ヤマハ ドラッグスター400 長期インプレ vol.05【ワインディング編】

掲載日:2016年04月26日 トピックス    

取材・文/西野 鉄兵(『アウトライダー』編集部)

苦手と思われるワインディング性能はいかに!?

前回、高速道路でのインプレッションでは直進安定性に優れ、ポジションも快適という話をした。東京から高速に乗り、着いた先は箱根。今回は箱根~伊豆で、ワインディングでの実力をチェックします。

ワインディングで筆者が大切にしていることは、教習所で誰もが習うライディングの基礎「ニーグリップ」だ。膝でタンクをしっかりホールドし、バイクとの一体感を近づけていく。

しかし、クルーザーはこのニーグリップをしにくい車種が多い。特にタンクが細くてエンジンが大きいモデルだと難しい。ドラッグスター400はというと、逆の意味で少々手こずった。タンクが張り出しすぎているのだ。

ホールドできないことはないが、かなり脚を広げた状態となる。また、がっちりタンクを挟み込むと膝の関節に金属タンクがもろに当たり、不快な痛みを感じた。タンクが細すぎてニーグリップが不可能なモデルよりはマシという具合。ちなみに筆者がはいているデニムのように膝にパッドが入っているパンツだと不快な痛みは軽減できる。

ニーグリップと同時に、バイクとの一体感を上げる目的で大事なのが踵のホールド。ネイキッドやスポーツモデルなどでは、膝と踵をしっかり押さえつけるのがセオリーだろう。ところが、このバイクは踵でのホールドができなかった。その上フォワードコントロールなので、脚周りがすかすかしていっそう不安定だ。

膝でのホールドが△、踵が×となったら、頼るべきはお尻。シートはお尻を包むとまでは言わないがフィット感が非常に高い。どっしりと座り、後輪を意識して、お尻を振るような感覚でカーブをひとつずつパスしていった。お尻と膝のホールドを固めながら走ると綺麗なラインが描けるようになってきた。

シビアな操作が要求されるワインディングではハンドル(グリップ)の太さも気になった。どっしりとした印象を演出するためか、かなり太くなっている。細かい操作がしにくく、手の小さい人や写真のようにウインターグローブを装着している際はより厳しい。

長いホイールベースは直進安定性に貢献するがその分、コーナリング性能を落とすことになる。タイヤのサイズは前19インチ、後ろ15インチ。コーナリング性能に優れたスポーツタイプは前後17インチのことが多い。

たとえばホンダ CB400SFもカワサキ ニンジャ400もスズキ グラディウス400 ABSも前後17インチだ。タイヤが大きくなると旋回能力が落ちる。それでもドラッグスター400は全然曲がらないというわけでなく、比べれば曲がりにくいというレベル。もっと走りにくいクルーザーは山ほどある。意識的にスポーツモデルよりも「曲がるぞ」という気持ちを高く持ってコーナーに入った方がいい。

クルーザーモデルでワインディングに入ると、最低地上高が低いため、ステップを路面にすりやすい。ただドラッグスター400は極端にすりやすいわけではなかった。今回、箱根から伊豆を走る中で故意にすらせようと思わなければ、することはなかった。逆に街中で何度かこすった。バンク角がある峠道のコーナーは、一般車と同じペースで走る分には問題ない。

試しに平地でバイクを傾けて、ステップが当たる位置を確認したのがこの写真。これだけ傾けてようやくこする。コーナーにバンク角があれば、もっと寝かしてもこすらない。

ステップがこすることよりも気を抜いて走っていたときに、自分の踵がこすることでヒヤッとした。写真のようにペダルに対して低めに足を乗せていると簡単に踵をこすってしまう。峠に入ったら足を気持ち高めに乗せて走るといい。

そもそもあまり傾かない車種だ。この程度の傾きでも一般的なライダーに遅れを取ることなく、充分なスピードでコーナーを曲がっていける。このくらいなら全然ステップは路面にこすらない。

