掲載日:2025年08月04日 試乗インプレ・レビュー
写真/伊勢 悟 取材・文/小松 男
スズキ・GSX250R vs スズキ・ジクサーSF250
皆さんお待ちかね、久しぶりの対決企画ですよ!! え、お呼び出ない? いやいやそんなこと言わずに、せっかくなので題材だけでも聞いてくださいよ。今回は世界のスズキが日本のライダー向けに送り出している人気ニーゴーロードスポーツモデル、GSX250RとジクサーSF250です!
この2台ですが、実際のところスズキの販売店などに足を運ぶと、見た目からして似ているのに、どうしてどちらもラインアップしているのだろうと、いつも不思議に感じていたのです。たしかにエンジン形式を見てみると、GSX250Rは並列2気筒でジクサーSF250は単気筒なので、走らせてみるとエンジンフィーリングの違いというものは誰でも伝わるとは思うのですが、使い勝手や、適正ステージというのは今一つわからないという方が多いはず。
そこで今回は、2台をとっかえひっかえ乗り換えて、細部まで違いを調べてみることにしました。これを読めば、GSX250RとジクサーSF250、どちらを選ぶべきかがはっきり見えてくるはずです!
今でこそワークス体制でWSBK(スーパーバイク世界選手権)などに参戦していないものの、GSX-Rといえば、間違いなくスズキの看板を背負った戦うロードスポーツモデルの代表。その血脈をしっかりと感じさせるフェイスマスクやカウル構成はGSX250Rの大きな魅力となっています!
対してジクサーSF250はフルカウルスポーツモデルでありながらも、GSX-R色はやや薄目。しかし、低く構えたフロントカウルは個性的であり、GSX250Rよりもスポーティに見えるという方もいます。つまりスタイル的にも人気を二分しているのです!
並列2気筒(GSX250R)と単気筒(ジクサーSF250)。エンジン形式が異なれば、それは感触が全然違うでしょ。と考えるのはあながち間違えではないのですが、それにしてもどっちがどうなのよ、と気になるところ。詳しく説明していきましょう。
1980年代に巻き起こったレーサーレプリカーブームは90年代に入ると終焉を迎え、トラッカータイプやSR、クルーザー人気に移り変わり、その後2000年代に入るとビッグスクーターブームや大型自動二輪免許が教習所で取得可能となったり、高速道路の二人乗りが解禁されるとビッグバイクの人気が高まり、ニーゴーフルカウルロードスポーツモデルセグメントはすっかり衰えてしまっていたのですが、2008年にカワサキからニンジャ250Rが登場すると、若者を中心にニーゴーフルカウルモデルの人気が再燃!! 他メーカーからもそれを追うように、次々とニーゴーフルカウルモデルが登場しました。
そのような中、スズキはフルカウルのニーゴーモデルではあるものの、他とは一味違う、というかどちらかというとスポーツツーリングモデル的なGSR250(カウル付きバージョンはGSR250SやF)というモデルを投入したのです。実はこのGSR250系は、エンジンに始まり、スチール製セミダブルクレードルフレーム、フロントおよびリアサスペンション、前後タイヤサイズなど、今回取り上げているGSX250Rと基本コンポーネントを共通としているのです(同設計ベースでもGSX250Rがやや仕様がアップグレードされています)。
もちろん、スタイリングやハンドル、シートなど、GSX250Rの方が俄然スポーティに仕立てられているのですが、2017年にGSX250Rが登場した時に試乗テストを行った際「あ、これGSR250です♡」とまず感じたことをよく覚えています。
ちなみに、GSR250は現在絶版となっていますが、個人的に”推し”のニーゴースポーツです!!そんなGSX250Rに搭載されている水冷4ストローク並列2気筒 SOHC2バルブエンジンは、全回転域でトルクが太く滑らかかつフラットな回転上昇なので扱いやすく、ワンランク上のクラスの乗り味となっています。排気量やギヤ比的に過剰な速度こそ出ませんが、振動も少なくロングツーリングも快適にこなせつつ、ワインディングロードなどでスポーツ走行をしても楽しい。これがGSX250Rの持ち味となっています。
ジクサーSF250はGSX250Rと比べてコンパクトにまとめられている印象です。が、実はシートは800mmで10mm高いのです。ハンドルセット位置も若干高く、フロントスクリーンが低いため、高速走行時にライダーが受ける風は、GSX250Rより大き目に感じます。
GSX250RはジクサーSF250より大柄に見えるものの、シートは低く足つき性は良好。それよりも問題となるのは重さで、GSX250Rの181kgという車重はジクサーSF250よりも23kgも重い数値。安定感という面では勝りますが……。
低重心かつ、しっかりしたハンドリングの手ごたえを持つGSX250R。GSR250系を出自とすることからもスポーツツーリングモデル的なキャラクターとなっています。乗りやすさは秀逸で、使い勝手は万能!!
