【カワサキ ニンジャ 1100SX SE 試乗記】カワサキらしい愛情あふれる快作

掲載日:2025年12月26日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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KAWASAKI Ninja 1100SX SE

Ninja1100SX SEは、数多く存在するNinjaシリーズの中でも、スポーツ性能と快適性を高次元で融合させたスーパーツアラーモデルである。2025モデルからは排気量が引き上げられたほか、細部に手が加えられている。

欧州ではスーパーツアラー人気が再燃!
その切り札として登場した一台!!

Ninja1100SXを語るには、まずカワサキというメーカーの幅広さを押さえておきたい。ネイキッドのZ900RSから、普通二輪で扱えるエリミネーター、オフ寄りのKLX230/シェルパまで、多様なカテゴリーで継続的に新モデルを送り出し、それぞれに厚い支持を得ているのが同社の強みだ。そうした屋台骨を支えるNinjaシリーズは、レンジの広さと丁寧な作りで知られている。

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今回取り上げるNinja 1100SX(以下ニンジャ1100SX)は、スーパースポーツに匹敵する走行性能を備えつつ、長距離での快適性と安全性を徹底して追求した“スーパーツアラー”だ。現行プラットフォームは2020年に登場した世代をベースにしており、2025年モデルでは総排気量を約1,043cm3から1,099cm3へ拡大するなど、低中回転域の実用トルクや扱いやすさを重視した改良が加えられている。これらの改良は、欧州をはじめ世界的にスーパーツアラー需要が高まる潮流と合致しており、実走を通して「誰に」「どの用途で」最もマッチするかを丁寧に検証していきたい。

カワサキ ニンジャ 1100SX SE 特徴

求めるのは運動性能か、
それとも快適な装備か!?

”時代は巡る”とはよく言ったもので、この四半世紀のバイクマーケットを振り返ると、ビッグスクーターやスーパーモタードのブームに始まり、ビッグバイクのツアラー系、アドベンチャーセグメント、ネオクラシックといった潮流が次々に現れては定着してきた。「流行」と書くと一過性の響きがあるが、実際には一時的ににわかに盛り上がり、その先にしっかりとした定着を伴って現在に至っている。長年バイクメディアの最前線に身を置く筆者には、その「肌感覚」が明確に伝わってくる。

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そして今、次に大きな盛り上がりを見せるセグメントとして間違いなく注目したいのが スーパーツアラー だ。ここでいうスーパーツアラーとは、広い意味でのスポーツツアラーを包含しつつ、スポーツ性と快適性を極めて高い次元で両立させたカテゴリーを指している。なぜなら欧州をはじめとした大型バイク文化圏では、長期休暇を利用して複数日をかけてタンデムで各国を周遊するような使われ方が古くからあり、そうした旅のスタイルの中でスポーツツアラーがたびたび注目を集めてきたからだ。現在、あらためてその需要の高まりが感じられる。

スポーツ走行的なハイパフォーマンスを楽しみつつも、スプリント的な使い方ではなく、ロングタームで快適にそのポテンシャルを引き出したい。それはソロでもタンデムでも。そんな要求を満たす方向性こそ、このジャンルの本質であり、メーカーが応えるべき使命でもある。

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ニンジャ1100SXも一般的にはスポーツツアラーに分類されるが、性格としては スーパーツアラーと呼ぶにふさわしいパフォーマンス を備えている一台だ。その系譜を遡ると、2011年登場のニンジャ1000が初代の位置付けとなり、2020年にニンジャ1000SXへと発展。2025年にはフルモデルチェンジを受け、排気量の拡大や細部の改良を伴う ニンジャ1100SX がリリースされた。

従来モデルもすでに高い性能とツーリング快適性を持っていたが、最新のニンジャ1100SXではどのような改良が施されたのか、今回はそれを探るとする。

カワサキ ニンジャ 1100SX SE 試乗インプレッション

ストリートではイージーライド
旅の質を引き上げるハイスペック

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極上のスーパーツアラーを作る際、よく「スーパースポーツ的な高性能シャシーやエンジンに快適装備を組み合わせれば良い」と思われがちだが、それは誤解である。スーパースポーツモデルは、速さを追求するために徹底した軽量化が施され、ライディングポジションもタイトで、剃刀のような鋭い運動性能が求められる。

