『ツーリングのつぼ』

冬の北海道のススメ(3)

掲載日:2013年12月10日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

日本の北端が寒いように、地球の端っこも寒い。そのため、季節待ちという長期旅行者界の専門用語がある。これは旅行先の極端な気候、たとえば雨期や酷暑、極寒を避ける目的で、目的地手前の快適な地域で待機するコトだが、そのまま働き出して住み着いてしまう危険もある。その昔のかしわ園や米原キャンプ場の日常を、そのまま国際的にした感じだ。さらに、ドミトリー、沈没、シェアメシなどの意味が分かるようになれば、すでに会社での出世は絶望的だろう。

私は探検家ではないので、できることならば、赤道から離れた寒い場所は快適なシーズンに行きたいという気であふれている。そのため世界1周の出発は、アラスカが真夏になる季節にスタートした。北極海まであと数キロという最北端まで行ったが(石油会社の私有地なので、その先は行けない)、真夏なのに天気が悪いと小雪が降ってしまった。この頃はまだ、旅の高揚感で寒さをカバーしていた気がする。

南米の一番下に着く頃には計画がズレてきた。地球儀で南米の先っちょを見ると、ほとんど南極だ。小雪がチラつくようになったので、あわてて北上したものだ(南半球では、北が暖かい)。そこでは寒い上に風が強いという悪条件だったが、熊やライオンなどの猛獣がいないので、野宿は気楽だった。ここで使うべく持ってきたゴアテックスのウインターグローブは、すでに途中で盗まれていたので、働く人の店で買った作業用グローブを使っていた。ブルーのジャケットに黄色の手袋は似合わなかったが、寒さにはかえられない。

そしてヨーロッパ最北端のノルド岬には、9月の頭くらいに到着した。ここではすでに、晴れていても朝から晩まで雨具を脱げない日々だった。防寒のコツは重ね着、カッコ良く言うとレイヤードだ。厚手の1枚ではなく、薄手を2枚着た方が、その間の空気が暖かさをもたらしてくれるし、季節に合わせてマルチに使うことができる。使わない防寒着は邪魔で、寝る時の枕くらいにしか使えない。

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