掲載日:2020年06月11日 フォトTOPICS
写真・文/小松 男 ※この記事はGarageLife80号(ネコ・パブリッシング発行)にて掲載したものを再編集しています。
神奈川県 矢野邸
アメリカのレジェンド的ホットロッダー、ディーン・ムーンによって創設されたカスタムパーツ&グッズブランド「ムーンアイズ」。アメリカンカーカルチャーを発信し続ける老舗であり、多くのカーガイ&バイカーを魅了する。今回伺ったガレージの施主、矢野さんも元々はムーンアイズの世界観に惹きこまれた一人のファンだったと言う。
家の前はセットバックされカースペースとされている。1階はガレージの他にゲストルームやバスルームなどが設けられ、リビングやダイニングキッチンは2階とされている。
「私は九州出身なのですが、学生時代にヴィンテージ・ハーレーを4台乗り継いでおり、ムーンアイズ主催のホットロッドカスタムショーに出展することもありました。そういった場でムーンアイズのスタッフと知り合い、新卒でムーンアイズへ入社し横浜へと来たのです」と話す矢野さん。
卒業とともにムーンアイズのある横浜へと移り住んだ矢野さんは、アパートでの生活を始める。もちろんハーレーも持ってきていたが、大胆にカスタマイズされた特別な車両だけに、メンテナンスを出来る場所、そしてセキュリティ面などからいつもガレージへの憧れはあったと言う。そんな矢野さんがガレージハウスを建てようかと思い始めたきっかけは、勤続三年を過ぎれば住宅ローンを組むことができると知ったことだった。
時間ができればガレージで過ごすこともあるという矢野さん。収められている愛機は自分のために特別に仕立て上げたものであり、それを守るためにもガレージは必須だった。
「右も左もわからない状態のまま銀行へ行き、融資の相談をしてみたのです。ところが、“どのような家を建てるため”に“幾ら必要”なのかが分からないと話にならないと言われてしまい、その銀行と取引のあった工務店を紹介してもらいました。何もイメージできていなかったものですから、戸建て建売り物件、中古物件、借地権物件など家を購入する際のターゲットをすべて見せてもらいました。その中で今家を建てた土地を紹介してもらったのです」。
矢野邸が建てられた場所は、勤め先であるムーンアイズまでクルマで10分程度の場所に位置する高台だ。その眺望は素晴らしく、みなとみらいエリアから八景島の方まで一望することができる。
ガレージの中を覗くと、ナンバープレートが取り付けられたストリート仕様の1961年式パンヘッドと、もはやベース車両が分からないほどにカスタマイズされた1968年式ショベルスポーツスターの2台が収まっていた。実はこのショベルスポーツは、今年のボンネビル・スピードウェイに挑戦するレーサーとして仕立てられたものであり、ガレージ取材直後にアメリカへと輸送されるものだ。
左/最高速を競うイベント「ボンネビル・スピードウィーク」のAPG1000クラスにチャレンジする矢野さん。FIAにも認定された競技であり、記録は公式のものとして残される。右/つい先日組み上がったばかりであり、日本でのピンストライプ第一人者であるワイルドマン石井氏にペイントを施してもらったアイアンレーサーは、とにかく美しい。
「このアイアンはアメリカから渡ってきた車両を学生時代に購入したのですが、登録することなく付き合いのあるショップに置かせてもらっていました。いつかは遊びバイクとしてレストアしようと考えていたところにドラッグレースに興味を持ち、どうせチャレンジするならソルトレイク(ボンネビル)を目指そうと思いレーサーに仕立て上げたのです」と矢野さん。
2台のハーレーが悠々と収まるガレージは、実は当初奥様が使うクルマも合わせて入れる予定だったそうだが、棚などを設置すると無理なことが分かり現在クルマは家の前のカースペースに置かれている。「クルマが外に出されることははじめから予測していましたよ」と奥様は笑いながら話す。
自分でできる範囲のメンテナンスは行っていると矢野さんが話すように、ガレージ内には作業台やハンドツールが置かれているほか、以前使用していた燃料タンクやホイール、フロントフォークなどのパーツ類も並べられている。もちろんムーンアイズのアイテムもあちこちに見られ、その愛情を感じることができる。ガレージ内へは横のエントランスホールと奥側のウォークインクローゼットにドアが設けられており、一周ぐるりと回ることができるようになっていることや、できるだけ間口を広げたことがポイントだと言う。
日々の仕事の傍ら、このガレージでボンネビル・スピードウィークに向けて色々な準備を進めている。ハーレーのためのガレージハウスを実現した今、次の目標はレコードブレイカーなのだ。
クルマと2台のヴィンテージ・ハーレーを収めることを前提に設計を行ったガレージだが、ハーレーだけ格納することを割り切ったことで余裕を持った空間になった。
非売品のムーンアイズチームシャツが飾られているのはスタッフならではの特権と言えるもの。ボンネビル・レースウェイへは昨年視察に行っている。
様々なカスタムペイントが施された鮮やかなヘルメットは、ただ棚に置いておくだけでもガレージの飾りとして際立った存在感を放っている。
ガレージ奥に置かれたスチール棚には、バイクに乗る際のブーツやスニーカーなどが置かれている。ムーンアイズで取り扱っているストレージボックスも便利そうだ。
左/ガレージ横のドアはエントランスホールと繋げられている。このアクセスはハーレーで外出する際に便利そうだ。ガレージ奥にはクローゼットと繋がるドアも設けられている。右/元々家の外に設置される予定だった水道を、ガレージ内へと引き込んでもらっている。バイクの洗車や、メンテナンス時の手洗いなど、水場はガレージライフで欠かせない。
2階のLDKスペース。高台ということ周囲に建物がないことなどから日当たりは良好。この土地を見つけた時には奥様も賛成したことから、ガレージハウスの話は一気に進んだ。
屋上にはバルコニーが設けられている。横浜みなとみらいエリアから八景島まで見渡すことができ、最高の眺望を楽しみながら、BBQなどをすることもできる。
先日届いたと言うボンネビル・スピードウェイ2019のレギュレーションブック。過去のレギュレーションブックを入手しバイクは仕立てたそうだが、最終的には現場調整となる。
なんとなくガレージに設置したかったというシーリングファン。ガレージ内は夏暑く冬は寒くなりがちなので、このファンひとつだけでも空調効果は高いことだろう。
「棚などを置いたら、クルマとバイク2台は入らなかったのです」と矢野さんは言う。やはり無理して全部を収めるよりも、ゆとりがあった方がガレージライフは楽しめる。
家の角となる部分の袖壁は構造上仕方ないとしても、なるべく開口部を広く設計したという間口。オーバードアも考えたが、照明の問題などを考慮しシャッタータイプを選択。
ガレージには以前ハーレーで使用していたホイールやフロントフォーク以外にも知り合いから譲り受けたパーツなども置かれている。矢野さんの宝箱となっているのだ。
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