【ベスパ GTV 試乗記】女子受け必至のキュートダイナマイト

掲載日:2024年03月11日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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Vespa GTV

スクーターの代名詞でありアイコンと言えばベスパ。これは全世界共通的なコモンセンス。そんなベスパの最新モデルであり史上最強のパフォーマンスを得たニューGTVはポップ&刺激のビッグな魅力を振りまく。

オーソドックスかつスポーティ
ブームの前からネオクラシック

オードリー・ヘップバーン主演の名作映画『ローマの休日』や松田優作のドラマ『探偵物語』などでのベスパの活躍の話をしたところで、イマドキのヤングにはピンとこないだろうが、実車を目の前に差し出してあげれば「おおっ! なんてカッコいいスクーターなんだー!!」と思わず卒倒するに違いない。これがピアジオが生み出したイタリアを代表するスクーター(バイク)、かのベスパであるぞ。

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元々航空機メーカーであったピアジオが、第二次世界大戦後に復興を掲げて造り上げた初代ベスパの誕生は1946年のこととされている。足を揃えてボードに乗せることで雨風を防げることはもちろん、スカート姿の女性からも支持されるなど、ベスパは世界中の人々に愛されて大ヒット。スクーターの代名詞的な存在となったのだ。

そんなベスパ GTVの最新バージョンは75年以上にもなるベスパの魅力を凝縮したかのようなルックスで纏められており、さらにベスパ史上最強パフォーマンスである約24馬力を絞り出す278ccエンジンを搭載するスポーティなモデルとなっている。

ベスパ GTV 特徴

街行く人が思わず見とれる
ほとばしるホンモノ感

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昭和52年製である私のバイク人生をよくよく振り返って考えてみると、ベスパという存在が近かったかと言うとそうでもないことに今さらながら気づく。

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16歳で免許を取得してすぐは、もはやブーム末期となっていた中古のレーサーレプリカを手に入れて日々峠道に通うことからはじまり、ネイキッド、ジャメリカンチョッパー(ジャパニーズアメリカン)、TW、ビグスクなどの流行を横目にバイクメディア業界に入り、そこから外車ブランドにどっぷりと浸かった。そのような流れの中でベスパというのはいつも憧れの存在ではあるものの所有することはなかったというのが現実だ。

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それでもベスパが気になってやまないのは、やはりスクーター=ベスパという図式がDNA的に頭脳に組み込まれているからに違いない。ただ最近はそれも我々世代くらいまでの話なのかもしれないと思うようになってきた。そもそも私が子どもの頃にはハイテステルほど日本中に原付スクーターが溢れかえっていた。その原付スクーターが誕生した源流を辿るとベスパといういわゆる始祖的な存在にぶつかる。まあモッズカルチャーのことを知ってからさらにベスパに興味が湧いたし、バイク雑誌を手掛けている頃はしばしば広報車両を借り出すこともあったが、どちらかと言えば多くの人々にバイク=ハーレーダビッドソン、自動車=フォードやメルセデス・ベンツのような代名詞的な認識として感じられていた時代があったことなどと同類のイメージで私もここまで来てしまったのである。

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そんな重要な存在であるにも関わらず、現在街中でベスパを見かける機会はほとんどないと言っていい状況だ。天邪鬼な性格である私は思わず「イマでしょ!!」とベスパに触手を伸ばしたと言うわけである。セレクトしたのは昨年登場したGTVの最新モデルでベスパ屈指のホットモデルだ。

ベスパ GTV 試乗インプレッション

快適性? 実用性?
カッコ良くて速けりゃいいでしょ!

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ベスパのラインアップはどれを選んでもベスパだと直感的に伝わってくるデザインで纏められているのだが、その中でもGTVは他と一線を画す特徴的なスタイリングが与えられている。例えば「ファロバッソ(ローヘッドランプ)」と呼ばれるフロントフェンダーに取り付けられたヘッドライトや、ノーカバードタイプのバーハンドルなどがソレであり、正統派クラシックでありながらモダンなエッセンスも織り交ぜたデザインはひと目見ただけでメロメロになってしまう。

セルスターターを押すとすぐにエンジンは目を覚ました。そのサウンドはシングルエンジン特有の歯切れの良さを持ちながらも優しく響き渡る。軽くスロットルを開けると車体は元気よく前へと進み始めた。ビンテージモデルと比べれば樹脂パーツを採用している部分も増えてはいるが、総じて質感は高いと思えるものであるし、何よりも車重が軽く感じられる。さらに最高出力23.8馬力、最大トルク26Nmというハイポテンシャルエンジンと、長年熟成されてきた自動エンジンクラッチの絶妙なセッティングで想像以上に速く感じられるのだ。

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シート高こそ790mmとロードスポーツ的な数値であるが、いわゆるビッグスクーターのようにシートやボディが横に広がって足つき性をスポイルするようなことがないのもポイントだ。前後12インチのタイヤサイズは現代的には小径に思えるが、ホイールベースの短さと相まって小回りが利く、だからストリートステージで敵無し状態で快走を楽しめるのである。

