『ウェア屋さんのひとりごと』

ライディングウェアのプロテクター(CE規格について)

掲載日:2011年11月10日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

5月の鈴鹿 2&4 で開幕した全日本ロードレースも、10月30日の最終戦(鈴鹿)で全ての日程を終え、“レーシングサービスのお仕事” も少しだけ一段落しました。“少しだけ” というのは、選手によってオフシーズンのテスト走行があったり、地方選手権は引き続き開催されるため、まだまだ終わりというわけではないのです。

と、前置きはさておき、前回は「プロテクターには色々な種類がありますよ」というところで終わりました。ライディングウェアを見ているお客さんの会話を聞いてみると、プロテクターの有無は気にされても、“どんなプロテクターが入っているか” を気にされている方は少ない様に思います。当社では、ライディングウェアを開発する際に採用するプロテクターの基準のひとつとして、“CE規格であるかどうか” という点があります。CE規格とは、EU加盟国が定める工業製品の基準で、人体防護服に該当するライディングウェアをはじめ、数多くの工業製品がその目的や安全性等における基準を満たした場合に付けられるマークです。プロテクターに対するCE適合の基準は、当然のことながら “衝撃吸収力” ですが、日本国内にこの様な基準は無く、当社が独自に検査した結果では、CE適合品とそうでないプロテクターの衝撃吸収力は3倍程度の差があることを確認しています(CE適合と非適合の樹脂+フォームタイプによる比較)。ちなみに、CE適合のフォームとそうでないものを指で摘んでみると、その能力の違いに気付かれる方も多いと思います。

いちばんよく使用される肩・肘プロテクターですが、樹脂製パーツとフォームを組み合わせたハードタイプと、高密度のポリウレタンを1ピース成型したソフトタイプのいずれかを採用する製品が多く見られます。ハードタイプは鋭利な突起等による耐貫通性に優れる一方で重く、着心地も硬く感じる事があります。ソフトタイプは一見すると弱そうに見えるのですが、CE適合であれば、フォーム自体が潰れる過程で大きな衝撃を吸収する能力を持っているため、海外でも数多くの製品に採用されています。当社でも性能と居心地のバランスを重視した結果、殆どの製品にソフトタイプを使用し、ハードタイプは “プロテクションありき!” の一部モデルに採用しているというのが現状です。

そのほか、タウンユースをメインとした軽めのウェアや、着用時のシルエットを優先したウェアには、更に薄くて軽量なフォームタイプを使用する場合もあります。万一のことを考えればプロテクション機能の高さは大切ですが、着用感を嫌がってプロテクターを外されてしまうぐらいなら、最低限の装備として…といったところです。逆にプロテクターに不安を感じた場合には、別売のプロテクターによるアップグレードが可能な製品もあるので、購入時に相談されてはいかがでしょう。

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