スズキ GSX-R(1986)

掲載日:2016年02月05日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI GSX-R(1986)
GSX-Rで400にレプリカをイメージづけたスズキは1986年型で角目1灯化ほか多くを変更。
市場では受けなかったが先進性は高かった。

難しかった継承と変革

クラス初のアルミフレームにクラストップの59馬力エンジンを搭載して、一世風靡した初代GSX-R(400)は1984年にデビュー。1985年の2代目はカラーほかマイナーチェンジを行い、今回紹介の3代目=1986年型では全面変更を受けた。外観はもちろん、エンジンもフレームも足まわりも…と、すべて一新。ホイールサイズも前16/後18インチから時代の標準、前後17インチへ。

前輪の接地感が向上し、リンク内にエキセントリックカムを設けたE-フルフローターリアサスペンションは沈み加減が体感しやすくなっていた。フレームもダブルクレードル型からメインチューブの上下幅を拡大し、「日の字」断面のDC-ALBOXに。軽量・高剛性で、低重心化も促進し、初代よりも明らかにニュートラルな車体特性が得られていた。

53×45.2から56×40.4mmへとショートストローク化したエンジンは4つのバルブも大径化し吸排気効率を改善。ピストンリング肉厚も0.8mmと薄くして摩擦抵抗を低減。冷却方式は水冷から、SATCSに。最も高温となるシリンダーヘッド部を水冷、シリンダーブロックは空冷、ピストンはGSX-R750で採用していた、裏面へ多量のオイルを吹きつける油冷式と、3タイプの冷却をひとつにまとめた独自の方式だ。

これによりシリンダー部の冷却水路が不要となり軽量コンパクト化され、ホイールベースは25mm短縮。そのエンジンは鋭いレスポンスを誇り、高回転の伸び感が増していた。

実はこの1年3カ月後、1987年6月にGSX-RはGSX-R400へとモデルチェンジし、車名には排気量を表す400が初めて付けられ、ヘッドライトは丸目2灯に戻り、かつ印象の強いイエローバルブを採用した。ホイールも新形状の3本スポークキャストになり、リムをワイド化。タイヤもラジアル化され、後輪は再度17から18インチ径へ変更された。ラジアルの導入で外乱収束性、突起乗越衝撃力収束性、無荷重時のタイヤ外径成長量、トレッドラジアス変化とも大幅な改善が図られ、主として高速直進性、グリップ力、乗り心地向上が明確だった。

これは3代目のマイナーチェンジだったはずだが、外観的には角目1灯から丸目2灯となって、フルチェンジくらいに変わった感は強かった。ちなみに角目1灯は1984~86年頃の各社の主力400モデルに採用されていったが、成功したのはカワサキGPZ400Rくらいで、ほかはGSX-Rも含めて丸目に戻る。市場は2灯を支持していたのだ。

この3代目GSX-Rのインパクトは強くしっかりした性能も持っていたが、セールスではその変革が生かせなかった。ただ丸目の後期型で勢いを取り戻し、ヒートする一方のTTF-3レースやSPレースに向けて、クロスミッションを装備するSP仕様も追加し限定販売。さらに、丸目化した1年後の1988年3月には4代目へとフルチェンジが行われる。当時のペースとしては1年サイクルでの大変更も当たり前と言えたが、それにしても大幅な変更が図られた。

エンジンは新設計で一般的な水冷となり、メカニカルロス低減、オイル流路のリファイン、コンロッド連結部強化を行う。スロットルバルブを円柱から半円柱形状としたスリングショットキャブの採用でレスンポンスを大幅改善し、マフラーは4in1でなく左右2本出しとして騒音規制をクリア。フレームも新設計ツインチューブで50%剛性アップし、ホイールも再度前後17インチ化。

1989年1月にはスイングアームを補強しGSX-R400Rに。SP仕様に加え、SP仕様の装備でギアがクロスでなくSTDレシオのSP2を設定と、3タイプに。90年代に入ると倒立フォークも備える。

初代から1995年の最終型まで手堅い人気を誇ったGSX-R400だが、3代目での大きな変化は、人気を維持することの難しさも同時に露呈した。ただ、先進性と性能の高さで今もこの3代目が印象に残るという人も、多くいるはずだ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

異型四角デザインのヘッドライトと空力優先のスタイルでユーザー評価の別れた1986年型GSX-Rだが、初代GSX-Rのネガをことごとく払拭して「扱いやすさ=速さ」を具現化した佳作だった。このスタイルをベースにデュアルヘッドライトを装備した、1987年のGSX- R400はラジアルタイヤ装備、新作ホイールなど足まわりの充実によって走りを大幅に進化させた。安心の操安性はクラストップレベルだった

4型で水冷エンジンへ。空冷シリンダー、油冷ピストン裏の冷却というSATCS(スズキ・アドバンスド・クーリング・システム)は、1986年3月のGSX-Rで採用したものの、1988年3月のGSX-R400では高効率化を狙ってエンジンを水冷化。この時期の、もうひとつの大きな流れは充填効率を上げるために新気の積極的導入が各社で取り入れられたことだ。スズキは1987年型から、SCAIと呼ぶダクトを設定し、1988年型にも採用して、後の常識技術に昇華した

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