島根・歴史街道ツーリング

砂鉄と森林資源に恵まれていた中国山地は、古代から製鉄がさかんな地方でした。とくに幕末から明治初めの最盛期には、国内の鉄生産量の約９割を占めていたそうです。そこに位置する島根県の安来市・雲南市・奥出雲町では、1987年から『鉄の道文化圏』というプロジェクトを共同で立ち上げ、それぞれの街に点在する鉄に関する施設をつなぎ『ゆったり散歩道』と名づけて PR しています。散歩道と言っても、ぐるりと一周すると約 170km もありますが、今回はたたら製鉄の勉強を兼ねてこの『ゆったり散歩道』をバイクで散歩と洒落ました。ちなみに、たたらとは日本古来の製鉄法のことです。

ツーリング当日の10月８日（土）は絶好の秋日和、久しぶりのツーリングで張り切ってスタートです。まず目指したのは、奥出雲たたら御三家のある雲南市吉田町。日本のたたら製鉄の中心地といわれる吉田町に残る田部家の土蔵群は、鉄と共に栄えた様子が伺えます。

そこから ５km ほど走ると、国指定重要民族文化財の「菅谷たたら山内（さんない）」にたどり着きます。ここは日本唯一の「永代たたら」の遺構であり、高殿を中心に元小屋、米蔵、三番屋敷、村下屋敷、大銅場が立ち並び、当時の雰囲気を残しています。

続いて、重要文化財の櫻井家住宅（奥出雲町上阿井）と可部屋集成館、国登録文化財の絲原家と絲原記念館（奥出雲町大谷）。昼食を挟んで、横田町の「奥出雲たたらと刀剣館」と、安来市広瀬町まで下って鉄に関わる人々の守護神を祀ってある「金屋子神社」を見学して帰りました。

『鉄の道文化圏』を巡ると、自然と人間と製鉄技術が古代から不思議な調和を保って栄えているのが分かります。今、何かと元気のないわが国ですが、祖先の素晴らしさを知り、明るい希望を感じたのでした。

秋の中国山地北斜面の奥出雲町上阿井附近の県道。峠あり、カーブあり、沿道の田んぼは黄金色、コスモスの群生など、絶好のツーリングコースです。

菅谷たたら山内。山内（さんない）とはたたら師達の集落であり、特殊な集団生活を構成して定着しました。高殿を中心に当時の雰囲気を残しています。