『バイク乗りの勘所』

植物性オイルの話

掲載日:2013年08月05日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

最近の高性能モーターオイルの多くがエステルを使っている。エステルは “脂肪酸+アルコール→エステル+水” という化学反応で生成されるため、エステルを使用したオイルは化学合成油に分類される。だが、脂肪酸はもちろんアルコールも、もとをただせば植物油から作られた物が多い。そして、今やそのエステル系化学合成油に置き換えられてしまったが、潤滑油に適したエステルの製造技術が確立し、量産されるまでの時代、レーシングマシンには植物油が多用された。

2ストロークのエンジンオイル(混合給油)やミッションオイルにはカストロールの R30 やシェルのスーパーM、4ストロークのエンジンオイルにはカストロールの B353 あたりが定番だった。R30 やスーパーMはひまし油を原料にしており、これを混ぜたガソリンが燃焼したときの匂いが、いわゆる “オイルの焼ける香り” で、懐かしむファンは多いはず。ただ、植物油は腐敗や酸化しやすく、ミッションや4ストのエンジンでは1レースで要交換。街乗りにはまったく不向きだった。

では、なぜレーシングマシンに好んで植物油が使われたか。それは、鉱物油よりも粘度を出しやすく、潤滑性と耐摩耗性に優れているからだ。最も身近にある植物油といえばサラダオイル。私はこれをバイク整備に重宝している。主に錆止めとしてだが、ドライバーの軸、レンチ類、プライヤー類などを、サラダオイルを染み込ませたタオルで軽く拭いておくのだ。鉱物油や正体不明の化学合成油とは違い(食用油なのだから当然)体に有害な成分が入っていないのは間違いない。

もうひとつ、ドリルやタップなどを使うとき、先端に塗るのもサラダオイルがおすすめだ。エンジンオイル、ギアオイル、専用の潤滑剤など、いろいろ使ってみたが、それらが “効果あり” 程度なのに対して、サラダオイルは “小気味よい” のだ。中でもハンドタップとは相性が良く、ギシギシした不快感がなく、さくさく気持よくネジが切れる。少々温度が上がって煙が出たときの香りも、いかにも体に悪そうな鉱物油などとは違いって、香ばしく、心地よい。お試しあれ。

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