掲載日:2026年04月27日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

HONDA X-ADV

X-ADVの初代モデルが登場したのは2017年。外見はスクーターでありながらオフロード走行も可能という、シティコミューターとアドベンチャーモデルを融合させたこれまでにない斬新なコンセプトは、バイク界に衝撃を与えた。スチール製のダイヤモンドフレームに745ccの水冷直列2気筒エンジンを載せ、変速機構にはクラッチ操作とシフト操作を自動化したDCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)を採用。駆動方式はダイレクトな駆動力を感じられるチェーンドライブとなっている。
これらの車体構成を基本的に維持しつつ、2021年のモデルチェンジではパワーユニットの各部を最適化することで最高出力を向上し、スロットルバイワイヤ(いわゆる電スロ)を導入するとともにライディングモードを搭載。2025年モデルではフロントマスクやシート形状の変更、クルーズコントロールの導入など、進化と熟成を重ねてきた。

他の装備を見ても“タダものではない感”があふれている。フロントフォークは倒立式のショーワ(Astemo株式会社)製カートリッジタイプSFF-CATMを採用し、リアには軽量なモノサスをプロリンクでマウント。前後サスともにプリロード調整機構を備えている。また、フロントブレーキはダブルディスクと対向4ポッドのラジアルマウントキャリパーの組み合わせで、フロント17インチ、リア15インチのクロススポークタイプのホイールにはブロックパターンのチューブレスタイヤを装着している。ハンドルバーはアルミ製のテーパータイプでナックルガードを備え、飛び石などからボディを守るスキッドプレートも標準装備だ。
これを見るともうX-ADVはスクーターではなく、れっきとしたアドベンチャーマシンだと言っていいだろう。それに加えて容量22Lのシート下ラゲッジボックスやType-C USBポート、スマートキーシステム、グリップヒーターまで、便利で快適なアイテムを標準で装備しているとなれば、1台で何でもできてしまう万能マシンぶりが想像できるというものだ。

X-ADVの外観はいわゆるビッグスクーターとは一線を画すものだ。2026年モデルには、今回借りた「マットパールグレアホワイト」が登場、まるでアフリカツインを思わせるグラフィックは、このマシンはアドベンチャーモデルなんだ!というホンダの強いメッセージを感じる。シート高は790mmとデータ上は一般的なミドルクラスのマシンと変わらないものの、シート形状と横幅のある車体形状のため、足つきはそれほど良くはない。車両重量も237kgと結構あるため、少々気をつかう。
ところが走り出すと、そんな心配はすぐに消し飛んでしまった。DCTを採用しているため、走り出しは右手のボタンを「D」に入れてスロットルをひねるだけと簡単。スタートすると、まずその安定感の高さに驚かされる。街中での低速走行でもフラつくことはほぼなく、巡航に移っても走行ラインはピタリと安定し、どっしりとして不安がない。

それでいてスロットルを開ければライディングモードがスタンダードであってもドルルルッという心地よい排気音とともに750クラスらしい力強さで加速し、交通の流れを軽々とリードできる。スポーツモードに切り替えればDCTが適度に高回転までエンジンを引っ張ってからシフトチェンジするため、さらに機敏な動きが可能だ。ポジションもゆったりしており、とにかくリラックスして走れる。

X-ADVの大きな特徴であるDCTの懸念点として、半クラッチが使えないためUターンやタイトなターンが苦手という認識があったが、2025年モデルで制御系がアップデートされたことで、スロットルワークへの応答性が高まり、従来よりもかなり繊細なコントロールが可能になった。ただ試乗レベルでは意のまま、とはいかず、やはり左手でブレーキレバーを握りつつ、場合によっては足を着いてUターンするほうが気楽だった。実際にオーナーとなって慣れていけば、Uターンも苦にならないレベルまで仕上がって来たな、と十分に感じさせてくれた。

高速道路に乗り入れると、クルーズコントロールに任せて淡々と巡航も出来るし、それに飽きたらマニュアルモードでギアを切り替えつつ、遅いクルマを次々にパスする、という走り方も意のままだ。スクーターライクな車体のためニーグリップ、というわけにはいかないが、くるぶしから脛の内側あたりを使ってしっかりとマシンをホールドすることが可能。トルクフルなエンジンと素直なハンドリングに加えて、剛性感のある車体としなやかなサスペンション、強力なブレーキのおかげで、ワインディングに乗り入れても見かけよりもはるかにスポーティな走りが楽しめる。

ライディングポジション的にはセットされるバーハンドルの位置が高めでワイド、足元はコミューター的なステップボードタイプなのでオフロードモデルのそれでは無いものの、この手のタイプでスタンディングポジションを取れるというのは希有な例だと思う。
さらにこのマシンは、ダート走行も考慮されている。ライディングモードに、アフリカツインなどオフ系のアドベンチャーモデルと同じ「グラベル」モードが設定されているほか、スタンディングがしやすいよう、オフロードバイクのようなステップが純正アクセサリーに用意されているのが何よりの証拠だ。

