掲載日:2024年11月28日 フォトTOPICS
取材協力/フロッグピット 取材・写真・文/森下 光紹
Vol.2 篠崎 ゆかり(しのざき ゆかり)
今年は真夏がとても長くて、秋を楽しむ時間もなく冬をむかえてしまったようだけど、全国のライダー諸君はどうお過ごしでしょうか。バイクという乗り物は、真夏は暑くてたまらないし、真冬は寒くてたまらない。あぁそれなのに、やっぱりバイクに乗りたくてしかたがない。どこかに行きたくてうずうずしている。だからメインキーを握りしめて玄関を出たがやっぱり引き返し、まだ持ち出すつもりがなかったネックウォーマーを手にとって、もう一度外に飛び出す。バイクのエンジンをかけてしまえば、もう後戻りする気も消えているから、さあ出発だ。というわけで、「ザンパラ」第二回目の登場は、なんともキュートで素敵な女性ライダーなのでーす。
とても小柄で華奢な人。最初に会った時の印象は、バイク乗りだとは思わなかったというのが正直なところだった。僕が良く顔を出すカフェ(店主いわく、カフェじゃなくて、メシどころ)に、たしかクルマに乗って彼女は現れ、普通に挨拶を交わしただけなのだが、そのなんとも柔らかい雰囲気と共に、女性らしいムードを全身で自然に表現している人だった。乗ってきたクルマは真っ赤なアルファロメオのジュリエッタ ヴェローチェで、粋なスポーツセダン。つい思わず「こりゃぁかっこいいなぁ」と口ずさんでしまうくらい、彼女に似合っていた。
「こんにちは。こないだも会ったよねー」と数日後に声をかけられたのだが、その時初めてバイク乗りなのだと気付いた。実は少し驚いた。愛車はスズキのスポーツモデルGSX250Rだ。ボディーはまだ全身ピカピカで、手入れが行き届いているのが分かる。エンジンの調子も良さそうだった。きっとまだ乗り始めなのかな。でもすごく楽しそうだから。彼女のバイクライフを聞きたくて、このザンパラ二回目の取材対象になったのです。
結論から言ってしまうと、僕の印象は大きく間違っておりました。いや、印象は間違ってはいないな。想像したことが間違っていたのだ。なんとこのバイク、新車購入してから5年ほどで、12万キロ以上を走破していたのです。「これは、ゆかりさんが一人で走った距離なの?」と尋ねると、満面笑顔で「はい!」と返された。まじか! これはさすがに意外だった。というわけで、彼女のバイクライフにますます興味が湧いてきた。
「わたし、実はかなりインドアな人間だったんです。音楽好きでロックバンドのベースを担当してたし、あまり外に出る楽しさを知らなかったという感じでしたね」
ご主人もそのバンド仲間だったと笑うゆかりさんだが、二人の子どもを育て上げ、現在は夫婦ふたりだけの生活になっているのだが、10年ほど前にバイクの免許を取る。その理由は、「子育ても一段落したし、今までやったことのない趣味へのチャレンジをしてみよう」ということだったらしい。
「実はその以前から旅行好きになっていて、インドア趣味から少し脱皮しかけていたんです。そこにバイクという道具が加わったから、思い切り弾けてしまったのかしらね」
普通二輪免許を取得して購入した最初のバイクはやはりスズキのGSR250で、カウルのないネイキッドモデルだった。背伸びして大型バイクを選ぶつもりはまったくなく、等身大のバイクで楽しもうという意識は現在も変化なし。GSRは購入から2年で4万7千キロ走った後、現在の愛車に乗り換えたという。
「バイクに乗り始めたと同時にブログも書くようになったら、仲間もどんどん増えていきました。すごい勢いで全然違う世界が広がり初めて、走れば走るほど発見があるんですよ。バイクって、こんなに楽しいのか!って、驚きの毎日です」
仲間とのツーリングも楽しいが、基本はソロツーリング。自分の生活そのものに深く食い込むバイクライフを持つ人は必ずそうなる。いつも一人で走っているからこそ、たまに仲間とワイワイ走る楽しさも倍増するものなのだ。そんなゆかりさんに一番印象に残っている場所はと尋ねると、「うーん」と困り顔になってしまった。彼女いわく「全部楽しい!」なのである。北海道も行ってみたし、父親のお墓がある長崎にも一人で行った。SSTRにもエントリーして走った。すごく長距離を走るのも楽しいけれど、近所を少しだけ廻るなんていうショートツーリングも楽しい。とにかく何よりバイクが楽しい。つまりそれってまさしく「モーターサイクル・ザン・パラダイス」じゃん。
ゆかりさんは、経験値というアプリを使って、行き先をすべてマーキングしている。とにかく日本全国をすべてバイクで行ってみたいと考えているらしい。
「ネジを回す方向も知らなったほどのメカオンチだったから、バイク仲間に色々と教えてもらいました。まずはとにかくバイクを磨けということもね。掃除はメンテの始まりだからって。そんなわけで私の愛車は、どれだけ走っても常にピカピカなんです」
車体には様々なステッカーや、旅の相棒みたいなマスコット人形が装備されている。そんな感じも女性らしいが、なぜ彼女には飄々としたパワーがあるのだろう。それは少し恋愛に似た感情なのかもしれないと僕は思うのだ。真っ直ぐに恋をしている女性ほど強いものはないからね。きっと愛車の走行距離はこの先もグングンと伸びていくことだろう。何しろ彼女は「バイクが大好き♥」なのだから。
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