【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在

掲載日:2024年09月01日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/淺倉 恵介

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 メイン画像

Vespa GTS 150 Classic

ベスパの軽二輪クラスを担う、主力モデルであるGTS Classic 150。同社のアイデンティティともいえる、スチール製モノコックボディを採用し、落ち着きと軽快感を両立した乗車感は健在。ベスパらしい上質な乗り味と、オリジンを主張するオーセンティックでスタイリッシュなフォルム。魅力たっぷりの一台を、詳細に解説する。

伝統的なフォルムに秘めた最新のメカニズム

このところネオクラシックと呼ばれるジャンルが、世界的に流行中だ。多くのバイクメーカーが、過去の名車をオマージュしたスタイリングが与えられたモデルをラインナップ。それぞれ人気を集めているのは周知の通りだ。そうしたトレンドを鑑みるに、ベスパという存在のユニークさが際立ってくる。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 01画像

ベスパはイタリアのバイクメーカー、ピアッジオのブランド。その歴史は古く、最初期モデルの登場は1946年に遡る。エンジンから駆動部までが一体で、リアサスペンションを兼ねるユニットスイング式の構造や、フルカバードボディといったスクーターの基本構成はベスパにルーツがあるといっても過言ではないだろう。そして、車体はスチール製のモノコックボディを作り続けている。そしてデザインは、常にオーセンティック。

エンジンをはじめ、メカニカルな部分は常にアップデートされ、時代に合った最新のものとされている。だが、一目でベスパとわかる伝統的なデザインと、スチールモノコック製のボディは堅持。”旧き良きデザインと最新のメカニズム”という、あり方としてはネオクラシックと同じなのだが、その成り立ちが全く異なるわけだ。ベスパは”ベスパというバイク”を突き詰め、熟成に熟成を重ねたブランドなのだと言える。当然完成度は高い。今回紹介するGTS Classic 150は、伝統のスチール製モノコックボディに最新の155cc水冷4ストローク単気筒エンジンを搭載。電子制御も盛りだくさんの、伝統と革新が同居するベスパらしい一台だ。

ベスパ GTS 150 クラシック 特徴

熟成極まるスチール製モノコックボディ
最新の電子制御も充実

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 02画像

GTS Classic 150に採用されているスチール製モノコックボディは、ベスパの基幹技術。スチール鋼板を成形したモノコックボディが、直接ユニットスイング式のエンジンを支持している。スチール製モノコックボディのメリットは、なんといっても剛性の高さ。ベスパ特有の重厚感の高い乗り味は、このボディによるものと考えていい。

GTS Classic 150には、278ccのエンジンを搭載する兄弟車が存在するが、ボディは基本的に共通。それだけに車体のキャパシティには余裕があり、走行安定性や乗り心地は良好だ。もっとも、スチール製モノコックボディであれば、ベスパと同様の走行性能を備えているというわけではない。数値的な剛性面だけに目を向ければ、一般的なスクーターのパイプフレームでも実現は可能だ。GTS Classic 150の落ち着いた乗り味は、あくまでベスパが長年かけて蓄積してきた、スチール製モノコックボディについての技術があってこそのものだ。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 03画像

搭載されるエンジンは、排気量155ccの水冷4ストローク単気筒SOHC4バルブ。最高出力は15.6Ps/8,250rpm、最大トルクは15Nm/6,500rpmを発揮する。吸気システムは当然電子制御式のインジェクションで、Euro5排出ガス規制に対応。アイドリングストップ機能や、トラクションコントロールシステムのARS(アンチ・スリップ・レギュレーション)。キーレスエントリーの採用など電子制御技術も豊富に搭載されている。

ベスパ GTS 150 クラシック 試乗インプレッション

マイルドな乗り味に秘めた
剛性感の高い走りこそ真骨頂

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 04画像

ベスパらしい太めのグリップを捻ると、GTS Classic 150は軽快に発進する。排気量155ccのエンジンだから、さすがに暴力的な加速をみせるわけではないが、このマシンにそうした走りは似合わない。回転上昇も穏やかで、街中でも躊躇なく全開にできるのだが、そこで怖さを感じるようなことはない。なんというか、加速力が人の感覚から外れていない。スロットルの開け閉めで、乗り手の意識と同調するように加・減速してくれるのだ。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 05画像

そうは言っても別に遅いわけではない。加速感こそマイルドだが、一般道で交通の流れをリードするには十分な力を備えている。特に、日常域で多用する40km/h〜60km/h〜80km/hという領域では、本当に扱いやすくストレスがない。シティコミューターとしての動力性能は、かなりハイレベルにあるといえるだろう。スペックに見るところはない、走らせても”凄い”と感じさせる過激さもない。でも、気持ちよく、ストレスなく走れる。思うに、これがベスパが積み上げてきたスクーターのあるべき姿なのだろう。それほど市街地でのGTS Classic 150は快適に走る。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 06画像

高速道路も走ってみたのだが、さすがに物足りなさを感じる部分はあった。100km/hまではさほど待たずに到達するが、そこから上はなかなか伸びていかない。速度制限が120km/hの区間を走るのであれば、追越車線に居座るのは勧められない。だが、100km/h巡行には問題はないので、高速道路での長距離移動も十分にこなせるだろう。そこで活きるのが乗り心地の良さと、優れた直進安定性だ。ベスパといえば、スチール製モノコックボディ。この剛性感の高さは他にないものだ。仮の話だが、前後のアクスルを掴んで、捻ったり押したりすれば数値的には似たような強度を持つスクーターはあるだろう。だが、実際に人がまたがり、100km/hもの速度で走った時、ベスパは乗り手に優しく安心感が感じられるのだ。ガチガチではない、乗車感はむしろソフト。けれど、しっかりとした安心感が乗り手に伝わってくる。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 07画像