クロススポークホイールにブロックパターンのタイヤ、サスペンションのストローク量も割とあるため、フラットダート程度なら余裕で、なかなかの走破性を見せてくれる。ライディングモードをグラベルに設定すれば、トラクションコントロールやABSの介入が最小限となるため、テールスライドなどもできてしまう。ライダーの腕次第、という面も大きいし、さすがにガレガレのダートは厳しいが、スキルによってはかなりのオフ遊びもできるポテンシャルを秘めているはずだ。

通勤通学の足としても大型スクーターのように便利に使えるのはもちろん、高速道路を使ったロングツーリングから林道ツーリングまで、1台でマルチな走りが可能なX-ADVは、従来のバイクの概念を超えた唯一無二のマシンとして、これからも独特の存在感と輝きを放ち続けることだろう。

テスターの身長は170cmで足は短め。X-ADVのシート高は790mmで、ミドルクラスのマシンとしては一般的だ。ただシートの幅と車体のボリュームが意外とあるため、両足だとつま先、片足では母指球まで接地する程度で、数値からのイメージより足つきは良くない印象だ。

灯火類はすべてLEDだ。2025年モデルから、デイタイムランニングライトとウインカーを内蔵した新設計のヘッドライトを採用し、さらに精悍な顔つきとなった。

メーターは5.0インチTFTフルカラー液晶を採用。絵文字化による直感的認識やユニバーサルカラーへの対応など、豊富な情報を見やすく表示してくれる。スマホと連携してマップや音楽アプリなどを操作できる「Honda Road Sync」も採用している。

ハンドル左側には各種設定や表示を変更できる4wayセレクトスイッチのほか、クルーズコントロールのセット・増減速スイッチ、マニュアルモード時の変速スイッチなどを装備。ライディングモードの変更ボタンは独立しており使いやすい。

ハンドル右側にはDCTの操作スイッチのほか、ハザードとクルーズコントロールのオン/オフスイッチ、スターター/キルスイッチを備えている。ブレーキレバーの前側にはナックルガードも装備。

ホンダスマートキーシステムとノブ式のメインスイッチを採用。シートとフューエルリッドのロック解除もワンタッチで行える。

ウインドスクリーンはロックレバーを解除してノブを動かすことで、高さを5段階に調節可能。コツをつかめば片手でも操作できる。調整幅は139mmで、一番高いポジションではほぼ直立となり、かなりの防風効果を発揮する。

フロント右側にはフタ付きのポケットがあり、ちょっとした小物の収納に便利だ。

DCTはギアを入れたまま駐車ができないため、パーキングブレーキを備えている。ハンドル右側のスイッチボックス脇にあるレバーを引き起こすことでブレーキがかかる仕組みだ。

しっかりした段と型が作られたシート。クッションはかためだがお尻のフィット感は高く、座り心地は悪くない。シート前部には給油口を備えている。

シート下のラゲッジスペースは容量22L。深い形状で、帽体の小さいものならフルフェイスのヘルメットも収納が可能だ(ちなみにSHOEIのJ-Cruise3は不可だった)。後部にはラゲッジライトとType-CのUSBポートを備え、前部にはETC2.0車載器を標準で装備する。

ラゲッジスペースに収納されている車載工具はご覧の通り。最近のマシンにしては充実している方だと思う。

フロアボードは前後に長く、足を揃えたり前に投げ出すなど、ポジションの自由度はかなり高い。スタンディングが容易になる純正アクセサリーのステップは、これよりも後ろ側の位置に装着する。

飛び石などからボディを保護してくれるスキッドプレートを標準で装備。これもこのマシンがアドベンチャーモデルであることの証と言っていいだろう。

プロリンクでマウントされたリアサスペンションはプリロード調整が可能。路面のギャップやダート走行でも追従性がよく粘りもあり、なかなかの優れものだ。

フロントブレーキは296mm径のダブルディスクと対向4ポッドのラジアルマウントキャリパーの組み合わせ。ブロックパターンのタイヤはチューブレスで、サイズは120/70R17だ。

リアブレーキのディスク径は240mm、タイヤサイズはシート下のラゲッジスペースを確保するため、160/60R15と小さめを採用。銘柄はブリヂストンのBATTLAX ADVENTURECROSS AX41Tを履く。

LED灯火を使い、スッキリとまとめられたテールセクション。横長のテール/ブレーキランプはスリムに見えるが被視認性は高い。

今回テスターが着用したのはラフ&ロードのRR7259「エアベントラフパーカー」。フロントがメッシュになるVベントや腕、背中に強力なベンチレーション機能を備えて夏でも快適。表生地は防風性と高い撥水性があり、オプションのインナーを装着すればオールシーズン使える便利なジャケットだ。

テスターが着用したシューズはラフ&ロードのRR6303「ウォータープルーフダイヤルシューズ」。スニーカーのようなルックスだが防水仕様でリフレクターやくるぶしパッド、シフトパッドを備えてライディングに対応。ダイヤルワイヤーシステムで着脱も簡単だ。








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