『ツーリングのつぼ』

コッヘル(3)

掲載日:2012年07月31日 タメになるショートコラム集ツーリングのつぼ    

Text/Kosuke KAWAI

世界一周ツーリングをしたと言うと、たいていの人は、骨付き肉を持ったまま裸馬にまたがり、何でも食べてしまう強靱な胃袋を持った、毛むくじゃらのゴリラのような人間をイメージしがちだ。それは誤解で、私は食べ物に好き嫌いが多く、想像以上に虚弱で冴えない風体をしている。馬も所有していない。

特に苦手な食べ物は、イモ虫の佃煮や猿の薫製、シロアリや蛇の煮物などだ。海亀のゆで卵は生臭く、アマゾンやアフリカでよく食べられているナマズは、あまりうまい食べ物とは思わない。そのうえ全体の1/3程度は頭の骨なので、不用意に噛みつかない方がいい。

そのため、よく自炊をしていた。日本には安くてうまい弁当やレトルト食品があるので、調理を面倒に感じる人は、ただ食べ物を温めるだけのためにコッフェルを持っても良い。お湯をわかしてコーヒーを淹れるだけでも立派な調理だ。

コッフェルを持っていなければ、わざわざ新しく購入する必要もなく、自宅の台所から手頃なナベを持ち出しても構わない。まず使ってみれば、自分の腹ぐあいに合ったサイズも分かるだろう。

それが実現できない場合を考慮して、各コッフェルメーカー様には、車の試乗のようにコッフェルの使用体験会をお願いしたい。煮こぼれやしすい長いスパゲティをアルデンテで茹でられれば、他の調理に問題はないと思う。日本人なら、米が炊きやすいかも試して欲しい。

たいていのバイクツーリングでは、持って行くコンロはひとつなので、調理のタイミングも難しい。コッフェルで米を炊いている間に肉と野菜を切り、米が炊き終わって蒸らしている間にフライパンでおかずを炒めるのが基本だ。

完成したご飯とおかずを食べながら、その間にみそ汁を作れるあなたは、私と同じ一人暮らしの長いA型だろう。それから、コンロは2つ持って行っても構わないと思う。

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