【ヤマハ YZF-R1M 試乗記】地球最速移動手段の筆頭で背徳感に酔いしれる

掲載日:2025年10月17日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA YZF-R1M

ヤマハが誇るフルカウルスポーツモデル、YZFシリーズにおいて、頂点に君臨するYZF-R1M。MotoGPやWSBKなど最高峰のレースで培われた技術をフィードバックしたマシンは、市販車の枠を超越したパフォーマンスを楽しめる。

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ヤマハが次に指す一手、V4前夜。
成熟しつくした最高の一台。

「今こそ反撃ののろしを上げる時が来た」そう感じているロードレースファンは、決して少なくないだろう。

戦後の復興から高度経済成長を経て、1960年代には日本初の本格的レーシングコースである鈴鹿サーキットが誕生。高橋国光氏をはじめ多くの日本人ライダーが世界へ挑み、国内メーカーは高性能レーサーを次々と送り出した。やがて21世紀初頭には、欧米勢を圧倒する黄金期を築いたのである。

しかし近年のロードレースを振り返ると、MotoGPをはじめ最高峰の舞台で上位を占めるのは欧州メーカーだ。だが“世界一のバイク大国”を自負する日本メーカーが、この状況を黙って見ているはずはない。シャシー、電子制御、足まわり、ウイングレット……改良を積み重ね、復活の兆しが確かに見え始めている。

中でもヤマハは、ついにエンジンを直列4気筒からV型4気筒へと刷新する動きに入り、注目を集めている。
かつてバレンティーノ・ロッシやホルヘ・ロレンソがMotoGPを席巻したヤマハの最高峰レーサーYZR-M1。その直系にあたるYZF-R1Mは、リアルレーサーレプリカであり、V4化目前にして最も熟成を極めた一台といえる。今回は、そのYZF-R1Mの“今”を徹底的に味わってみたい。

ヤマハ YZF-R1M 特徴

ニッポンを代表するスーパーバイク
その深く長い歴史の先に立つ最高峰

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ヤマハのスーパーバイクにおいて頂点に立つ、YZF-R1M。その系譜を語るとき、まず触れなければならないのがFZRシリーズだ。1980年代後半から1990年代にかけて、FZRは「Genesis(ジェネシス)」の名で知られる先進的なフレームやエンジンレイアウトを採用し、レーサーレプリカブームの中心的存在となった。その流れを受けて1998年に登場したのが、初代YZF-R1である。

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R1は従来の1000ccスーパーバイクとは一線を画す存在だった。リッタークラスながら750cc並みのコンパクトさと俊敏なハンドリングを実現し、当時のライバルを一気に過去のものとした。その革新性は現在に至るまで「スーパースポーツの代名詞」として語り継がれている。

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そのR1をベースに、ヤマハが持つ最新のレーシングテクノロジーを惜しみなく投入したフラッグシップが、ここで紹介するYZF-R1Mだ。見た目こそR1と共通する部分は多いが、その中身は別格である。カーボン製カウルによる軽量化、オーリンズ製の電子制御サスペンション、そしてサーキット走行を前提とした高精度の電子制御システムを搭載。単なる公道仕様の延長ではなく、MotoGPマシンYZR-M1の直系にあたる“リアルレーサーレプリカ”として位置づけられている。

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また、R1とR1Mの違いは「走りの精度」にある。R1がストリートとサーキットの両立を狙ったオールラウンダーだとすれば、R1Mはサーキットで限界まで攻め込むためのマシンだ。ライダーが入力した操作を電子制御が補正し、常に最適なトラクションと安定性を確保。これはまさにプロライダーが世界選手権で求める領域に近いものである。

スーパーバイク市場が成熟期を迎えた今でも、YZF-R1Mはヤマハの技術力を示す象徴的なモデルであり、YZFシリーズの最高峰に君臨している。進化を続けながらも、初代R1が掲げた「誰よりも速く、誰よりも軽快に」という哲学を受け継ぐ存在。それがYZF-R1Mなのだ。

ヤマハ YZF-R1M 試乗インプレッション

すべてにおいて”過ぎる”が強め!
ひじは擦れずとも気持ちよし!

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2025年モデルでアップデートを受けたYZF-R1M。従来どおりフェアリングにはカーボンを多用しているが、今回新たにフロントカウル左右に大型ウイングレットが備わったことで、ひと目で新型だと分かる。業界関係者の中には「ようやく羽根がはえてきた」と茶化す声もあったが、実際には空力特性が向上し、フロントまわりのまとまり感も強くなった。見た目の迫力も増しており、個人的には好ましい進化だ。

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エンジンを始動し走り出すと、まず驚かされるのは扱いやすさだ。低回転域──具体的には3000回転あたりから厚みのあるトルクを発揮し、街中でも拍子抜けするほどスムーズに走れる。かつてのレーサーレプリカにあった神経質さは微塵もなく、それでいて、いざスロットルを大きく開ければ途端に牙を剥く。イマドキのフラッグシップモデルならではの“二面性”を備えているのだ。

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ライディングポジションはスーパーバイクらしく強い前傾姿勢で攻撃的。しかし他のリッタースーパースポーツに比べて窮屈さが少なく、結果として車体のコントロールが非常にしやすい。一般道であればロー(1速)とセコ(2速)で十分で、油断すれば簡単に法定速度を超えてしまう。走行中はタンクのもも内側部分がしっかりと熱を帯びて伝わり、乗っている最中からマシンの“生々しさ”を肌で感じさせる。

