【スズキ GSX-S1000GX試乗記】“餃子”じゃないんだから、“ハネ”をつけただけで売れるなんてことは……。いや、そうではないのです!

掲載日:2026年08月01日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男 衣装協力/Alpinestars Japan

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SUZUKI GSX-S1000GX

世界的な需要が高いクロスオーバーセグメントに応えるため、スズキが送り出したのがGSX-S1000GXだ。2023年に発表され、翌2024年には日本国内でデリバリーを開始。GSX-Sシリーズ譲りのスポーツ性能とスズキらしい細やかな作り込みが評価され、世界市場で高い評価を獲得した。そして2026年モデルでは、新たにウイングレットを採用。「ハネが付いただけでしょ?」という声も聞こえてきそうだが、実際に走らせてみると、その見方は少々早計だったようだ。初期型で2000km超を走り込んだ経験を踏まえ、その進化の中身を確かめてみたい。

スズキ製ビッグバイクを支える
GSX-Sシリーズの中でも存在感を放つ一台

GSX-S1000GXの出自を辿ると、2014年のケルンショーで発表されたGSX-S1000にたどり着く。スズキのフラッグシップスーパーバイクであるGSX-R1000に採用されていた並列4気筒エンジンを、より扱いやすいネイキッドの器に収めたこのモデルこそが、現行スズキ大型車ラインアップの中心的存在となっているGSX-Sシリーズの源流だ。

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まもなくフルカウルツアラーのGSX-S1000Fが追加されたが、こちらは後によりツアラー性能を高めたGSX-S1000GTへと進化を遂げ、惜しくもGSX-S1000Fそのものは姿を消すことになる。

一方で、往年の名車の魂を現代に蘇らせたカタナ、すなわちGSX-S1000Sも、このGSX-S1000系のエンジンとプラットフォームをベースに生み出された1台だ。

そして近年、欧州を中心に世界的な需要の高まりを見せているのが、スーパーバイク的な圧倒的パフォーマンスによる高いスポーツ性能と、アドベンチャーモデルのようなロングストロークサスペンションを持たせることによって快適性を高い次元で両立させるクロスオーバーセグメントである。

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この市場の要求に応える形で開発されたのが、GSX-S1000GXにほかならない。2023年11月、イタリア・ミラノで開催されたEICMAで世界初公開されると、翌2024年には日本国内でもデリバリーが始まり、瞬く間にグローバルヒットモデルへと成長した。

こうして俯瞰してみると、GSX-S1000GXは決して単発の派生モデルではないことがわかる。ネイキッド、フルカウルツアラー、ネオクラシック、そしてクロスオーバー。ひとつのエンジンとプラットフォームから、これだけ多彩な性格のモデルを展開できているという事実こそが、GSX-S1000系がいまやスズキ大型二輪の中核を担う存在であることの証左と言えるだろう。

スズキ GSX-S1000GX 特徴

GSX-R1000の心臓部を用い
丁寧に料理され作られた

エンジンは、スズキのフラッグシップスーパーバイクGSX-R1000・K5型にルーツを持つ999cc並列4気筒ユニットを搭載する。刺激的なスーパースポーツの心臓部を、ツーリングからワインディングまで幅広いシーンで扱いやすく味付けしているのが、このGSX-S1000系エンジン最大の魅力である。

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そしてGSX-S1000GX最大のトピックが、スズキの二輪車として初採用となった電子制御サスペンション「スズキ・アドバンスド・エレクトロニック・サスペンション(SAES)」である。ショーワ製の電子制御サスペンションを核に、速度や路面状況、ブレーキング時の車両姿勢変化などに応じて減衰力をリアルタイムで制御するとともに、プリロードも電子制御によって最適化。さらにボッシュ製6軸IMUと組み合わせることで、路面状況を検知してサスペンション制御を自動で切り替える独自プログラム「スズキ・ロード・アダプティブ・スタビライゼーション(SRAS)」を搭載した。これらはスズキ独自のライディングサポートシステム、S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)へ統合され、荒れた舗装路での快適性と、ワインディングでのダイナミックなスポーツ性能という、一見相反する性能を高次元で両立している。

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足まわりは前後17インチホイールにロードタイヤを組み合わせ、最低地上高は155mmとネイキッドのGSX-S1000比で15mmアップに留められている。これはアドベンチャーモデルではなく、あくまで舗装路をメインステージとするクロスオーバースポーツであることを明確に示したパッケージングだ。

