【2014 マン島TTレース】 TT Zeroに挑んだ『チーム無限・神電參』プラクティスの模様

掲載日:2014年06月17日 フォトTOPICS    

取材・文/小林 ゆき  写真/小林ゆき、チーム無限  取材協力/マン島TTレース公式サイトチーム無限・神電參公式サイト

マン島TTのパドック。チーム無限はトップエントラントが集まるAパドックの場所が割り当てられた。電動バイクによるレース、TT Zeroの人気が伺える主催者の配慮である。

悲願の優勝を果たした『チーム無限・神電參』
決勝前のTT Zeroプラクティスをレポート

1周60kmの公道コースを走るマン島TTレースに、事実上、電動バイクレースの最高峰として2009年から始まったTT Zero。日本の4輪レースエンジンチューニング、マシン開発やGTカー、スーパーフォーミュラ参戦で知られるチーム無限は、自社開発のフルカーボンフレームの電動バイク『神電(Shinden)』で2012年より参戦を開始しました。

初年度、2年目ともに準優勝し、3度目の参戦となる2014年は、これまで起用してきたジョン・マクギネス選手(イギリス)に加えて、経験豊富なブルース・アンスティ選手(ニュージーランド)も起用し、2台の必勝体制で臨みました。決勝レース前に走行できるチャンスは“プラクティス”1回、“クォリファイ(計時予選)”2回の合計3日で3回(3周)です。充電時間などの都合で1回のみ走るチームもいる中、チーム無限は2台ともに3回走らせました。

1回目のプラクティスでは、アンスティ選手(#5)のマシンにトラブルが発生。スタート直後のクォーターブリッジでリタイアとなってしまいましたが、その後、夜を徹して修理にあたり、クォリファイに臨みました。

マクギネス選手は1回目のプラクティスで、残念ながら今年参加しなかった前回までの覇者モトシズ(アメリカ)のラップレコードを更新、平均時速111.90マイルを記録。また、2回目の走行(クォリファイ1回目)では、アンスティ選手がさらに112.355マイルにまで記録を伸ばしました。3回目の走行(クォリファイ2回目)では、またまたマクギネス選手が記録を更新。なんと115.60マイルを叩き出しました。

フォトTOPICS(写真点数/18枚)

01走行前には毎回車検を受ける。TT Zeroはレギュレーションでテールランプを付けることになっているほか、電源の緊急停止ボタンを付けることになっている。車検では、正常に動作するかを確認する。

023月にモトクロスのトレーニングで右手を骨折したジョン・マクギネス選手。手首にボルトが数本入っている状態でのTT参戦となった。手首のテーピングのカラーリングはマシンと靴下とおそろいにしたのだという。

035月30日(金)の1回目のプラクティスは、ゼッケン5番のブルース・アンスティ選手からスタート。スタート直後、マシンにトラブルが発生して、クォーターブリッジでリタイアした。

04ゼッケン1番のマクギネス選手もプラクティスを開始。TT Zeroはレース同様、プラクティスもTTマウンテンコース1周60kmを走る。

055月30日(金)TT Zeroプラクティスのリザルト。TT Zeroの場合、「ガス欠」ならぬ「電欠」(バッテリーあがり)やモーターの焼きつきなどが起こりがちで、他のクラスよりもリタイア率が高い。

065月31(土)TT Zeroクォリファイ(計時予選)1回目もアンスティ選手からスタート。TT Zeroの場合、2回あるクォリファイのうちどちらかを1周45分以内で完走しなければならないレギュレーションになっている。

07クォリファイ2回目のマクギネス選手。マクギネス選手とアンスティ選手の見分け方は、ゼッケン1番、ショウエイのヘルメット、マシンに描かれている握り拳の色が赤、以上がマクギネス選手。ゼッケン5番、アライのヘルメット、握り拳が青、がアンスティ選手。

08クォリファイ2回目のチェッカーフラッグを受けるアンスティ選手。プラクティスで破損した部分は夜を徹して修復され、この日はアンスティ選手がTT Zeroのラップレコードを更新した。

09ピットロードを戻ってきて、さっそくエンジニアたちにインプレを伝えるマクギネス選手とアンスティ選手。電動バイクはバッテリーマネジメントが肝となるため、どのようなセッティングにしていくかの作戦が重要なポイントとなってくる。

10マウンテンエリアを快走するマクギネス選手。超ハイスピードでコーナリングすることになるマン島TTマウンテンコースは、フレームや足回りの剛性やセッティングも重要なファクターとなる。チーム無限神電參は、自社開発・製作のフルカーボンフレーム&スイングアームでTTに挑んだ。

115月31日(土)クォリファイ1回目のリザルト。ここで完走したチームは全チーム予選通過となった。クォリファイは2回あるが、充電の都合やバッテリー温存、あるいは何らかのトラブルのため2回走らないチームもあった。

126月2日(月)、クォリファイ2回目の走行を待つ神電參。電動バイクはバッテリーの充電だけでなく、バッテリーの温度管理も重要なメンテナンス事項になっている。ガソリンエンジンバイクのタンク部分がバッテリーで、ここに空気を送って温度管理を行っているシーン。

13プラクティス直前にマシンを待機させる“パルクフェルメ”へとマシンを移動。チーム無限はUKホンダとパジェットホンダのピットに間借りした。TT Zeroのプラクティスはレース後に行われるため、走行後のライダーをここで待つ。

14クォリファイ2回目の走行をスタートしたマクギネス選手。土曜日のアンスティ選手のラップタイムを更新したいと話していた。

15TTマウンテンコース全37マイルのなかで、スタートから14マイルあたりにあるカークマイケルの集落を駆け抜けるアンスティ選手。コンビニエンスストアの前を時速200kmオーバーで走る電動モーターの甲高い音が響き渡る。

16走行直後、マシンからダウンロードしたデータを確認する電装エンジニアたち。どこでどの程度の速度が出ているか、バッテリーの状態はどうなっているのか、データで把握し、決勝レースに備える。

176月2日(月)2回目のクォリファイでマクギネス選手が再びレコードを更新。昨年のラップレコード109マイル(マイケル・ラッター選手/モトシズ)、今年のプラクティスで111マイル(マクギネス選手)、クォリファイ1回目で112マイル(アンスティ選手)、そしてこの日、115マイルまで記録を伸ばした。完走と記録更新でひとまず握手で互いを讃えるエンジニアたち。

18電動バイクはもはや発展途上ではない。カウルに付いた無数の虫の死骸がそのスピードを物語る。

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