一般公道での試乗であったため、故意にABSを効かせるようなハードなブレーキングは憚られた。常識的な範囲でキツめにブレーキをかけてみたのだが、ABSが介入することはなかった。無闇にABSが効いて、ドキッとするようなセッティングではないことは好印象。もっとも、ブレーキの効き自体はソフトなので、そうそうロックするようなことはなさそうだ。だが誤解して欲しくないのは、決してプアーなブレーキというわけではないことだ。

<

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 08画像

シートがフラットで前後長にも余裕があるため、ライディングポジションの自由度は高い。ステップボードの幅がある分、790mmというシート高から想像されるものより足つき性は良くないが、着座位置を調整することで対処できるだろう。

GTS Classic 150のフロントサスペンションは、これまたベスパらしい片持ちリンクアーム油圧式。いわゆるトレーリングアーム式のボトムリンクサスペンションに類する機構で、構造上アンチダイブ性にメリットがある。GTS Classic 150は、このフロントサスペンションとブレーキのバランスが絶妙に良い。ブレーキをかけるとフロントは全く沈まないというわけではなく、リアブレーキとタイミングを合わせるように、減速に見合って車体全体が沈み込む。このフィーリングが、なんとも優しく安心感がある。この感覚にも、スチール製モノコックボディの剛性が寄与しているのだろう。構造上、フロントブレーキのみを使えば、フロントを押し上げるように動くはずだが、スクーターの減速にはリアブレーキの併用が当たり前。だから、このパッケージが正しく、ブレーキングが気持ち良い。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 09画像

正直に言ってしまえば、自分はベスパが好きだ。具体的には、走りが気持ち良いから好きなのだ。“走る”も“曲がる”も“止まる”も、マイルドで人に優しく心地良い。GTS Classic 150も実にベスパらしい一台で、気に入った。だが、気になる部分もないわけではない。それは取り回しの重さだ。車重は150kgだから、同排気量カテゴリーのライバルと比較すると20kgほどは重い。もちろん、重量級のリッターバイクのように押し歩きに辟易するようなことはないが、もっと軽く取り回せれば、さらに気楽に楽しめるのに……と惜しく感じた。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 10画像

と、重箱の隅を突ついてみたくなるのも、GTS Classic 150の走りがとても楽しかったからだ。“なんともベスパ”な一台であり、さすがスクーターの祖が生み出した最新モデルと感動できたのだった。

ベスパ GTS 150 クラシック 詳細写真

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 11画像

ヘッドライトをはじめ、灯火器類はフルLED。DRLも装備する。ベスパのデザインアイコンである“ネクタイ”もしっかりデザインに組み込まれている。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 12画像

フロントのトランクスペース内には、USB給電ソケットを装備。収納式の荷かけフックも備え、使い勝手は良好。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 13画像

ステップボードは前後に長く、幅も十分で居住性は高い。センタートンネルも低いので、マシンをまたぐのに苦労はない。タンデムステップは引き出し式。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 14画像

シートはコンベンショナルなダブルタイプ。フラットで着座位置の自由度は高い。シートスポンジは硬めで、乗り手を疲労させにくい。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 15画像

シート下のラゲッジスペースは、開口部は大きいものの高さがあまりない。フルフェイスヘルメットや、帽体のカバー部分が大きくシールド付きのジェットヘルメットの収納は不可。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 16画像

i-getエンジンは環境性能に優れ、Euro5排出ガス規制に対応。アイドリングストップ機能も装備する。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 17画像

フロントサスペンションは、ベスパ伝統の片持ちリンクアーム油圧式を採用。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 18画像

片持ち式ならではの、ホイールの意匠が嬉しい。フロントブレーキはABS装備の油圧式ディスクで、ローター径はφ220mm。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 19画像

キーレスエントリーを採用。アンサーバック機能付きで、シートの開錠も可能。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 20画像

メーターはオーセンティックなアナログ式スピードメーターと、カラーLCDの多機能パネルのコンビネーション。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 21画像

右ハンドルスイッチは、上から開錠、アイドリングストップON/OFF、ASR ON/OFF、セルボタン。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 22画像

左ハンドルスイッチは、上からヘッドライトHi/Lo、メーター表示切り替えのジョイスティック、ウインカー、ホーン。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 23画像

ベスパらしい、クラシックなデザインのテールランプ。光源はLEDで非視認性は良好。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 24画像

試乗車両にはオプションのアクセサリーパーツの、ウインドスクリーン ミドルを装着。防風性はかなり高い。

【ベスパ GTS 150 クラシック 試乗記】伝統のスチール製モノコックボディの乗り味は健在 25画像

オプションのトップボックスはボディと同色が選択可能。装着にはやはり純正オプションのリアラックが必要。

試乗ライダー プロフィール
淺倉 恵介
Web、雑誌を問わず、様々なバイクメディアで活動するフリーライター。カスタマイズやチューニング、レース関連に詳しいが、本人の嗜好は好き嫌いなくバイク全般に及ぶ。バイクの評価で一番重視しているのは”乗って面白いかどうか”だが、身長164cmと小柄なため取り回しの良さにもこだわる。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

愛車を売却して乗換しませんか?

2つの売却方法から選択可能!

方法1.オークション

出品前買取相場が分かる!
3000社の中から最高入札店のみとやり取りで完結。

方法2.買取一括査定

業界最大級の加盟店数!
最大12社一括査定
愛車が高く売れるチャンス

メーカー

郵便番号

タグで検索