掲載日:2016年06月21日 トピックス
取材・文/西野 鉄兵(『アウトライダー』編集部)
これまでさまざまなシチュエーションでドラッグスター400を見つめてきたこの長期インプレも、今回で最終回です。筆者自身、久しぶりに400ccクルーザーにしっかりと乗り、楽しませていただきました。
今回はこれまでのおさらいをしながら、明確にどんな方がこのバイクを選ぶべきなのかをお伝えしたいと思います。
どんなバイクでもユーザーそれぞれの乗り方があるため、断定はしたくないけど、以下のようなバイクライフを楽しみたい方なら、ドラッグスター400はおすすめだと思う。
1.1台で通勤や通学の街乗りから、ロングツーリングを楽しみたい方
2.ツーリングでは、速さよりもクルージングでの気持ちよさを求める方
3.車格の大きさや所有感、女子ウケを気にする方
4.入手した後にカスタムも楽しみたい方
排気量399ccの車両は、普通自動二輪免許でも乗れる最大の車両というのはご存知のとおり。2年に一度、車検があるということで250cc未満を選ぶ人も多いけど、それをのぞけばいろいろなメリットがある。
街乗りでも億劫ではなく、高速道路での時速100km巡航も厳しくはない。これが250cc未満になると、高速道路を使ったロングツーリングはたいへんだし、750cc程度になってくると普段に使うのは面倒に感じてくる場合が多い。
ドラッグスター400は、どちらも無難にこなす。どちらかといえば、筆者はツーリングで楽しめるバイクだと思っている。
街乗りでは充分なパワーを持つ反面、車幅の広さや、車両重量、エンジン特性の都合上、きびきびとは走れない。シート高が660mmと低いことも気軽に乗れる大きな要素だ。オフロード車などは街を走るのもスイスイと楽しいが、いちいち「よっこいしょ」とまたがるのには、めんどくささを感じてしまう。その点、「ちょっとコンビニに行くか」とバイクを出すのも気兼ねない。
高速道路では、どっしりとした車体やホイールベースの長さがもたらす直進安定性、楽なポジション設定で、ゆったりとロングツーリングが楽しめる。ただ、ワインディングはバリバリと攻めた走り方はできない。
攻める走りも楽しみたい、と思っている人は選ばない方がいいだろう。といっても、峠を走っている平均的なスピードのライダーには遅れを取らない程度に充分走れる。
楽な姿勢で景色を楽しみながら、走るツーリングはほかのどんなジャンルよりも楽しめるのではないのか、とさえ思う。走りながら見る新緑や紅葉、海の輝き、残雪の残る山並み、大空に浮かぶ雲、沈む夕陽など、旅情を味わうバイク旅を満喫するのには、最高のポジションだ。
そして空冷Vツインの心地いい鼓動がどんな場所でも旅情を深めてくれるのをアシストしてくれる。主張はしすぎず、それでもたしかに響くエンジンの存在感。低速から高速までクセがなくスムーズに加速する出力特性は、信頼できる優等生的ないい相棒と思えるものだった。
直立ぎみのポジションと、低いハンドル、すっきりしたフロント周りの特性は景色を楽しめるだけでなく、安全面にも大きく貢献している。ヘルメットのシールドの向こうは左右上下ともに視界がものすごく広い。前方の交通状況・道路状況をいち早く察知できる。
ひとつ気になったのは、ミラーが平均的な位置よりも外側に付いていること。後方確認は視線の移動が大きいので、不安に思ったらカスタムパーツを探すのがよさそうだ。
未舗装路はクルーザータイプでは飛び込みたくないが、シート高や重心の低さにより、フラットな砂利道など低速で走る分には全然怖くない。怖いのはチューブタイヤがパンクしたら即座に走れなくなるということと、狭い林道では切り返しがたいへんだということだ。長めのダートになりそうだったら入らないのが一番で、「いけるかな」と思えるほどでも誰かと一緒に入るなど、慎重さは忘れないほうがいいだろう。
クルーザーの王道ともいえる美しいスタイリングと、中型バイクながら大柄な車格は、存在感たっぷり。20年もの歴史を持つドラッグスター400は、歴史に流されず人々に愛される魅力を持っているのだろう。
とくに筆者が思ったのは「親しみやすい」バイクだという点だ。このバイクに乗っていると、道行く人がよく声をかけてくれる。以前もこのインプレでお伝えしたが女子にもウケがすこぶるいい。バイクに乗らない人も、「バイクってかっこいいな」と思える車両なのだろう。
タンデムも街乗り程度なら、ノーマル状態で普通に楽しめる。彼女や奥さんと街や海に出かけたり、夜景を見に行ったりするのも、このバイクなら、ドラマや映画で観るような〈よりそれっぽい〉シーンになるはずだ。
エンジンも250ccよりパワーがある分、快適。シート高が低いのでバランスを崩して立ちゴケなんてことも起こりにくいし、タンデマーもひょいっと簡単に乗れる。
上の写真はリアバッグを載せただけだが、カスタムのしやすさは大きな魅力だ。長い歴史を持つ分、カスタムパーツが純正・社外品ともに豊富に販売されている。ベーシックなクルーザースタイルの車両は、ツーリング仕様にも、細身でよりシンプルなスタイリングにもカスタムしやすい。
ツーリングマガジン「アウトライダー」編集部の筆者としては、上の写真のように荷物を載せただけで、〈旅感〉を増して絵になるバイクはとても嬉しい。
純正パーツで、これだけロングツーリング仕様にできる中型バイクはそうそうない。ここまでやればノーマルとは比べ物にならない快適性で使い勝手もいいだろう。ユーザーが多いため、ネットで検索すればカスタムのサンプルはいくらでも出てくる。また、毎年開催されているヤマハの公式イベント「スターミーティング」に参加すれば、いろいろなドラッグスターシリーズが集まっていて楽しめるだろう。
以上がこの長期インプレのまとめでした。
初めてバイクに乗る人にも、違うジャンルからクルーザータイプへの乗換えを考えている人にも自信を持っておすすめできる車種であることは間違いありません。そして、長く1台と付き合いたいと思っている人にはとくに太鼓判です。
この長期インプレをお読みくださった方々、どうもありがとうございました!
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