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大戦後、まだ荒れた道路状況で生まれたベスパは、タイヤパンク時に容易に交換することができるよう考えてフロントホイールを片持ち支持にしたと言われているが、この独特な懸架装置によるフロントタイヤの接地感がすこぶる良く、ワインディングロードなどツイスティな道でもヒラヒラとパスすることができた。

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日本ブランドでの250ccオーバーのスクーターとなると、そのほとんどが実用性や快適性を追い求めたスタイルになってしまいがちではあるが、GTVはサーキットに持っていってスクーターレースでも挑戦してみようかなという気にさせる。このスポーティな味付けはお国柄と言うか国民ライダーのニーズの相違が出ているのだろう。

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見た目のカッコよさや走らせた時の爽快感、これにはベスパに太刀打ちできるモデルは少ない。街中ではどこに置いても通行人から注目を浴びるし、ちょっと離れたところから眺めてはニヤついてしまう。それに加えてバツグンの気軽さがあるので、広報車の借用期間中は用事もないのについつい乗ってしまっていた。ベスパ GTVは老若男女問わずモテるバイクである。これは確実であり私自身借用期間が終わっても車両を返却したくないと本気で思った。

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最後に。返却時にちょっとした出来事があったので付け加えておく。今回テストに使用したベスパ GTVはシミー現象が感じられた。ハンドルを握っている時に手に伝わってくる程ではないのだが、ハンドルから手を離すと左右にブルブルとハンドルが振られるアレだ。まあ別にバイクを走らせる限りこのような症状が出ることもあるのであまり気にしていなかったのだが、タイヤの空気圧もチェックしたが改善されなかった。おそらくはタイヤのバランス調整やベアリング関係の問題なのだと思われる。症状が出るのは全車両ではないだろうし、原因を追究ししっかりと対応しているショップもある。その点を理解してハッピーベスパライフを謳歌して欲しい。

ベスパ GTV 詳細写真

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元々航空機製造を行っていたことの名残りであり、なおかつタイヤ交換を容易に行うために現在も継承し続けている片側支持のフロントホイール。120/70-12サイズのタイヤがセットされている。

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静かでありながら心地良いエキゾーストノートをもたらすサイレンサー。リアタイヤサイズは130/70-12。リアサスペンションはツインショックとなっている。

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2006年の初代GTVの登場からアイデンティティとして最新モデルまで続いているフロントフェンダー上の 「ファロバッソ(ローヘッドランプ)」を採用。アースカラーベースにオレンジの差し色を用いるなど、キュートでポップなスタイルとされている。

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コイルスプリングとショックアブソーバーを備えたシングルアームはベスパを象徴するポイントの一つ。ブレーキはタッチ、効き共に良く、ABS、ASR(トラクションコントロール)も標準装備となっている。

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高さ790mmとしたシートは、ハンドルやステップとの位置関係や長時間走行での快適性など考えてバランス良く程よい数値と言える。左右がシェイプされているおかげで足つき性も悪くない。シートカバーはオプション設定。

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丸型のケースに収められたフル液晶ディスプレイは視認性が良く、オプションでスマートフォンとの連動も可能。周囲がハーフマットブラックカラーでペイントされており質感が高い。オレンジのメーターバイザーはオプションでボディ同色が標準仕様。

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ハンドルバーが剥き出しとなっていることでスポーティかつクラシックな雰囲気が助長されている。スイッチ類は必要最小限でシンプル。イグニッションはキーレスタイプだ。

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丸みを帯びたクラシカルなディテールでありながらも面発光LEDを用いるなどモダンなエッセンスも用いられているテールセクション。ベスパは後ろ姿も魅力的だ。

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センタースタンドとサイドスタンドの両方を装備している。ゆとりがある場所ではサイドスタンドで、コインパーキングなどスペースが限られたところではセンタースタンドを使い分けできる。

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排気量278cc、4ストロークSOHC水冷シングルエンジンを搭載。ショートストロークタイプでしっかりとした加速を補うプーリー設定であるため追い越しなどもスムーズ。現代ではスクーターの定石と化したエンジンとリアタイヤをユニットにする方式はベスパが始めたことだ。

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伝統的なスチームモノコックフレームを採用しフットボードスペースも広く設定されている。コーナーリングモーションのきっかけは腰を下ろすシートに荷重してもステップボードのどこに入力しても良しと、とにかく自由度が高い。

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タンデムステップの凝った折り畳み機構を今一度良く見て欲しい。もし付け根を中心点として作動する方法だと使用時の位置が遠くなり、一方でそのまま後方にずらしてしまうとデザイン的に損なったり排気系統に接触してしまうことも考えられる。見せ場の一つ。

【ベスパ GTV 試乗記】女子受け必至のキュートダイナマイトの24画像

シート下のラゲッジスペースはヘルメット一つ+α。国内ブランドのビッグスクーターの多くはヘルメット2個などと実用性を追求することに魅力を見出すことが多く見られるが、まずはデザインありきで実用性はそこに付随するという潔さに好感が持てる。

【ベスパ GTV 試乗記】女子受け必至のキュートダイナマイトの25画像

フロントのユーティリティスペースはイグニッションスイッチの操作で開く。その上部にはコンビニフックも設けられている。さらにUSB電源も確保されておりユーザーのことも良く考えられている。

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