掲載日:2014年03月19日 絶版ミドルバイク
文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)
記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです
「なんという優しさなんだろう」
初めてGS250FWに乗った印象だ。エンジンはどこまでもしなやか。操縦性はクイックでなく、勝手にヒラヒラ曲がるのではなく、どんなペースでも穏やか。乗り心地も250ccという枠を超えてしっとりと上質。滑らかなエンジン回転と、大柄でゆったりした乗り心地が織り成すGS250FWの独特の世界は、今なお孤高。250ccツアラーとして見れば最上だったともいえる。
搭載されたエンジンは量産車としては世界初となる水冷DOHC直列4気筒250cc。1980年、2ストエンジンのヤマハRZ250が強烈パンチの加速で一世を風靡し、’82年にはホンダが4ストで、RZに負けじと軽量で乗りやすく、クイックな旋回性を武器にしたVT250Fをデビューさせて250ccマーケットは一気に拡大。その250ccのまさにブーム時に、スズキがライバル2車の数値を上回る36馬力を発揮したGS250FWを発表したのだから、デビュー当時のインパクトはけっして小さくなかった。
4スト車開発では後発のスズキとしては、’70年代後半からの4スト・モデルラッシュの勢いを加速させる中で、このバイクではさらに「4スト250マルチの世界初」であり、「クラス最高の馬力」にこだわった。もはや後発メーカーではなく、4ストのリーディングカンパニーとしての誇りを250ccの分野でも強調するかのようだった。
一見、GS250FWは馬力数値だけを見る限り、パワー指向がますます強まる当時の潮流にしっかりと適合し、あるいはリードしたようにみえた。だがしかし、実際には重くて大きな車重がたたってか、俊足ぶりを見せられなかった。しかも当時もっとも高い47万9,000円というプライスタグを付けたこともあったためか、ヒット作には至らなかった。流行にのってモノが売れるのは昔も今も同じだが、GS250FWのようなバイクこそ、旅するクオーターバイク(250ccバイクの意で当時は頻繁に使われた)として高い評価を受けてしかるべきだったろう。
さて、そんな視点を外して各部を見ると、やはりその時代性が満載状態。角型断面パイプを使ったフレームには、GPレーサーで流行した前輪16インチを採用。理論では小径化によってジャイロマスを低減してシャープな旋回性を発揮するというもの。しかもタイヤ幅を上げることで接地面積を増やし、制動力アップを狙うというものだった。フロントフォークにはアンチノーズダイブ機構をセット。ブレーキキャリパーは対向ピストン式という贅沢ぶり。
リヤサスはしなやかな作動性と中間から腰のある動きを見せるフルフローター式を採用。カウルはフレームマウントのハーフカウル式のほかにビキニカウル仕様も用意した。
まさに至れり尽くせりの装備だったが、素晴らしいマフラーサウンドも魅力的なバイクだった。
’84年のマイナーチェンジではエンジン出力を36馬力から38馬力へアップ。吸気バルブサイズのアップがメインだが、実質的には穏やかな特性のまま。バックミラーはハンドルマウントがカウルマウント型となったほか、リヤブレーキもディスク化された。’80年代前期から中期は、このクラスでの前後ディスクブレーキ装備は過渡期にあったわけだ。
スズキはこの後、軽量でさらに出力をアップさせたネイキッドの、GF250とハーフカウルのGF250Sをリリース。ヘルメットが収納できるアクロス、前衛デザインの象徴的なネイキッドとなったコブラ、美しい定番ネイキッドとして評価されたバンディット、スーパースポーツのGSX-R250Rなど、GS250FWのボア・ストロークを変えることなく、さまざまなモデルをリリースしつつ進化し続けていったのだ。
竜洋テストコースで撮影されたスズキ入魂の250ccスポーツGS250FW。兄貴分のGSX400FWはDOHC 4バルブだがGSはDOHC 2バルブ。エンジン性能で、他社に追いつき追い越しつつある自信が、車体や前後サスの先進性でもみられた。癖のない取っつきやすい特性は、それまでのスズキの伝統であるが、エンジンと乗り味両面のしなやかさがシンクロした作り込みは見事だった
スズキ契約ライダーだったフランコ・ウンチーニによるコメントを掲載。世界GPの技術を積極的に採り入れるのが’80年代前期の最大の特徴。このGS250FWも例外ではなかった。前輪16インチや角形パイプフレーム、リンク式リヤサス、アンチノーズダイブメカなどなど。しかし、ツーリングに最適な乗り味と装備で人気はイマイチだったが、今こそ評価されるべき方向性を持つ
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