ヤマハ ドラッグスター400 長期インプレ vol.08【タンデム編】

掲載日:2016年05月24日 トピックス    

取材・文/西野 鉄兵(『アウトライダー』編集部)

クルーザーの出力特性はタンデム向き!

男ならばクルーザーモデルを入手したら、女性とタンデムしたいと誰もが一度は思うはず。海沿いを流したり、高原を爽快に駆け抜けたり、ネオンの灯る夜の街へ繰り出したりと、夢は広がる……。

タンデムを楽しむためには、タンデマーの乗り心地の良さはもちろん、ライダーにとっても2人乗り状態での運転の面白さが欠かせない。細かくチェックしていこう!

400㏄クラスでの2人乗りの快適性は、車種により大きく異なると筆者は思っている。ナナハンやリッターオーバーの車種なら、エンジンのパワーは2人乗りでもまず問題ない。逆に125㏄や250㏄だと、どうしても非力さを感じてしまう。400㏄はその間の微妙なライン。タンデムライドに求められるパワーはトップスピードではなく、低速~中速での力強さだ。

ドラッグスター400の空冷V型2気筒エンジンは、低めの回転数でピークのトルクに達する(最大トルク 31Nm(3.2kgf・m)/6,250rpm)。今回の2人乗りインプレで下道を走っている限りは、パワー不足を感じて不満に思うことはなかった。

また、穏やかなレスポンスもタンデムには好都合。アクセルを回すたびにタンデマーに緊張を強いるようなスポーツモデルではない。快適な乗り心地のためタンデマーに気づかうことはアクセルワークよりもギアチェンジだ。

このバイクは、シフトチェンジをするとガチャンと心地いい音がする反面、タイミングが分からないタンデマーには恐怖を与えかねない。とくにシフトダウンすると強めのエンジンブレーキがかかるので、ローギアに落とす際は先に前後輪のブレーキで充分抑えてから行ないたい。

2人乗りでのポジションをチェック!

ライダーは身長175cm、タンデマーは155cm。シートがセパレートタイプで段差が10cmほどあるため、ライダーは前につめる必要はなくひとりで乗っているときと同じ姿勢で運転できる。

ノーマル状態ではタンデマーはライダーに比べ、座面も狭く窮屈だ。また、バックレストなど後ろ側のストッパー的役割を果たすものは備わっていないので、加速時は緊張感がある。

タンデマーの乗り方は、片手でタンデムベルトを握り、もう一方の手でライダーの肩につかまる。どちらの手も加速時に後ろに落ちないように上から回し込むように捕まると安心。カップルや夫婦ならシンプルにがっちりと抱きついてしまった方が安全かもしれない。

ライダーとタンデマーの身長に20cmほどの差があっても、タンデマーは真正面がライダーのヘルメットで隠れてしまい見えない。フラットなシートよりはマシだが、タンデマーの視界が狭いことを意識して運転する必要がある。

シート高の低さはありがたい。タンデマーも乗りやすく、ライダーがまたがっている状態からでも無理なく乗車できる。また、足つき性が高いので、信号待ちなどの停車時にライダーは両足をべったり付けることができ、バランスを崩すこともない。2人乗りでのUターンも足をペタペタつきながら容易に旋回できる。

足を前に出すフォワードコントロールはタンデムライド向き。ネイキッドモデルなどのミッドコントロールだと、ライダーの踵とタンデマーのつま先がぶつかって操作がしにくくなることがある。その点ドラッグスター400は心配いらない。

タンデマーは膝を直角に近いかたちで曲げることとなる。ふたりの距離は近く、その間にタンデムベルトがあり、これはなかなか握りにくい。乗車姿勢という点で疲労度はタンデマーの方がはるかに大きくなるので、長距離走行ではタンデマー優先で休憩のタイミングをはかろう。

タンデムステップは可倒式で、しっかりしている。踵があるブーツなら土踏まずの部分を引っ掛けられると安心感が増す。またこのタンデムベルトには「遊び」が少なく厚手のグローブをしていると握りにくい。マフラーとの位置関係もよく、うっかり触れてしまう危険性も少ない。夏場もタンデマーはマフラーの熱を感じにくいだろう。

シート形状を見ても、ライダーよりタンデマーが窮屈なのがひと目で分かる。ライダーは快適なシートなのに対して、タンデムシートはオフロード車のように細い。美点はシート高の低さ。ライダーズシートよりは高くなっているが、タンデムシートに座っても足が地面に届く人も多いはず。膝を曲げ続けて疲れたら、停車時に下ろせるというのはメリットだ。

タンデムシートはリアフェンダーに沿うように配置され、前後にラウンドしている。これがなかなか不安定で、加速すると後ろに滑り落ちそうになることも。タンデムを日々行なうようなら、オプションのバックレストは必須アイテムだ。シートの厚みはライダーズシートと同様で、クッション性が高い。

ワイズギアから純正オプションパーツがさまざま販売されている。タンデムをするならまずはバッグレスト。安全性はもちろん、椅子に楽な姿勢で座っているかのような快適性も得られる。

さらにふたりでツーリングに出かけたいなら、サドルバッグやキャリアを装着しないと積載ができない。ここまでフルカスタムするとまるで別のバイクのようだ。バッグレストとキャリアを備えると、ひとりでロングツーリングに出るときにも積載性が上がり役立つ。

キャンプをしながら北海道を一周するような長旅の荷物も楽々積載できるだろう。

女性でも安心して乗れる低いポジション

今回タンデムモデルを務めてもらった筆者の同僚に、ライダーの位置で跨ってもらった。彼女はバイクに触れるのがほぼ初めてなので、サイドスタンドを出したままの状態だが、ご覧いただきたい。

身長は155cm。シート高は非常に低い660mmで足つきはばっちりだ。ハンドルも小柄な女性でも無理のない位置。お尻をシートの後ろ側にくっつけても腕が突っ張ることがないだろう。

ステップ位置が遠いフォワードコントロールだけ不安が残る。ステップ位置の調整はできないので、もし同じくらいの身長で購入を考えている人がいれば、必ず実車をまたがってポジションを確認してみていただきたい。

今回のまとめ

ドラッグスターでのタンデムライド、それは可能性に満ちたものだった。Vツインエンジンの心地いいフィーリング、ふたりの距離もグッと縮めてくれるような絶妙な距離感、ライダーの操作に影響を及ぼさないポジション設定……カップルや夫婦で、バイクに乗る喜びを共有できる車種だと思う。ただ快適なツーリングには、オプションパーツの装着が必要だ。

ここだけの話、筆者はこの長期インプレを行なっていく中で、偶然または故意にこのバイクを女性に見せる機会があった(ニヤリ)。そして反応はいずれも好感触だった。クルーザーの王道ともいえるドラッグスター400のスタイリングは女子ウケがすこぶるいい。質感の高さもあり、大人の印象もある。間違いなくモテるバイクの一台だと確信した次第だ。

ここまでさまざまなシチュエーションでインプレを行なってきました。次回は400㏄クルーザーの購入を検討している方へ向け、各メーカーから販売されている他車との比較を行ないます!

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