
しかし、レバータッチが今ひとつ。何とかせねば……

1966年生まれなので今年で生誕半世紀!! 満50歳を迎える元祖本格スーパースポーツモデルのスズキ250/T20X6ハスラーバイク仲間がアメリカから里帰りさせたのが2014年の春。ベーシックな部分で手が付けられていない現状車が気に入り我がガレージの仲間に加わった。以来、基本的には磨き込み優先でここまで復活させることができましたが……

SUZUKI 250 T20 X6 HUSTLER 1966

北米仕様のノーマルハンドルはホースバックタイプと呼ばれる大アップハンだが、やはりT20オプションのフラットバー(一文字ハンドル)の方が圧倒的に似合う。そこでハンドルは当時の一文字レプリカを装着。しかしレバータッチが……

 

ヤマハYDSシリーズのライバルとして登場したのがスズキ250「T20」シリーズである。先代のT10シリーズを大幅に上回る動力性能で1965年に登場したのがT20だ。国内仕様は穏やかながら25馬力の高出力を発揮。アメリカ仕様は国内仕様よりもスポーティ度を高め(前後サスペンションカバーが外されスプリングを露出したデザイン)、最高出力は29・5馬力!! 翌66年にはカワサキA1がライバルに加わり、2スト250㏄のスーパースポーツシーンはヤマハ・スズキ・カワサキの三つ巴で活気づいた。

その1966年には、よりスポーツ度を高めたマイナーチェンジでT20はT21へと進化。しかし、このモデル名は国内専用呼称であり、アメリカでは「T20X6ハスラー」、ヨーロッパでの「スーパー6」というモデル名に変更は無く、発売1年で国内仕様と輸出仕様がほぼ同仕様になり、最高出力はいずれも30・5馬力となった。67年にはモデル名をT250と改名し、国内では大型ウインカーを装備。海外では兄弟モデルでT305も発売された。69年には新設計エンジンを搭載したT250Ⅱへと進化し、305㏄モデルはT350となり新登場となった。

このT20はアメリカ北部から里帰りした1966年モデル。砂漠や土漠に囲まれたカリフォルニアからの里帰り車は、乾燥気候によりサビが極めて少ないことで知られている。 一 方、アメリカ北部は雪が多く冬場はマイナス25℃以下が当たり前なので、そんな気候のため年間で半年程度しか乗れない道路事情が特徴だ。

また、バイク好きの多くがガレージを持っている例が多いため好環境で保管されているバイクが多いことでも知られている。そんな環境だったことが幸いし、我がT20も走行距離が少なくオリジナルコンディションを保っていた。でもエンジン下やドライブスプロケット周りの汚れやゴミの付着は凄まじかったので、灯油をスプレーボトルに入れて大量に吹付け、固着したオイルが分解したところを見計らってブラッシングを繰り返し、最終的にはワックス仕上げでここまで輝かせることができた。唯 一 、ペイント補修したのが前後フェンダーのシルバー部分。プロにお願いして美しく仕上げてしまうとトータルバランスが崩れてしまうため、僕自身のDIYペイントでバランス良くヤレ感が出るようなペイント仕上げにした。

北米仕様のノーマル車はホースバックタイプの大アップハンを標準装備している。しかし、僕の好みはフラットバー仕様なので、迷うことなく 一 文字ハンドルに交換した。その際にブレーキケーブルとクラッチケーブルの長さが合わないため、スペアで持っていたマッハⅢ用の 一 文字ハンドル用ケーブル(グレーアウターケーブル)を利用し交換した。クラッチケーブルはインナーとアウターの比率が違っていたのでタイコ部分からカットして長さを調整してタイコをハンダ固定。この作業でT20の寸法に合わせることができた。このマッハ用ケーブルは、ケーブルの途中にアジャスター機能が付くため、クラッチワイヤーの遊び調整を楽々行うことができる。

ブレーキケーブルに関しては、インラインタイプのブレーキスイッチが付く。このスイッチが曲者で、窮屈な取り回しの 一 文字ハン仕様にこのスイッチが付くとブレーキレバーのタッチと言うか、リリース時のブレーキレバーレスポンスが今ひとつ悪くなってしまう。ブレーキスイッチの接点を切り離すバネの強さと作動ストロークが今イチ良くないようだ。それでもリアブレーキの電装回路にフロントブレーキスイッチ回路を割り込ませたことで、安全性は格段に向上!! 僕の場合は、リアブレーキよりもフロントブレーキを多用する傾向なので尚更使い勝手が良くなった。

