掲載日:2026年09月28日 フォトTOPICS
取材・写真・文/森下 光紹

Vol.44 川原 直己(かわはら なおみ)

人の性格というのは、本当に様々だ。十人十色。百人居れば百通りの性格がある。それは持って生まれたものと、日々の生活で培われた経験にも左右されるのだろうが、それぞれが唯一無二のものだから無限大だ。人間だけではなくて、他の動物もしかり、いや、この世に存在する万物がすべて違うと言って良い。筆者がこのコーナーで話を聞くライダーも、本当にキャラクターが様々で実に興味深いのだが、今回紹介する川原さんもまた、僕から見ると実にユニークな存在だった。

待ち合わせの場所に彼はヤマハのSR400で現れた。外装をカスタムしたカフェレーサー的なシルエットで、やや前傾のポジション。1978年のデビューから世界で一番長く生産を続けられたヤマハが誇る名車でもあるSRは、様々なカスタムのベースとしても実に魅力的なバイクであり、川原さんの愛車にも、独特の個性が見てとれた。

「昔読んでいた漫画に【特攻の拓(ぶっこみのたく)】というのがあってね。まぁ当時の学園モノで暴走族の話なんですけど、主人公が乗っていたバイクがSRのカスタムで、そのカッコ良さがずーっと頭から離れなくて、二輪免許を取得してから今まで、これしか乗っていないんです」

現在40代となった川原さん。既婚者で、お子さんも娘さんと息子さんが二人いると聞いた。SRを手に入れたのは23歳の時なので、もう17年間の愛車となるのだが、オドメーターに刻まれている数字は1万キロを少し過ぎたばかりである。購入した時の走行距離は1500キロのほぼ新車。聞くと、バイクショップで試乗車として使用していたものを中古車扱いで購入できたということで、もちろん最初は全くのノーマル車。しばらくはノーマルのまま乗っていたのだが、その後結婚して二人の子どもが次々に生まれると、あまり乗らなくなる時代が長く続いたとのことだった。

「仕事は、長年ガソリンスタンド勤務でクルマのメカニックだったりするから、もちろんメンテナンスは自分でやるし、カスタムもオリジナルです。あまり乗らない時期でも、手放す発想はまったく無かったですね。僕は元々それほど長距離を走るツーリングにはあまり興味がないし、大好きなバイクがいつも自分の側にあれば良いのかもしれないです。実は兄も以前はバイクが好きでヤマハのTW200に乗っていましたが、どうやら飽きてしまって僕が引き取り、まったく動かなかったTWを再生したりということもやっていましたね。それはフレームまで改造してあったカスタムだったから、動くようにしてすぐに手放しましたけど、SRを手放すつもりは将来的にも無いですね」

シンプルなシルエットにカスタムされている川原さんのSRだが、基本的な骨格には手を付けない、いわゆる合法カスタムなので、そのまま車検も合格するし当然公道走行にも問題はない。キャブレター吸気のモデルなので、あまり長い期間の放置だと燃料計のシステムがダメになって再生が困難な状況を生むのだが、そこはさすがに本業がメカニックであることから、環境に応じて対策をしてきたのだろう。撮影当日も、久しぶりの走行ということだったが、極めて調子は良さそうだった。

「つい先日、仲間に誘われて千葉県までツーリングに行きました。アクアラインを通ってね。僕のバイクはポジションが前傾だから、手首とかけっこう疲れてしまったので、少しアップハンドルの仕様も考えています。少し大きくなった息子や娘とも、時々タンデムで走ることも多くなったし、今後は少しオドメーターの進み具合が早くなるかもしれないなぁ。まぁあまり遠くには行かないと思うけど。あはは」

最近は、子どもさんの友達繋がりでもライダー仲間が増えつつあるという川原さん。お互い子どもを乗せたタンデムツーリングも楽しんでいるらしい。仲の良い仲間と走るツーリングに大きな魅力をを感じるのだから、それはもう立派なツーリングライダーである。ハンドルをセミアップに変更すると、出かける頻度は少し上がるのかもしれない。
「子どもも成長してきて、免許が取得できる年齢になったら、僕のSRに乗りたいと言うんですよ。それも何だか嬉しくてね。それまではきちんとメンテナンスして乗り続けなくちゃと思います」

1台のSRを親子で乗るというのもなかなか素晴らしい夢だが、川原さんはその時にはもう一台、自分専用のバイクも考えているらしい。

「カワサキのエリミネーター400です。現行モデルじゃなくて、20年前のね。かなり古いからコンディションの良い固体を見つけ出すのは大変なのかもしれないけれど、何しろスタイルが大好きで、昔少しだけ乗ったことがあるのですが、その時の印象が忘れられないのです。手に入れて子供達と走ると楽しそうだなぁ。ウチのかみさんも乗ってくれないかなぁ、なんて思います」

川原さんが所有する現在の愛車は2台。このSR400の他に、完全不動車から再生したスーパーカブのカスタムもある。こちらもかなりユニークなスタイルへと変貌させているが、もちろんすべてが川原さんの手による仕上げだ。近年、カブカスタムの風は勢いがすごくて様々な方向性のスタイルが存在するが、彼のカブもまた、実に楽しそうなシルエットとなっていた。

「クルマはハイエースで、工具棚も取り外しできるよう車内に設置してあるから、家族で遊ぶのにも最高ですよ。車中泊もできるしね、バイク分解してもパーツは車内に投げ込んでおけます。仲間とバーベキューを楽しむのも好きだから、道具を運んだり、色々便利。バイクライフも広がりますよ」

ソロツーリングには興味がないですか? と問いかけると、「スーパー方向音痴だから無理ですね」と笑顔で答えが帰ってきた。プラス。スマホをホルダーでハンドルバーに設置するのも。カッコ悪いからイヤだと笑う。なるほど。
でも、もしかすると数年後には、川原さんは奥様や娘さんをタンデムしてエリミネーター、息子さんはSRに跨ってどこかをツーリングしているのかもしれない。ナビ担当なのは息子さん? いや、さらに娘さんや奥様もライダーになっていたりして……。そんな未来も楽しく想像してしまう、今回の取材だった。









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