マルチポイント制御のバッテリー点火

掲載日:2017年02月04日 特集記事&最新情報    

取材協力/MOTORCYCLE闇矢屋  写真・文/モトメンテナンス編集部

エンジン始動時の電気的トラブルシューティング「入門編」

マルチポイント制御のバッテリー点火

中型車以上のポイント点火車で一般的なのが、車載バッテリーから一次電源を供給するバッテリーポイント式。「ポイントギャップとFマーク」という点火時期の合わせ方に変わりはないが、このタイプではバッテリーのコンディションも重要になる。

 

ホンダCB750フォアの登場がきっかけとなり、日本製ハイパフォーマンスバイクの標準となった4スト4気筒エンジン。その草分け時代の点火システムに採用されたのがバッテリーポイント点火だった。セルモーターを標準装備する中型、大型モデルには、電力を点火系に回しても十分な余裕があるバッテリーが搭載されており、エンジン回転数によって発電量が増減するフラマグタイプより、点火性能が安定するのがバッテリーポイントの利点である。ただしバッテリーが弱い、あるいは上がると点火用電源もなくなるから、充電系やバッテリーのコンディションが重要になる。

ではバッテリーは万全であるという前提でポイント部分に注目したとき、調整はどのように行うのか。過去20年に渡ってCB750シリーズを扱ってきた名古屋の老舗ショップ、闇矢屋(やみや)で作業手順を伺ったところ「最大ギャップを0.3㎜近辺にセットしてFマークを合わせる」という手順はフラマグ点火と同じ流れだった。

CBの純正ポイントは、ポイントカムと進角装置が一体化したスパークアドバンサーと、2組のコンタクトポイントとコンデンサーをプレートに取り付けたコンタクトブレーカーASSYがセットで、このうちコンタクトブレーカーASSYは現在もメーカー純正パーツが購入できる。だがスパークアドバンサーは販売終了となっているため、ポイントカムの消耗具合によっては別途紹介するドエルアングル測定では理想的な数値にならない場合もある。ただ、鉄製のカムとベークライト製のポイントヒールではヒールの方が減りが早く、代表の大江さんも「CBのポイントカムで致命的なものはほとんどないから、カムの摩耗は心配しなくて良いですね」とのことだった。

4気筒エンジンはピストンとの位相によって1、4番と2、3番が同時点火になり、CBはポイントを正面から見て左側が1、4番で右が2、3番プラグを点火している。エンジン本体に十分な圧縮があり、キャブの同調が合っていれば、点火時期をしっかり調整することでアイドリングから高回転まで気持ちの良いフィーリングを味わうことができる。「ポイントが2セットになったらもう分かんない……」と諦めず、ギャップと点火時期を入念にチェックして、良好なコンディションを追求しよう。

フルレストア車両を販売する闇矢屋では、コンタクトブレーカーASSYは純正新品を装着。2個のポイントが向き合う複雑な様相だが、仕組みを理解すれば調整方法も見えてくる。

ポイントの荒れやヒールの摩耗でギャップや点火時期が調整できないほどくたびれたポイントのまま、チューニングやカスタムと言っているのは順序が逆。信頼の純正部品が1万4800円で買えるなら、点火系メンテナスとしてまず交換しておきたい。

上はバッテリーポイント点火の概略図。フラマグポイントと違って、イグニッションコイルへの電源がバッテリーから供給される。2組のコイルで消費電流が増しても安定した点火が期待できる。

初期のCB750フォアのスパークアドバンサーには2タイプあり、より小ぶりな左のタイプは最大進角がメーカー基準値まで到達しない場合もある。特にポイントカムのみを交換してアドバンサーを流用する社外点火システムを使う際、進角不足となる場合もあるので要注意。

エンジン回転の上昇に伴ってガバナーのウェイトが外側に移動した際に、カムがスムーズに回転するかを確認し、軸受け部のグリス溝がカラカラなら潤滑しておく。ウェイトのスプリングは闇矢屋で購入できる。

クランクシャフト端部をめがねレンチで時計方向に回してギャップを最大にしてシクネスゲージで測定(上)。調整が必要なら、ポイントベースをマイナスドライバーでこじってギャップを増減させる(右)。これは1、4番の調整。

ギャップ調整が済んだらエンジンを始動して、コンタクトブレーカーASSY上部の丸穴をタイミングライトで照らしてスパークアドバンサーのFマークがピッタリ合うようにベース円の位置を調整する。1、4番が決まったら、2、3番も同様に調整するが、こちらの点火時期はベース円を動かさず調整できるので、先に合わせた1、4に影響を与えない。

純正イグニッションコイルは左右で1セット。プラグコードはねじ込みタイプではなく単品交換ができないため、コードが劣化した場合アッセンブリーで交換した方が良い。なお、劣化したZ系コイルでよく見られる本体の「割れ」はほぼ無いそうだ。

ドエルアングルってなに?

バッテリーポイント点火では、ポイントの閉じ時間でイグニッションコイルの通電時間が変化する。ギャップ基準で考えると、ギャップが広いと通電時間が短くなる分スパーク電圧が不足する。そこで一次コイルへの通電時間をクランク(あるいはカム)の角度で見るのがドエルアングル。4気筒車は54°±2°が理論値だが、カムの摩耗などにより、必ずしも理論値通りに調整できない場合もある。

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