メーターディスプレイは伏せ姿勢で最も見やすい角度にセットされており、逆に適当なポジションにいると情報がやや読みづらい。個人的にはアナログメーターで最高速の目盛りを確認したい気持ちもあるが、そこは最新機種らしい割り切りといえるだろう。そもそも、のんびり気分で扱うバイクではない。常に集中し、スポーツと真剣に向き合う。それがYZF-R1Mの本質だ。

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高速道路やワインディングにおけるパフォーマンスは圧倒的だ。7000回転を超えたあたりから一気に吹け上がり、けたたましい咆哮とともに、まるで路面に吸い込まれるかのような加速を味わえる。脳が頭蓋骨の内側で揺さぶられる感覚があり、正直に言って「やっちゃいけないことをしている」ような背徳感すら覚える。だがその背徳感こそが、R1Mを操るうえでの快楽でもある。

最新の電子制御システムや、今回リセッティングを受けたサスペンションがライダーを的確にサポートするため、これほどのパワーを信じられないほど自在に扱える。フロントの接地感は抜群で、旋回もまるで“面白いように曲がる”印象だ。サーキット直系のマシンでありながら、公道でも極上のスポーツライディングを心から楽しめるのは特筆すべき点だろう。

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もちろん、誰が乗っても楽しめる一方で、やはり特別なモデルであることは間違いない。それなり以上のライディングスキルを持つほど、このマシンの本質に近づける。ただし、肘を擦るようなライディングができなくても問題はない。走らせば十分に濃厚で、他に代えがたい時間を与えてくれるのだ。

試乗テスト期間中、約2時間走り続けたことがあった。降車後、自分の声が変わったように感じるほど身体に響いていた。それほど濃密で、エキサイティングな体験だった。本来はトラックを周回し、最高峰のレースで勝つために生まれたR1Mを、一般道の移動手段に使うのは贅沢すぎる。だがひとたび走らせれば、どんなスーパーカーにも劣らぬプレジャーが得られ、走行前についエナジードリンクを飲みたくなるほど心が昂ぶる。背徳感と高揚感に酔いしれる──それが、V4化目前にして熟成の極みに達したYZF-R1Mの姿なのだ。

ヤマハ YZF-R1M 詳細写真

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水冷4ストローク並列4気筒998cc、クロスプレーン型クランクを採用するR1Mの心臓部。最高出力200馬力超を発揮しながら、最新モデルでは燃焼効率や電子制御のリセッティングにより扱いやすさも進化。約200kgの車体と組み合わさることで、驚異的なパワーウエイトレシオを誇る。

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オーリンズ製電子制御サスペンションを搭載したフロントフォークは、最新モデルで減衰特性がリセッティングされ、より的確な接地感を獲得。ブレンボ製キャリパーと320mm径ディスクが強烈なストッピングパワーを発揮し、専用設計の軽量ホイールとハイグリップタイヤも採用される。

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新型R1Mでは左右に大型ウイングレットを装備し、空力性能とフロント接地感を飛躍的に向上。M字型ダクトは冷却効率を高めつつ空力を最適化し、カーボン素材の多用により軽量化と質感アップを両立。見た目の迫力と走りの精度を兼ね備えた、まさにR1Mらしいフロントマスクだ。

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シート高は860mmで、その数値から見ても足つき性はそれなりではあるが、前傾姿勢でもライダーとタンクが自然にフィットする形状となっているため最適と思える。パッセンジャーシートは形状が刷新され、よりコンパクトかつ安定感のあるデザインになっている。

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R1Mの燃料タンクはアルミ素地にクリア塗装を施し、高級感と軽量化を両立。容量は17Lで長距離走行にも対応し、ライダーのももに自然にフィットする形状に設計されている。前傾姿勢でもコックピットとの一体感が得られ、攻めのライディングを支えてくれる。

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メーターディスプレイの角度と表示内容が最適化され、上体を伏せた姿勢では特に視認性が良い。タコメーターや速度計の情報が一目で把握でき、シフトインジケーターやラップタイム表示などサーキット向け機能も強化。ただ個人的には速度計はアナログタイプが好み。

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ステップは後方、高い位置にセットされているが、想像していたよりも足まわりの窮屈さは無い印象。ヒールプレートは十分な面積を持たされ、くるぶし部分でのホールド感がしっかり得られる。クイックシフターによりクラッチ操作なしでシフトアップ/ダウンが可能。

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コクピットはセパレートハンドルの垂れ角を最適化し、前傾姿勢でも疲れにくく操作しやすい設計。トップブリッジの肉抜き加工により軽量化を図り、視覚的にも精悍さを演出。スイッチ類は操作性を重視して配置され、モード切替、電子制御の各種設定も直感的に扱える。

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新型YZF-R1Mでは、テールカウルの形状が変更された。ライセンスプレートステーが取り外しやすく設計されており、サーキット走行時の軽量化や整備性が向上している。また、デザインはMotoGPマシンの影響を受けた精悍なスタイルとなっており、フロントのウイングレットとともに空力特性の向上にも寄与する。

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2025年モデルのYZF-R1Mは、リアタイヤサイズが190/55ZR17から200/55ZR17に拡大され、より高いトラクションと安定性を実現。スイングアームはアルミ製の湾曲タイプを採用。また、マフラーはチタン製に変更され、軽量化と質量集中の最適化が図られている。

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オーリンズ製の電子制御(ERS)リアサスペンションを採用。6軸IMUからのデータを元に、加速・減速・コーナリング時の減衰力をリアルタイム調整。路面や走行状況に応じた最適なセッティングを自動で実現し、高い安定性と俊敏な操作性を両立している。

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