

掲載日:2016年10月05日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/山家 健一 衣装協力/HYOD
我々の世代からすると、ハンドシフトに甲高い2ストロークエンジンのエキゾーストが懐かしいベスパだが、今回試乗したのは現代的なスペックと洗練されたデザインを纏った新しい姿のベスパである。それでいて、だれが見てもそれと分かる丸みを帯びた美しいRで構成された、どことなくノスタルジックなフォルムがベスパの魅力と言っていいだろう。
同じピアッジオグループのモトグッツィなどもそうだが、イタリアンメーカーは昔ながらのデザインを現代的に解釈してリボーン(再生)させる手法に優れていると思う。日本的に言うと温故知新。まったくの新型モデルであっても、本来持っている良さやテイストはそのままに、時代に見合った性能とセンスをブレンドすることで、昔からのファンを裏切ることなく新しい価値を与えることに長けている。我々日本人としても見習いたい部分である。
GTS250はその名の通り、中長距離を一気に駆け抜けることもできる快適スクーターである。見た目はボリューム感があって一見大柄に見えるが、跨ってみると意外にコンパクト。国産250ccスクーターと比べても前後長は明らかに短く、逆にシートはやや高めで、背中を伸ばしてヒザを直角に曲げて乗る正統的なヨーロピアンスタイルとなる。目線が高く見通しが良いことと腰への負担が少ないのがいい。好みの問題だが、国産スクーターにありがちなロー&ロングなクルーザースタイルとはやや異なるライディングポジションだ。
250ccの水冷単気筒エンジンは最高出力21psとスペック的にはおとなしめに見えるが、実際のところは十分パワフルで高回転までよく回る。信号待ちからのスタートダッシュでもクルマの流れをリードできるし、高速道路では追い越し車線でもストレスがない。エンジン音は4ストローク単気筒らしい小気味よいパルス感があり、それでいて振動も少ないので乗っていて楽しく快適だ。
印象的だったのが車体剛性の高さ。高速道路のレーンチェンジなどでもしっかりとした安定感があり、コーナリング中の路面の継ぎ目なども難なくクリアしていく。スクーターで一般的なアンダーボーンタイプのフレームとはひと味違うカチッとした乗り味が美点だ。ブレーキタッチは初期が柔らかく、握り込めばきっちり効いてくれるタイプで、ABSは装備されていないがコントローラブル。前後サスペンションも割とコシがあってスポーティな設定。特にリアのツインショックはタンデム高速走行にも耐えられるよう高荷重タイプのようだ。最近のスクーターでは一般的な12インチホイールだが、高速道路や街中の交差点でも不安なくコーナリングできた。
装備面でも、グローブボックスやコンビニフック、シート下スペースなどの定番に加え、USBポートやクロームメッキのリアキャリアなども便利。そして、こうした機能パーツがデザインの中で美しく融合している点が、ベスパの素晴らしさだ。
スクーターは本来がコミューターであり、毎日でも使うモノだからこそスタイリッシュで人生に彩を与えてくれるものであってほしい。その意味で、やはりベスパという歴史あるイタリアンブランドの持つプレミアム感は大きく、それを所有できる喜びは格別のものがあるだろう。加えて、走りもしゃきっとして街乗りからタンデムツーリングもこなせて使い勝手もいい、となれば当然触手も動く。250ccというサイズ感も、こと日本では重宝するはずだ。洒落た都会の街並みにも映える、絵になるスクーターである。
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