ブレーキは前がシングルディスクで後ろがドラム。以前この長期インプレで「利きすぎるわけでも、利かないわけでもなく、分かりやすい制動距離」とお伝えした。ワインディングではもっと利いてほしいと思うシーンもあったが、それはテストのため、実力のめいっぱいで走ってオーバースピードになってしまったときのこと。このバイクらしいクルージング気分での走行なら充分だ。ただABSは搭載されていないので、がっちり握るとロックするのでご注意を。

また気をつけたいのは、けっこうスピードが出ているときにローギアに落とすこと。瞬間的にトルクが増して、後輪のグリップ力が上がるとスリップに似た現象が起こる。高速道路の料金所手前で急にエンジンブレーキをかけるときも同じ現象になりやすい。

箱根~伊豆スカイラインでの注意したいこと

休日になるととくに箱根ターンパイクや芦ノ湖スカイライン、伊豆スカイラインではツナギを着た猛烈なスピードを出すライダーが増える。事故に巻き込まれないように、ブラインドコーナーと対向四輪車の陰は要注意だ。また、前方だけでなく、後ろからも猛スピードで接近してくるので、気がついたら真後ろにぴったりくっつかれていることも。バッグミラーをちょこちょこ見ながら注意を払っておいた方がいい。

箱根~伊豆スカイラインの山の尾根に来ると、休憩や食事場所も限られてくる。写真は箱根ターンパイクと伊豆スカイラインの間にある十国峠のレストハウス。ここか、ターンパイクの頂上にある大観山ビューラウンジ、もしくは伊豆スカイラインの途中にあるスカイポート亀石がライダーにも人気がある。いずれも週末はバイク乗りが多くやってくるので、人のバイクを眺めたり、仲間を見つけるきっかけにもなり楽しめる。

十国峠レストハウスの2階にあるレストランは、ライダー好みのがっつりとしたメニューも多い。写真はソースかつ丼(税込1,080円)。席数が多く展望もいい場所なので、マスツーリングでのランチスポットにもおすすめ!

ツーリングでの燃費をチェック

今回のワインディングと前回の高速道路を走ったツーリングで約200kmの走行となった。燃費は約20km/L。以前、街乗りで計測したときは約17km/Lだったので、1割以上延びている。400ccサイズの中では、低燃費とは言えないが車重が234kgもあるので、まあまあ良好だろう。

ドラッグスター400は給油時にちょっと注意が必要。給油口はタンクの右肩にある。キーを使って開けると写真のようになっていて、給油の際は必ずノズルを奥の穴まで入れてから行なう。筆者は初めて行なったとき、うっかり手前の穴まで差し込んだ状態で給油してしまった。するとドバッと跳ね返ってちょっとした惨事に……泣

ガソリンメーターが赤いエンプティゾーンに入るころ、だいたい走行距離は200km近くになっていた。給油の目安も200kmを走ったらでいいだろう。タンク容量は15L。20km/Lの燃費で走っていれば300kmは走れる計算となる。つまり今回でいえば、エンプティゾーンに入ってからまだ約100kmも走れたということだ。指で押している部分はデジタルメーターの表示切り替えスイッチ。オドメーター、トリップ1、トリップ2、時計の四種類に切り替えられる。

ワインディング編はここで終了です。前回の高速道路編とまとめると、このバイクは気を張らず悠々としたツーリングに向いていることが分かった。スタイリングの通り、目を三角にして走りを極めようと思うタイプではなく、風景を眺めながらバイクの旅を楽しむ車種だ。それこそ長い休みを取って、北海道や九州などへのロングツーリングは存分に楽しめるだろう。中型免許で乗れる400ccの中では、トップクラスに「旅に出たい」と思える長距離性能とロマンにあふれたバイクだ、と筆者は感じた。

次回からはより細かいシチュエーションでのチェックを行なっていきます!

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