一方、ツアラーは快適装備が充実し、長時間走行でも疲れにくいライディングポジションが与えられる。装備が増えれば当然重量も嵩む。これら相反する要素を高次元で両立させ、ライダーにエキサイティングな走りとロングツーリングでの快適性を提供することは、決して容易ではない。先代のニンジャ1000SXは、そのバランスが非常によく取れていたため「これ以上の改良は難しいのでは」と思っていた。しかし、実際に触れてみると、ニンジャ1100SXはその完成度を大きく上回る進化を遂げていた。

実車を目の前にすると、従来同様にしっかりとしたボリューム感がある。今回のテスト車両は上級グレードにあたり、専用色や足回りが強化されたSEだっただけでなく、パニアケースが装着された仕様だったこともあり、なおさらだ。しかし、取りまわしてみると意外なほど軽い。排気量は拡大されたものの、車重は従来モデルと同等で、前後の重量バランスもよいため、押し引きの軽さが印象的だ。

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車体にまたがると、スーパースポーツモデルと大きく変わらないカウルサイズでありながら、可倒式の大型スクリーンや、やや高めにセットされたセパレートハンドルのおかげで、包まれ感のあるライディングポジションが得られる。エンジンを始動すると、カワサキ水冷4気筒らしい心地よいサウンドが響き、走り出す前から気持ちが高まる。

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そして走り出してすぐに感じるのは、低回転域のトルクの太さだ。排気量はストローク延長によって従来の1,043 cm3から1,099 cm3へ拡大されている。最高出力こそ従来より抑えられているが、その分、低中回転のトルクを厚く仕上げてあるため、街中での扱いやすさは圧倒的に向上している。

クイックシフターも制御タイミングが最適化され、ギクシャクすることなくスムーズに作動する。リッターオーバーのスーパーツアラーでありながら、街中ではミドルクラスのロードスポーツのような軽快さで走れてしまう。これがとにかく楽しい。

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高速道路に乗ると、その快適性のまま驚くほどのハイスピード巡行が可能だ。もちろん日本では各道路に制限速度が設けられているため、その範囲内での走行となるが、一般的なクルマの流れを軽々とリードし、むしろ一瞬で後方に置き去りにしてしまう余力がある。しかもそれが、鼻歌交じりで何の不安感もなく達成できてしまうのだから、むしろ「この余裕こそが恐ろしい」とさえ感じてしまう。だからこそライドセーフの徹底、そして自身の免許を守る意識は強く持ちたいところだ。

それでいて、法定速度域での巡航も非常に気持ちいい。少し肩の力を抜いて流したい時にはクルーズコントロールが活躍する。必要なボタンを“パッ”と触れるだけで即セット。余計な操作やクセがなく、スッと速度維持に移行してくれるあたり、ニンジャ1100SXが“アダルトな乗り物”であると実感できる瞬間だ。

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ワインディングへ持ち込むと、このモデルの真価がさらに露わになる。まず電子スロットルの仕上がりが非常に上質で、ライダーの意思と直結するように、開け始めから欲しい分だけトルクが自然に立ち上がる。その出力特性を受け止めるのがブレンボ製キャリパーと高剛性のシャシーだが、過剰な演出もなく、無理のない範囲でしっかりと減速し、コーナーに気持ちよく飛び込んでいける安心感がある。

足まわりも秀逸だ。今回はプリロードを3ノッチ抜いてテストしたが、オーリンズ製リアショックによるトラクションの伝わり方が非常にわかりやすく、スロットル操作に対してリアタイヤが路面をつかむ感覚がダイレクトに得られる。結果としてコーナーをひとつひとつパスしていく行為そのものが楽しくて仕方がない。

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さらに、手動式の可倒スクリーン、スマートフォンアプリ連携が可能な4.3インチフルTFTメーター、ETC2.0、ドライブレコーダー、USB電源など、ロングツーリングを快適にするための装備も過不足なく揃っている。まさに“抜かりのない仕上がり”だ。