ケーブル交換後、レバータッチは今ひとつだが実用的には大満足の結果だった。もしかしたらフロントブレーキをメンテすればケーブルの作動性が良くなって「ブレーキレバーのレスポンスが改善されるかも?」などと淡い期待を膨らませながら、ドラムブレーキ内のクリーンナップとブレーキカム周りにグリスアップを施した。結果としては思い通りにならなかったので、次なる策を講じようと今まさに部品を探しているところです。

ブレーキメンテナンス時には2リーディング式ブレーキカムの調整を行った。実は、この作業をテキトウにやってしまい、ブレーキの効き具合が今イチになっている旧車が多い。ここでは単純な調整方法を説明しよう。考え方としては、2つのカムが「同時に動き」、「同じ力量」で2つのシューをドラム内壁(ライニング)に押し付けるように調整しなくてはいけない。

まずは連結ロッドを回して意図的に延ばし、基準側だけが片当たりになる状況を作り出す。ケーブルの遊びを減らして基準側のシューがドラムと接触し、ホイールを回したときに擦れ音が聞こえる程度までケーブルの遊びを無くすのだ。その状態をキープしつつ連結ロッドを回して長さを詰め、もう 一 方のシューもライニングに接触するように調整する。確認方法は、もう 一 方のシューがライニングに当たったときの擦れ音とホイールの回転抵抗が増えた瞬間である。この作業で状況確認できたら連結ロッドをロックナットで固定し、ワイヤーの遊びを好みにすれば作業終了だ。

 一連のブレーキメンテナンス後に試運転したところ、ブレーキの効き具合は以前以上にシャープ!! 軽い車体は 一 気に減速されるイイ感じだ。あとはレバータッチ&レバーレスポンスの改善を再度試みよう。スプリングを見つけないと!!

フロントブレーキケーブルとクラッチケーブルの交換(いずれも他機種用複製パーツを流用した改造品)と同時に、以前から気になっていたフロントブレーキのメンテナンスを実施した。

社外品のインラインスイッチ付きブレーキケーブルを装着したことで、スイッチ内の接点切り離しスプリングの張力が今ひとつでレバータッチに影響が出てしまった。いゃ待て!? ブレーキカムの作動性が影響? だったらいいけど、でしたが……

ブレーキサイズや2リーディング式の構造に変化はないが、当時のライバル車、ヤマハYDS3やホンダCB72、カワサキA1と比べて確実によく効くフロントブレーキ。そのヒミツは車重とシューにありそうだ。

ライバル車のブレーキシューはドラム側のライニングとの当たり面積が少なく、シュー中央部から摺動面全体の3/4程度しか当たっていないが、このスズキは最初からシュー全面が当たる設定だった。

ドラムブレーキを分解する際にはリンクのレバーがどの位置で噛み合っているか再現するためにマーキングを施した。このマーキングを忘れると、後々面倒なことになる。

おそらく新車当時からノーメンテナンスだと思われるブレーキカム周辺。カム軸にはグリス用の潤滑溝があるが、薄っすら固着気味のグリスが残っていただけだった。カジリが無く良かった。

ブレーキカムにパーツクリーナーを吹付けてグリスを溶かし不織布のシートで汚れを磨き落す。軸受け部分にキズがある場合はサンドペーパーやヤスリで段差を除去する。

ブレーキカムの軸受け部分にグリスを塗布。段差部分がグリス溜まりになっていて潤滑性をキープする。グリスポンプで塗布してから指先で溝全体と前後軸受け部分にならし塗布。

ブレーキパネルの汚れは徹底的に洗浄&除去する。あまりにも真っ黒な場合は灯油に浸すか灯油をスプレーして汚れを分解し、それからパーツクリーナーで洗い流すのが効果的だ。

ブレーキドラム側も同じようにクリーンナップ。ブレーキシューをパネルに組み付ける際には、シューのピボットとカム部分に鳴き止めグリスを薄く塗布することでビビリ感が無くなる。

メインスタンドがあるとメンテが楽だぁ~!! エンジン下にパンタジャッキを噛ませて前輪を持ち上げ、ホイール回転がスムーズか否か? リムに振れが無いかどうか? を確認中。

前輪の持ち上げついでに2リーディング式ブレーキカムの同調を実施。まずはリンクロッドを延ばす方向に2回転程度回す。次にワイヤー調整ナットをゆっくり締め込んでブレーキシューが僅かに擦るようにする。次にリンクロッドを詰める方向にゆっくり回し、シューの引き擦りが僅かに多くなるところでロッドを固定。そしてワイヤーの遊びを調整すれば作業完了だ。

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