掲載日:2012年05月09日 ツーリング情報局 › 九州エリア
投稿者/フジ丸さん | 取材日/2012年 冬
季節の移り目を感じつつ
美味なる小城羊羹に舌鼓
九州には七つの県があり、それぞれの県がそれぞれの文化を持ち、独特の方言を話します。福岡、熊本、大分、宮崎、鹿児島、長崎、そして葉隠の佐賀県です。
家を出た時間には底冷えがしていましたが、有明海沿岸道路を走り始めるころになると、柔らかい春の日差しが道をところどころ照らし出していました。とはいえまだ1月、海沿いの町を吹き抜ける風は寒気をはらみ、鋭く頬を刺してきます。筑後川に掛かる新田大橋を渡り、広域農道を使って佐賀県小城(おぎ)の町に入ります。
この町は江戸時代に城を持たなかったので、城下町というより陣屋町が正解かもしれません。駅前から北へ伸びる街道沿いを中心に、23軒もの羊羹屋が軒を並べます。その街道から一本裏通りに入ると、小さな家々が密集していて、塀に押しつぶされるように細々と道が続いています。その一角に岡本為吉羊羹本舗があります。
ここは二代目が20年前に亡くなり、それ以来、奥さんと三代目の息子さんの二人で暖簾を守っているという老舗。私が店に着いたのはまだ午前中でしたが、表には「本日は売り切れました」の看板が早くも出ていました。手作業で作られる羊羹は本数も限られてきます。そのため私は、わざわざ予約をして訪れたのです。ちなみに、待ちの期間は12日間でした。
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| 小城の町の全景。静かな佇まいの町は、見ているだけで心がなごみます。この撮影の後、微かに射した日射しがはけで刷いたように、町の家々を朱に染めていました。 |
店の扉は建て付けが悪いらしくギギーッと音を立てます。昭和初期を思わせるような店内で、「ごめんください」と幾度もおとないを入れても返事がありません。建物の横から裏に回ると、奥さんが作業場で腰をかがめて赤土を両手で練っています。「なにをしているのだろう」と、声もかけずしばらく作業風景を見ていたところ、こちらの気配を察したらしく奥さんが振り向かれました。
「この作業場は先代が働いていた昔のまんまだから、おんぼろでねぇ。火を入れると土釜も痩せていくから、ときどき赤土で固めんといかんのよ」
とのこと。また、製造工程については、最初こそ機械を使うものの、その後はすべて手作業のようでした。観光地でよく目にする小城羊羹は、表面が白く粉をふいて硬くなった切り羊羹が主流ですが、この店の羊羹は表面がつるつるとした流し羊羹なのです。
奥さん曰く、「高額の乾燥機は買えないし、狭い作業場には置いとく場所もないからね」。つまり、よく目にするあのカタチは乾燥させた姿だったのです。「どうしても欲しいなら、自然乾燥で作ってあげるよ。この冬場だけの特製をね」と言ってくれましたが、私はこの店ならではの羊羹で満足。欲しい人は頼んでみてはいかがでしょうか。
羊羹を手にして道に出ると、遮るものがない日射しが中天にさしかかり、季候は紛れもない春のように思えました。確実に、季節の変り目が訪れているようです。 |
| 小城羊羹、白羊羹、茶羊羹の3種類があり、それぞれ1本550円。 小城羊羹はつやつやとしていて食感はとてもなめらかで、まるでプリンのようにやわらかいです。甘さは極々控えめで小豆の風味が口の中にひろがります。正直このような羊羹ははじめて食べました。 |
有明海沿岸道路 → 岡本為吉本舗 → 小城公園 → 井出ちゃんぽん
スポット紹介
岡本為吉本舗
所在地/佐賀県小城市小城町大手町124
Tel/0952-73-2933
井出ちゃんぽん
所在地/佐賀県武雄市北方町志久1928
Tel/0954-36-2047
営業時間/10:30~21:00 (オーダーストップは20:30)
定休日/・水曜 (水曜が祝日の場合は翌木曜)
・年末年始 (12月31日・1月1日)
URL/WEBサイト
熊本県熊本市在住。BMW R1150Rオーナー。詳細な地元自慢レポートを表現豊かに届けてくれる。奥さんと娘さん、家族3人バイク2台のツーリングもしばしば。
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