最終的にニンジャ1100SXに触れて強く感じたのは、カワサキ車に共通する“やさしさ”である。一般的には硬派でストイックなイメージが先行するメーカーだが、実際にバイクと接すると、ライダーを思いやるような包容力や、過剰に尖らせない絶妙なバランス感覚があり、それがこの最新モデルにも確かに息づいていると感じた。

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スーパーツアラーと言うと「ロングツーリング専用」との印象を持たれがちだが、ニンジャ1100SXはそのイメージを良い意味で裏切る。“ちょっとコンビニまで”の街乗りから、“大陸横断クラス”の長旅まで、すべてを一台で担える懐の深さがある。つまり、あれもこれも望む欲張りなライダーにこそ向いている。

何を隠そう、私自身がまさにそのタイプなのだ。

カワサキ ニンジャ 1100SX SE 詳細写真

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排気量が従来の約1,043cm3から1,099cm3に拡大された直列4気筒エンジンを搭載。ストロークを延長し低〜中回転域のトルクを強化、134hp/9,000rpmのパワーと113Nm/7,600rpmの扱いやすいトルク特性で、日常域から高速巡航まで快適かつ力強い走りを実現する。

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φ41mmの倒立フロントフォークはフルアジャスタブルタイプ。SEグレードはブレンボ製のキャリパーを装備し、確かな制動力を発揮。17インチタイヤとの組み合わせで路面追従性と安定感が高く、ワインディングから高速巡航まで安心して走れる仕様だ。

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SEはオーリンズ製フルアジャスタブルショックを採用し、路面追従性と安定感が大幅に向上。荷物やタンデムの有無に合わせた細かなセットアップが可能で、快適性とスポーツ性能を高いレベルで両立。ワインディングでも安定したトラクションを発揮する。

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アルミスイングアームは剛性バランスが良く、加速時やコーナリング中でも挙動が乱れにくい。軽量ホイールは旋回の切り返しを軽快にし、リアタイヤは接地感に優れたまま路面をしっかりつかむ。トラクションの立ち上がりが自然で、車体の動きが終始つかみやすい。

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鋭いLEDヘッドライトとシャープなカウル形状が、ニンジャシリーズらしい精悍なフロントマスクを形成。手動式可倒スクリーンは段階調整が可能で、走行風の受け流し方を好みに合わせて変えられる。なお、ロックを外しながら調整するため、片手では行えない。

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820mmのシート高ながら、実際に跨ると車体の絞り込みが効いており足つきは良好。ライダー/パッセンジャーを分けたセパレートタイプで、クッションも良く長時間走行でも体が安定しやすい。パッセンジャー側もゆとりがあり、タンデムライドも良く考えられている。

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シフトアップ/ダウン対応のクイックシフターは、従来モデル比で制御タイミングがリファインされ、変速時のショックがより少なく一連の動作が滑らかに。エンジン特性との親和性が高く、街中から高速域までストレスなく回転をつなげられ、操る楽しさが一段と向上している。

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4.3インチTFTフルカラー液晶は発色が良く、強い日差しの下でも情報がはっきり読み取れる。走行モードやトラクション、クルーズコントロール状態などをわかりやすく整理して表示し、スマートフォン連携にも対応。ツーリング時の情報量と視認性のバランスが非常に優れている。

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やや高めにセットされたハンドルは長時間のライディングでも負担が少なく、ツアラーらしい自然な状態を作り出す。左スイッチボックスには走行モード切替やクルーズコントロール操作系が集約され、直感的に扱えるレイアウトとなっている。

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テールまわりはスポーティにまとめながらも実用性が高い。グラブバーはそのままパニアケースのステーを兼ねる構造で、積載時もシルエットを崩さない。後方にもドライブレコーダーカメラが装備され、ツーリング中の安心感をしっかりと高めてくれる。

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パッセンジャーシートの下にはETC2.0車載器と、簡単な車載工具が収められている。サイズ感的にはユーティリティ的なスペースとしては使うことができない程度である。

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純正パニアケースはワンキーシステムで、使い勝手が良い。容量的には十分ではあるが、上下方向にもう少し大きい方が使い勝手は良いと感じた。とはいえかなり便利であった。

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