これらのことから、スーパーバイク由来のハイパフォーマンスエンジンを用いつつも、電子制御デバイスや足まわりのセッティング、さらに付け加えれば、高い防風性能など、丁寧に料理し誕生したのがGSX-S1000GXだということがわかる。

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2026年モデルでは、外観上の大きな特徴となるウイングレットを新たに装備。さらに、バイオエタノールを10%含有するE10ガソリンへの対応や、OBD-2による排出ガス監視要件への適合など、環境性能や法規対応の面でも着実なアップデートが図られている。一見すると「ハネが付いただけ」の変更にも思えるが、その中身は想像以上に着実な進化を遂げているのである。

それでは、アップデートされたGSX-S1000GXに触れた印象をお伝えしていこう。

スズキ GSX-S1000GX 試乗インプレッション

快適性、安全性を引き上げつつ、よりダイナミックな
スーパーロードスポーツへと昇華

GSX-S1000GXが国内で登場した2024年のこと。インプレッションでのテストライドに始まり、ツーリングレポート記事制作にも使用し、さらには同年夏に韓国へ行った際、現地で1500km以上のツーリングを行ってきた。その理由は紛れもなく、GSX-S1000GXがよくできたモデルだったからにほかならない。

特にエンジンのフィーリングは素晴らしく、名機と呼ばれ、いまだなお熱狂的なファンが多いGSX-R1000・K5型をルーツとしていることも大きなポイントだ。そもそもこのパワートレーンはスーパーバイク系のエンジンとしてはロングストローク気味となっており、トルクで走らせる傾向が強い。ショートストローク型のエンジンで速く走らせようとすると、どうしても高回転域を使うことを強いられる。それに対してトルクのあるロングストロークエンジンであれば、低中回転域でのアドバンテージが大きくなる。その結果、スキルを問わず誰もが速く気持ちよく走れる。これが、ストリートとの相性の良さにもつながっているのだ。

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GSX-S1000GXでもそのエンジンキャラクターが効いている。クロスオーバーモデルというと得てして車体が重くなりがちなのだが、トルクに振ったセッティングであるため、発進時から軽快さが伝わってくるのだ。それでいて、しっかりとした防風性能や安楽なライディングポジション、さらには電子制御サスペンションのおかげで、どんなステージでもダイナミックかつスマートに走らせることができる。だから、ついツーリング企画などで「どのモデルを用意しますか」と聞かれるとGSX-S1000GXと答えた。その結果、2000kmを超す距離を共にしたというわけだ。

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それから2年が経った現在。GSX-S1000GXにアップデートが図られたと聞き、興味を持った。従来モデルのイメージを携えながら、新型のGSX-S1000GXと対峙する。外見上の変化といえば、“噂のハネ”であるウイングレットが追加された程度に見えるが、よくよく観察していくと、クランクケース右側前方に、ゴム製のパーツが追加されていることに気づいた。エンジンのビス穴を隠すだけのものかと思ったが、よく見てみるとフィン状に加工されている。確認したところ、これはプロテクターラジエターヒートと呼ばれるパーツで、走行風の流入を調整することでライダーの膝まわりの熱を和らげるもののようだ。つまりアナウンスこそしていないものの、こういった点から細部までしっかりと手が加えられていることがわかる。

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車体を起こして跨ってみる。直前までGSX-8Sに乗っていたこともあり、ステップ位置が高めにセットされており、膝の曲がりもやや強く、スポーツ走行を促すキャラクターであることが全身に伝わってきた。

エンジンを始動し走り出す。今回のアップデートではE10ガソリン対応となったとされており、それに伴い、燃料系統に使用されるゴムパーツなども変更されていることが推測できるが、はっきり言って通常のガソリンを使用している限り、それはライダーに伝わってくるものではない。むしろ市街地や高速道路を走らせてみると、トルクに厚みが増し、乗り味そのものにまろやかさが加わったように感じられた。もちろんE10対応だけによるものではなく、細かな熟成の積み重ねによる印象なのだろう。

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スロットル操作にリンクしてどの回転域からでも必要なだけパワーを得られる。しかも、電子制御デバイスのおかげで、意地悪な入力を行ったとしても、まず破綻することがない。安心感はより引き上げられたように感じられ、その分、積極的にスポーツ走行を楽しみたくなってくる。

そもそもハンドリングはクセがなくいたってニュートラルな旋回を楽しめるものであるし、上体、下半身、ハンドル、ステップなど、どのように入力しても素直な動きをもたらす。ダイナミックな走りを楽しめるだけでなく、ジムカーナ的な走らせ方もとても楽しい。誰でも存分に満喫できるスーパーバイクスペック、これはGSX-S1000GXのキャラクターであり、大きな魅力となっている。

