スズキ GF250(1985)

掲載日:2015年01月23日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI GF250(1985)
250cc4気筒の先駆け、GS250FW。さらにこれをネイキッドとして洗練させた
意外な時代の先鞭があった。GF250がそれだ。

250マルチの中継ぎ役

1985年デビューのスズキGF250は、乗った瞬間に人を穏やかな気持ちにしてくれるバイクと思った。低振動でメカノイズがきわめて少なく、すべての回転域で上質な回り方をするエンジンを持ち、操縦性は軽いけれど落ち着きがある設定。この組み合わせが実に新鮮だった。

このGF250は、スズキがRG250ΓやGSX-Rシリーズで突っ走っていたレプリカ路線の各部ユニットを再構築し、反レプリカとして探っていたネイキッドスタイルとドッキングしたものだった。そのエンジンは世界初の4スト水冷直4(2バルブ)となった’83年のGS250FWのものをリファイン。1ボディに2気筒分のボアを持つ2バレルキャブもFWから継承、排気系は当時もつながりの深かったヨシムラ由来の技術によるサイクロンタイプ4in4。爆発順に4つのエキパイを集合させて効率を高めるものだ。

車体はフレームがL-BOX。ライトウェイト・ボックスセクションタイプで、RG250ΓとGSX-R(750/400)で確立した角型材製ダブルクレードルを、アルミでなく鋼管で構成した。足まわりは、フロント16インチに、リヤはモノサスのEフルフローター。上下からショックを押すフルフローターを一歩進め、ボトムリンクとした上で、リンク部に偏芯カムを加えてプログレッシブ特性をうまく発揮できるようにしていた。その上でプリロードを別体ダイヤルで調整できるRCPL(リモートコントロール・プリロード)を追加。フロントはアンチノーズダイブ機構ANDFの思想を継ぐPDF(ポジティブダンピングフォーク)に変更。これはフォーク内に設けたスプールとリーフバルブで、急ブレーキ時などの大きな荷重がかかった際の減衰力を高めていて、ANDFで気になったコーナリング時やエンブレ時のノーズダイブを緩和するようになっていた。

ブレーキもフロントディスクはディスクが熱ひずみ等の影響を受けにくいフローティングマウント(フローティングディスクプレートと呼んだ)となり、キャリパーはDPP=デュアル・オポジット・ピストン、今で言う対向4ピストン。べースになったGS250FWはハーフカウルを装備していたが、スズキらしからぬ大きくて重い車体とまったりとした操縦感が影響して、滑らかな4気筒のテイストや魅力が十分に演出できていなかった。GF250はネイキッドともあってそこから約20kgダイエットして乾燥139kgとしつつ、初代GS250FWの36馬力から5馬力もアップしたことで、元々あった滑らかなパワーが意のままに引き出せるようになった。ただ、GFでも加速感は250ccとしては特段優れているようには感じられなかった。しかし、水冷4気筒250ccという当時世界唯一のメカニズムが持つ、実に柔らかい、きめ細かい回り方はGFにしかない独自のテイストだった。

GF登場からほどなくしてヤマハが’85年に4バルブのFZ250フェーザーで続き、ホンダは’86年に4バルブ+カムギヤトレーンのCBR250Fourを投入するに至った。ただ、GS250FWからGFというパイオニアによって、250cc 4気筒という日本独自のバイク文化が始まったのは間違いない。

翌’86年になるとGFは吸排気系をリファインし41馬力から45馬力へパワーアップを実現。キャブはボアを拡大してBSW24からBSW26へ。ライバル車の登場を意識してのパワーアップだった。装備面ではサイドスタンド警告灯を新設。一方でハーフカウル仕様のSを追加、さらにシングルシート/アンダーカウルを加えたGF250Sスペシャルをタイプ追加していく。

この、45馬力になったマイチェンモデルにも乗ったことがある。サイクロンタイプの集合マフラーが発するサウンドはますます心地よく感じたが、それはパワーアップによるものではなく、スロットルのレスポンスとリニアリティの向上による軽快感のアップだった。元々軽量な上に750mmという低いシート高も手伝って、市街地走行を中心にワインディングでも実に接しやすいバイクだったが、一定速度でクルーズすると4気筒ならではのしっとりとした落ち着きのあるテイストが楽しめた。

その後この250cc 4気筒は、’87年にはGSX-R思想を加えたGSX-R250を登場させることで、ハイメカ=レプリカという流れを250クラスにも送り出すこととなった。その後’89年のコブラやバンディット250でスズキはネイキッドに再トライし、世のネイキッドブームを待つことになるが、その意味ではGF250は早過ぎた中継ぎ役だったと言えるのではないだろうか。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

タンクにはスズキのエンブレムを入れずに水冷4気筒を表すFOURの文字を入れるなど、250ccクラスで世界初のエンジン形式を投入した、スズキの熱いこだわりが表現された。前輪16インチ、リンク式リヤサス、角形パイプフレームなど、’80年代前期ならではの新技術をすべからく投入。16インチと言ってもクイックな特性はあえて出していないが、低中速での軽快感はやはり大きな魅力だった

 

45馬力になった’86年型GF250にはフレームマウントのハーフカウルと前輪Wディスク装備のGF250Sを追加。半年後にアンダーカウルとシングルシートカウル装備のGF250Sスペシャルが加わる。外観は派手ではないが、今こそほしい落ち着きのテイスト

BikeBooksで雑誌・電子雑誌をチェック!

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索