

掲載日:2013年01月22日 試乗インプレ・レビュー
取材・撮影・文/田宮 徹
イタリア生まれということもあり、SRマックス300のシートポジションはかなり高め。身長167cmで体重66kgの筆者が、シート最前部付近のなるべく低くて細身な場所にまたがった状態で、両つま先が接地する程度となっている。ただし、見た目から受ける印象ほどは車体が重くないため、つま先だけでも意外と安心して車体を支えることが可能。
シート高があることから、走行時も腰高な印象で、開放感のある視界を楽しめる。また、車体サイズにもかなりの余裕があり、排気量で考えれば軽二輪クラスとほぼ同じ位置づけだが、大きな機種に乗っているという気分が十分に味わえる。足着き性や取り回し性があまりよくないと評価するか、車格のよさを魅力と考えるかは、ライダーの体格やスキルによっても差が出るだろう。
搭載されるクオーサーエンジンは、扱いやすさや安全面などを考慮してか、0km/hからの発進加速はややマイルドな味つけとなっている。それなりに車重があることも、出足のおっとりさにつながっているだろう。しかし、少し速度が出た状態からの加速には、市街地でも郊外でも高速道路でも満足できる力強さがある。
30km/h付近から本格的な加速がはじまると、その勢いは日本の法定最高速度となる100km/h以上まで、衰えることなく続く。パワーユニットの能力としては、約140km/hの最高速。日本の法定速度内では十分な余裕があることになる。また、高速道路を80km/hで巡航中に、急な登坂路に遭遇した場合でも、アクセルをガバッと全開にすれば、すぐに車速が伸びていく。
アイドリング時には、やや振動が多くてガサツな印象もあるが、走り出すとこれがスッと消える。荒々しさというよりは、スムーズな回転フィールの中にスポーティな雰囲気が同居しているイメージで、スタイリングや与えられた車両の位置づけとも非常にマッチしている。
一方でハンドリングは、大柄な車体サイズから想像するよりも軽快で、スポーティなスタイリングとマッチしたものとなっている。足まわりはややハードな味つけで、ギャップのあるコーナーでは少し注意が必要だが、基本的にはイージーに扱える。そのぶん、左コーナーでは簡単にセンタースタンドが接地するレベルまでバンクさせられてしまうので、ちょっと注意しておきたい。
ブレーキは、前後ともにかなりカチッとしたレバータッチ。つまり、レバーストロークが浅い。この設定が、スポーティな雰囲気を高めるのに貢献しているが、そのぶん操作には少し気難しさも感じられる。ただしこれは、ワインディングでスポーティに走らせてハードブレーキングした場合の話。通常の市街地走行では、当然ながら効力も十分にあり、ごく普通に使える。
ヨーロピアンモデルらしく、スクリーンはロングタイプ。ボルト位置を変更することで、高さを3段階に調整できる。一番下にセットした場合でも、首から下に当たるはずの走行風は大幅に軽減され、しかもこの状態であればスクリーン上端が視界に入ってジャマに感じるようなことはなかった。加えて、フローティング構造を採用していることなどから、高速で走っても背中を押されるような不快な風の巻き込みは感じられなかった。
また、スポーティにまとめられた機種ではあるが、タンデムシートの居住性についてもしっかり考えられている。後席は広く、左右にはグラブバーを備えていて、フットレストは様々な靴底の形状にフィットしやすいバータイプとなっている。頻繁にタンデムライディングを楽しむユーザーにも、満足できる仕様だ。
かつては244ccだったクオーサーエンジンが、現在では278cc仕様へと排気量アップされたことから、このSRマックス300も、日本で楽しむには車検取得が必要な小型二輪クラスのスクーターということになる。しかし、49万8000円という戦略的な車両価格が設定されていることから、国産の250ccクラススクーターを購入した場合と、最初の数年間に支払う金額はそれほど変わらないはず。全体的な性能を考えれば、かなり魅力あるミドルコミューターと言ってよいだろう。
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