掲載日:2020年09月28日 フォトTOPICS
写真・文/小松 男 ※この記事はガレージライフ70号(ネコ・パブリッシング発行)にて掲載したものを再編集しています。
千葉県/K邸
今回取材で伺った千葉にあるK邸に着いた時、その場所が海へ一直線に続く道にあることや、一棟一棟ゆとりを持った家が建ち並びだったことがアメリカの西海岸にある街のようで、ここが日本であることを忘れさせてくれるような錯覚に陥った。この場所で寝起きをし、朝夕海を眺め、さらにガレージライフを楽しめる生活はどれほど贅沢なものなのだろう。
Kさんがガレージを考え始めたのは所有する1934年式のフォード・モデルCのチューダー(2ドア)セダンを購入してからだと言う。
34年式フォード・モデルCはチューダーセダンと呼ばれる形だ。整備が行き届いており、普通に乗ることができるそうだ。ガレージ内を覗ける窓も設置されている。
「クルマを購入した当初はカーポートに収めていたのですが、私の持つバイクやクルマはどれも年代物で、やはり屋根だけのカーポートでは、コンディションを保つのが難しいことや、セキュリティ面でも心配がありました。」とKさん。
そのような経緯があって、まずは中古の家探しを始めたそうだ。奥様の長年の夢である”海が見える場所”ということを前提に、中古住宅を見て回ったそうだが、なかなか思うような物件に巡り合わなかったと言う。そんなころ、Kさんは弊誌『GarageLifeアメリカン』を手に取った。その号の表紙を飾っていたのは、上質なフライトジャケットブランドとしても広く知られるトイズマッコイの代表岡本氏の邸宅だった。Kさんは、岡本氏とは10年来の知り合いであり、現在所有する2台のハーレーの内、1938年式のELモデルは岡本氏から譲ってもらったものだ。
トイズマッコイの代表を務める岡本氏から譲ってもらったという38年式ハーレーダビッドソン・EL。休日にこのガレージからツーリングに出かけるのが最近の楽しみだ。
「岡本さんのガレージを見た時には痺れましたね。ガレージドアが3枚使われているのですが、それが恰好良くて、どうしてもガレージドアの雰囲気を近づけたかったのです。同じ本で今回のガレージハウスの設計建築をお願いした『ガレージビルダーズ』さんの存在を知り、コンタクトを取ったのです」。
多少時は前後するが、家を探してもらっていた不動産屋に最後に案内されたのが、今ガレージハウスが建っている場所だった。中古物件ではなく土地だけの販売だったものの、海へと続く道、そしてその向こうには富士山が見えた。そこで見た景色に身震いするほどの感動を覚え、ほぼ即決だったと話す。
当初ガレージビルダーズにはガレージドアだけをお願いする予定だったそうだが、夫婦揃って奈良にある展示場に足を運んだ際、ガレージビルダーズの手掛ける家の造り込みとセンスにすっかり惚れてしまい、すべてをお願いすることにした。実はKさん、元々大工職人であり、現在は建設業を営んでいる。奈良にあるガレージビルダーズが、遠方の千葉の物件を手掛けると言うことは、なかなか難しいことだと容易に想像できるが、Kさんが自分で基礎作りを手掛けたり、地元建設業のつながりを上手に活用し、ガレージビルダーも現場にエアストリームを持ち込んで、職人を住みこませることで着工へと至った。
ROUTE66が描かれたオーバーヘッドドアはKさんがイメージしたガレージでマストだった。ポーチからぐるりと家の周囲に軒を作る素敵なアメリカンハウスだ。
ガレージ内にはガレージを建てるきっかけとなったフォードと2台のビンテージハーレーが並び、その周囲には、ビンテージアメリカングッツやファニチャーがセンス良く取り囲んでいる。ガレージ上部にはロフトも設けられており、そこにはKさんのギターや本のコレクションが並び、オフタイムをくつろげる空間となっている。居住スペースも1階は広々としたLDK、2階は寝室などが設けられ、総じて木のぬくもりを感じさせるアメリカンな造りとなっている。
「ガレージビルダーズさんには、細部までとても丁寧に作ってもらい、とても感謝しています。家は3回建ててやっと満足できるとよく言いますが、初めての家にして思い通りの家ができてしまいました。」とKさん。施主とビルダー両者の強い想いが素敵なガレージハウスを実現させたのである。
家の目の前には、一直線に海へつながる道。海までは50mほど、海抜は8m程度となっている。朝夕大海原を眺める生活はとても贅沢なものだと思う。
ガレージ上部のロフト。アパレルのコレクションや書物、そしてギターなど、まさしく趣味の空間として活用できている。棚などはKさん自身で設置したものだ。
住居スペース内のリビング横に設けられた和室兼ゲストルームからは、ガレージを覗ける窓が設置された。いつでもガレージの存在を身近に感じることができる。
広々としたLDK。現在このガレージハウスには、奥様と2頭の愛犬が住んでおり、Kさんは仕事の休日に訪れているとのこと。将来仕事を引退後永住する計画だ。
家事のしやすさや動線を考えられて作られたキッチン。IKEAのファニチャーを上手くビルトインしているほか、棚の中に照明を仕込むなどディテールも凝っている。
2階にはベッドルームの他、セカンドリビングが設けられている。当初はフラットハウスも考えたそうだが、2階建てにして正解だったそうだ。
ガレージのフロアにはエポキシシールドを施工している。ガレージ用に作られたフロア材であり、高い耐久耐候性を誇るものとなっている。
ガレージの雰囲気に似合う照明用の傘を探してきてKさん自らが加工して設置した。総じて置いている、使っているものがセンス良くまとめられている。
とても大きなサイズのアメリカンフラッグ。このフラッグを照らすための照明も設置されている。ガレージ内にはこういったレアなビンテージアイテムがたくさん置かれている。
天窓も設けられており、日中でもガレージ内が明るい。
Kさんは手先が器用であり何でも自分の手で作り上げる。棚の設置など朝飯前だ。さらに使い勝手も良く考えられたストレージがいたるところに設けられている。
スナップオンのビンテージツールキャビネット。ビンテージカーやバイクは、自分の手で触る知識を持ち得ていた方が、より一層楽しむことができるものだ。
貴重なビンテージワークウエアが並ぶ。Kさんのアメリカンガレージに良く似合う。
年代物のペプシコーラの業務用冷蔵庫。実際に使えるそうだ。
■PLANNING DATA
所在地●千葉県
ガレージ面積●34m²
延床面積●35㎡
外壁仕上げ●ラップサイディング
内装仕上げ●ドライウォール工法ペンキ仕上げ
竣工●2016年4月
愛車●1934年式フォード・モデルC、1938年式ハーレーダビッドソン・EL、1950年式ハーレーダビッドソン・FL
Garage Builders
奈良県生駒郡平群町上庄3-6-11
Phone/0745-46-1668
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