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昔は前傾姿勢を強いられるスーパーバイクでツーリングを楽しんでいたようなライダーが、パフォーマンスをスポイルすることなく、もう少し快適なツーリングを楽しみたいと欲した。そのニーズの先にクロスオーバーセグメントが存在し、GSX-S1000GXは、それをバランスよく落とし込んでいる。だからスパルタンさも持ち合わせている。一般的には8000回転程度まで使えば十分なのだが、その先の高回転域もオマケというものではなく、しっかりとしたドラマが持たされている。やや大柄な車格ともいえるGSX-S1000GXを、高回転域を駆使して楽しむスポーツライディングは特別な世界だ。

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気になるウイングレットの効果だが、少なくとも国内の法定速度域では、大きな違いは感じられないものの、高速走行時には安定方向に機能している手応えがあった。

ここで白状すると、「餃子じゃないんだから、ハネをつければ売れるってものじゃないでしょ」と思っていたが、ふたを開けてみると2026モデルのセールスは好調だと耳にしているし、しかも今回乗ってみてわかったのは、GSX-S1000GXは、新型となってちゃんと熟成されているということだった。

また、新たなGSX-S1000GXと共に、ロングツーリングに出てみたい。心からそう思えたことは大きな収穫となった。

スズキ GSX-S1000GX 詳細写真

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GSX-R1000・K5型を祖とする998cc水冷並列4気筒DOHC4バルブ。ボア×ストロークは73.4×59.0mm、圧縮比12.2:1。最高出力150ps/11000rpm、最大トルク10.7kgf・m/9250rpmを発揮する。

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フロントタイヤは120/70ZR17サイズ。ブレーキはφ310mmダブルディスクにブレンボ製対向4ポットキャリパーの組み合わせ。フロントフォークにはスズキ初の電子制御サスペンションSAESを採用し、150mmという長いホイールトラベルを確保している。

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リアのタイヤサイズは190/50ZR17。ブレーキはシングルディスク+1ポットキャリパー。マフラーはオーソドックスな右出しレイアウトで、GSX-Rシリーズ譲りのマスの集中を意識した造形となっている。

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LEDのバイファンクションヘッドライトを上下に配置し、左右にポジションランプを配置。ハーフカウル的なカウリングと走行風を軽減するフロントスクリーン、ハンドガードを標準装備し、長距離でも疲れにくい佇まいとなっている。

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6.5インチのフルカラーTFT液晶を採用し、スマートフォンとの連携機能も搭載。メーター横にはUSBソケットを備え、日本仕様車にはETC2.0車載器も標準装備されている。

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シフトアップ・ダウン双方に対応するクイックシフターを標準装備。ステップ位置はやや高めにセットされており、スポーティな走りを引き出すポジションを実現している。

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シート高は830mm。兄弟モデルのGSX-S1000/GT(810mm)より20mm高い設定だが、サスペンションが適度に沈み込むため足着き性への不安は少ない。長時間乗っても疲れにくい形状が奢られている。

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2026年モデルで新たに追加された、一目で新型とわかるパーツ。高速走行時に車体を路面側へ押し付け、直進安定性を高める狙いで採用されている。

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クランクケース右側前方に備わるフィン状のゴム製パーツ。プロテクターラジエターヒートと呼ばれ、ラジエターまわりの熱を制御し、足元にこもる熱を軽減する役目を持つと見られる。

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やや低くセットされ、車体の抑えが良いバーハンドル。左側スイッチボックスには各種電子デバイスの操作系を集約。ハンドル前方には手の甲を守るハンドガードが標準装備され、走行風や飛来物から手元を保護してくれる。

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タンク容量は19L。使用燃料はハイオクガソリンだが、2026年モデルではE10ガソリン(バイオエタノール10%混合)にも対応。ボディカラーはグレーのほか、ブラック、ブルーの3色展開。

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テールランプ・ウインカーともにLEDを採用。テールレンズはクリアタイプで、そのレンズ形状は先代GSX-S1000から継承されたもの。ウインカーは細身のレンズを採用し、シャープな後方視認性を演出している。

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リアもスズキ初採用の電子制御サスペンションSAESにより、速度や路面状況、走行姿勢に応じて自動でセッティングを最適化。モード切り替えのほか、任意でのマニュアルセッティングも可能となっている。

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パッセンジャーシート下にはETC2.0車載器を格納。多少のユーティリティスペースも確保されている。グラブバーを兼ねるリアキャリアは大きめの形状で、積載時の使い勝手も良好だ。

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