ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川 恵子さん

掲載日:2026年03月08日 フォトTOPICS    

取材・写真・文/森下 光紹

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さんメイン画像

Vol.31 三川 恵子(ミカワ ケイコ)

自分の時間を何よりも大切にする時の相棒は
やっぱり、確かな貫禄が必要なのかも

1969年にデビューしたCB750FOURは、その後の世界のバイク史に最も大きな変化をもたらしたモデルと言って良い。1960年代にレーシングマシンとして4気筒はおろか6気筒まで完成させ、その精密機械のようなツインカムエンジンで世界中のライダーを驚愕させたホンダが、市販車として発表したのは、なんともオーソドックスなSOHC4気筒の750だった。それは公道走行モデルゆえのコンセプトで、派手な最高出力を追求せず、扱いやすいトルク特性が大きな特徴のエンジン。しかし、だからこそ大ヒットを記録し、現在でもファンの心を離さないバイクとなったのだと思う。

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像01

試作モデルを前にして、当時の本田宗一郎は「こんなにデカいバイクに誰が乗るんだ」と言ったという話は有名だが、当時の超ビッグバイクも、今となってはオーソドックスなイメージしかない。しかし、その存在感はやはり現在でも圧倒的な迫力がある。「ナナハン」という代名詞を世間に定着させたファーストバイクは、どれほどの時を経てもその輝きを失わない。

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像09

三川さんは、このCBを手に入れてからすでに30年近い時を刻んでいる。モデルは1973年型のK1だ。オイルショック前のモデルは現在最も人気がある年式だが、購入当時はまだまだ普通の中古車だった。しかしショップの人に「長く乗っていれば、ものすごい価値が出てくるよ。お宝に化けるよ」と言われたことを、今でも覚えているという。

彼女は三人兄妹の真ん中で、少女期は朗らかに育ったものの、母親が大病を患い、ほとんど父親に育てられたと話す。免許が取得できる年齢になると、初めて乗ったのがホンダのシャリィ。それは通学など普段の足として使用していたが、本格的なライダーになるイメージはまったくなかったと笑う。

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像03

活発だった彼女は中学生で軟式テニスに熱中し、全国大会で優勝。高校に進学してもインターハイに出場するなど大活躍した。

「でも、それで燃え尽きちゃったみたいなんです。高校を卒業したら、まあ普通に就職して普通に結婚して……みたいな感じだったのかなぁ」

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像04

社会人になるにあたり、クルマの免許を取ろうと教習所に通うと、そこで出会った男性と恋仲になり、結婚することに。まだ19歳だった。次々に3人の子供が生まれ、ご主人の実家で子育てに奮闘。その時代は「自分の趣味どころじゃなかった」のだが、もともと乗り物が好きだったことから、買い物のついでにふらりとクルマでショートドライブする、ほんの少しの時間を大切にしていたという。そして子育てが少し落ち着いてきた時期に、ご主人と共にバイクの免許を取得する。

「30歳になったころですね。ダンナもバイクは好きだったから、一緒に乗れるといいよねーなんて思いながら免許を取って、最初はカワサキのゼファー400を買いました。免許は教習所でそのまま大型まで取得したら、ダンナがこのCB750を見つけて来たんですよ。せっかく免許もあるのだし、ヨンヒャクよりナナハンだよね、ということでゼファーは半年で手放しました」

当時はバイクにそれほど詳しくなかった三川さんだったが、ご主人の年代にとってはやはり憧れのモデル。前のオーナーが施したカスタムもそのまま引き継ぎ、その姿は現在までまったく変わらない。

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像05

ご主人はバイク好きとは言っても、それほど乗ることはなく、愛でるタイプ。隅々まで車体を磨き込み、新しい家族となったナナハンは良いコンディションを保ったまま時を刻むことになった。

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像06

「長く所有していますが、最初はなかなか乗らなかったですね。タイヤは摩耗することなく、劣化して交換していましたから。でも不動車になることはなくて、時々乗っていました。そして、やっぱり自分の時間を大切にするための相棒になっていきましたね」

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像07

「最近は、タイヤが減って交換するようになったんですよ。これって私にとってはすごい進歩なんです。そして昨年は、専門ショップに預けてエンジンをフルオーバーホールしてもらいました。メカニックいわく、もともとコンディションは悪くなかったみたいですけど、きっと一生の相棒だから、きちんと仕上げてもらおうと思いました」

ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.31】三川恵子さん画像08

エンジンの調子も良く、隅々まで綺麗に磨き込まれたナナハン。「綺麗にするのはダンナです」と笑うのだが、きっとそれはご主人の愛情表現ですねと伝えると、少し嬉しそうに彼女は微笑んだ。

古いCBナナハンを駆る女性ライダー。あまり見かけることのないそのシチュエーションは、オーナーズクラブ内でも希少な存在であり、朗らかな彼女は人気者でもある。身長が高いのでバイクの取り回しにもまったく不安要素はなく、旧車ならではのキックスタートも一発で決める。そしてアクセルを少し煽ると、あの独特な四気筒サウンドが響き渡る。ミッションをローに叩き込む時の音もまた独特だ。そして、そこからの加速音。そのどれもが官能的で、どの時代に生きているバイク好きでも、絶対的な魅力に引き付けられてしまう。それがこのCB750FOURなのだと思う。

ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

愛車を売却して乗換しませんか?

2つの売却方法から選択可能!

方法1.オークション

出品前買取相場が分かる!
3000社の中から最高入札店のみとやり取りで完結。

方法2.買取一括査定

業界最大級の加盟店数!
最大12社一括査定
愛車が高く売れるチャンス

メーカー

郵便番号

タグで検索