ライダーインタビュー【モーターサイクル・ザン・パラダイス Vol.9】 盛田 佳代さん

掲載日:2025年03月18日 フォトTOPICS    

取材協力/フロッグピット  取材・写真・文/森下 光紹

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Vol.9 盛田 佳代(もりた かよ)

生き方のスイッチが何個もあるのが女性
そのたびにエンジン全開って、凄いです

人間が地球上に生まれてどれほど経ったのかは良く知らないが、絶滅しないで増え続けているのだからたいしたものだ。

人間の歴史は戦争の歴史でもあるけれども、そうしているのは男性だけ。きっと脳のどこかに足らない部分があるのだろうね。

その点、女性は基本的に平和主義で、何しろ子どもを生むことができるのだから最強だ。つまり人間の繁栄は素敵な女性に握られているということなのだが、強力な生命力も女性ライダーから感じるというお話です。

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盛田佳代さんはSR400に乗っている。白いボディーは珍しく、キャブ時代の同車には存在しなかったはずのインジェクションモデルだ。年式は2012年で、彼女は数年前に中古車として手に入れた。

「スポーツバイクって、実は乗ったことなくて。昔はスキューバダイビングやスキーとかやっていました。結婚して、主人はバイク乗りだった過去もあるのですが、夫婦でバイク乗りという方向にも行かず、彼が大型バイクに乗ろうかと相談された時だって、危ないから止めたらって言ってたぐらいなんですよ」

彼女は今、モカちゃんと呼ばれている。モーターサイクル乗りの佳代さんだからモカちゃんだ。以前はほぼ興味がなかったバイク乗りに、なぜなったのだろう。

「昔、高校時代に通学の足で原付きスクーターに乗っていたんです。親に相談して、通学距離が長いからという理由でね。同じような友達もいて、ちょっとしたバイク仲間になりました。私、兵庫県の出身なんですけど、勢いで広島までツーリングしたり、四国にまで行っちゃったりね。その後、就職で上京してからはまったくバイクと無縁になりましたが、どこか自分の脳の片隅に、バイク乗りとしての素養がしまい込んであったのかもしれないですね」

結婚して子育て中は、裁縫が趣味のインドア生活。ご主人はマラソンに目覚めてアスリートになったと笑う。モカちゃんは、モカちゃんになる前は子供服やハロウィンパーティー用のコスチュームを作ったりすることが大好きな普通のお母さんだったのだ。

「でもねぇ、娘も大きくなるとだんだん喜ばなくなってくるのよ。それが成長なのだから嬉しかったりもするけど、これからどうしようかなぁと思って……」

今から10年ほど前のこと。アルバイトで毎月1万円ずつ貯金して、旅に出ようと思ったという。いや、待てよ、最近流行りだした自転車も健康のためには良いかなぁ。でもあのピッチピチのウェアーは抵抗あるし……という思考を重ねている時に「そうだ私、バイクが良いかも」と思ってご主人に相談してみると、「いいんじゃない」という意外な返事が帰ってきた。

「ダンナが大型バイクに乗ろうという時は反対したのに、意外でしたね。彼も少し興味あるからGOサイン出したのかも、ですけど」

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最初の愛車は、ヤマハのドラッグスター250だった。判断理由はとにかくシートが低く、両足がべったり地面に着くこと。スタイルも気に入っていたが、実は販売店で見たSR400のほうが好みだったという。しかし、お店のスタッフに反対されたのだ。「キック始動のエンジンだから、初心者には無理」という理由だった。もちろんそれはごもっともと感じて、SRは諦めた。

ドラッグスターを手に入れたモカちゃんは、実家の兵庫県まで走ったり、その足で紀伊半島を廻ったり、北は青森を除く東北地方には全部出かけていくというツーリングライダーになってしまった。バイク乗りになったと同時にブログも始めたことで日本中にネットワークが広がり、バイク友達がどんどん増えたことが楽しかったという。

「SSTRにも参加しましたね。まぁイベントに参加する興味よりも、そこで出会った友達に会いに行くことが目的になっていったから、正式参加は一回だけですけど、能登には今でも良く行きますよ」

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5年乗ったドラッグスターはエンジントラブルを抱えてしまい、別のバイクに買い替えることを決意する。そしていよいよSRを手にする時が来た。

最終モデルはインジェクション吸気ゆえ、バッテリーが元気ならばキックでも比較的簡単にエンジン始動できるようになっていた。バイクショップで白いボディーの個体を探してもらい、ついに念願の納車。その日の帰宅までの緊張は、今でも覚えていると笑う。

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「走り出したら絶対エンストしちゃいけないって、全身に力が入ってしまって。右折も左折も凄い緊張しながら帰ってきたら、もう体中が痛くなっていました」

ドラッグスターに比べると、シートも高い。車重も少し重い。しかしごく自然なライディングポジションや素直なハンドリングにはすぐに慣れて、ツーリングでも使えるようになっていった。特に実家に向けて走っていった高速道路での安心感は絶大で、到着した時に疲労していないことに驚いたという。

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「コロナ禍直前で乗り換えたから、SRでのロングツーリングはまだまだなんですけど、もう2台で18万キロは走ったかなぁ。九州や北海道にはまだ行ったことがないから、行きたいですね」

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昨年の11月に霧ヶ峰で転倒。骨折してしまったから、しばらくバイクには乗れなかった。この取材は3月の初旬だったが、久しぶりに乗るバイクということで少し緊張ぎみだったようだ。しかしキックでのエンジン始動もまったく慣れたもので問題なし。バイクの手入れも行き届いていた。ハンドル周りには、頑丈なスマホホルダーと時計。温度計も装備してあり、長旅好きなライダーであることがよく分かる。

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ライディング中の彼女を見ると、いつもニコニコと笑っている。実に楽しそうなのだ。バイクを降りても笑顔のまま。ロングでもショートでも、とにかくバイクを走らせていることが大好きなのだろう。

「カフェ巡りしたり、古墳とか大好きだから、史跡を訪ねる旅もしますね。バイクって、自分の手足みたいな乗り物だから、最高に楽しいです」

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バイクには特別な生命力を感じる。それは男女共通であるだろう。しかし男性は一生が長い一本の川だが、女性は少し違う。年代ごとにリセットして違うスイッチを押すのだ。人生の楽しみ方が柔軟なのだと思う。そのたびに目一杯の力を発揮して一生をまっとうするのが素敵な女性であると思うのだが、どうなのだろう。笑顔が素敵なモカちゃんと話をしていると「もう少し僕もニコニコと笑ったほうが良いかなぁ」と、仏頂面を鏡で見て思うのだった。

ライター プロフィール
森下 光紹(モリヤン)
旅好き野宿好きで日本全国を走り回り、もう足を踏み入れていないエリアがほとんど残っていないと笑う。とにかくバイクで行かないと気が済まないから、モンゴルとカザフスタンの国境まで気の合う友人と行ってしまったこともある。乗って行くバイクはいつの時代もポンコツで、メンテも得意な自称ポンコツ大魔神。本業はカメラマンで、人生行く先々のどんなシーンでも写真に収めるのがライフワークのひとつ。その人生訓は「我が生命は水が如き」という。

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