一方のジクサーSF250はというと、GSX250Rに2年ほど遅れて登場しており、ネイキッドモデルのジクサー250も併売されています。特筆すべきポイントはオイル冷却方式「SOCS(Suzuki Oil Cooling System)」を採用した完全新設計となる単気筒エンジンを搭載していることで、オイルで冷却ジャケットを形成するスズキ独自の油冷技術により、水冷より軽く、空冷より冷えるというメリットがあります。全体的に軽量設計されていることもありますが、なんと車重は158kgとめちゃくちゃ軽いのです。
この軽さは大きな魅力であり、さらにスポーツライディングをする際の武器ともなっており、低回転域から元気の良いエンジンと相まって、通勤通学を行うストリートでもついつい快速モードになってしまうのです。シートが高く足つき性だけ見てしまうとGSX250Rよりもとっつきにくいかと思われがちですが、体力に自信の無いライダーなどにとっては軽さというのは大きなメリットであり、ジクサーSF250は女性やビギナーなどからも支持されているのです。
なおGSX250Rの並列2気筒とは出力特性からして違うので本質的な比較や好みは難しいのですが、参考としてジクサーSF250の最高出力は26馬力となっており、これはGSX250Rよりも2馬力高い数値となっていることを付け加えておきます!
GSX250Rのスクリーンは大きく防風性も高い形状となっています。対してジクサーSF250のスクリーンはコンパクトかつ、フロントマスク全体が低く構えたデザイン。ヘッドライト回りが下げられたストリートファイター系ネイキッドモデルに近い印象です。
シートの高さは、GSX250Rが790㎜、ジクサーSF250は800㎜。股下のシェイプ具合も異なり、数値以上にGSX250Rが足つき性は良く感じられます。シート表皮の素材や内部のクッションなど、GSX250Rの方がより上質な仕上がりとなっています。
フロントタイヤのサイズはGSX250R=110/80-17、ジクサーSF250=110/70R17。どちらもABSは標準で装備。GSX250Rのディスクローターはペタル(花弁)タイプが採用されています。
両車ともセパレートハンドルとなっています。ライディングポジション的に、大きな差異は感じられませんでしたが、フロントカウルの形状などから、ジクサーSF250の方が、若干高い位置にセットされている印象を受けます。GSX250Rは調整式ブレーキレバーが採用されているのもポイント。
メーターディスプレイの表示項目は基本的に同じです。表示フォントは、ジクサーSF250の方がモダンな印象を受けますが、GSX250Rのメーターは周りを囲むようにカバーパネルが設置されており、天候や周囲の明暗に視認性が左右されにくいです。
そろそろぶっちゃけて2台のことを記述していきましょう。というのも、はっきり言ってしまうと、両者は乗り味も違いますし、車両価格も違います。ですからスズキのディーラーに行っても迷うことなく1点買いされたというオーナーも多いと聞いています。ならば逆に、買う際に徹底的に悩んでもらおうと思ってしまうのが、年間50台からの新車インプレッションを行っている筆者の意地悪な考え。
まずGSX250Rは浜松のスズキ本社主導で開発され、中国で製造されているグローバル戦略モデルであり、日本、欧米、中国の成熟したモーターサイクルマーケットに向けて作られています。一方のジクサーSF250の開発及び製造拠点はスズキ・インディアとなっています。日本へは細部をリセッティングして導入していますが、どちらかといえば新興国向けに開発がなされており、実際のところ日本以外ではASEAN、インドがマーケットの主軸となっています。つまり、ジクサーSF250は「新興国の未来を見据えた軽量・高効率・新開発モデル」で、GSX250Rは「熟成した信頼性を活かした安心快適型スポーツツアラー」という思想の元誕生したものとなっているのです。
2025年7月現在の新車価格はGSX250Rが64万7900円、ジクサーSF250は51万4800円と大きな差があります。総合的に見て、仕上がりの質感やツアラーとしての完成度ではGSX250Rに軍配。一方で、軽快さと価格面の魅力を活かしたスポーツ性能ではジクサーSF250が優位。どちらも異なる価値を持った優秀なモデルです。何よりもそのどちらも選ぶことができるようにしてくれていることは、とても贅沢なことではありませんか?スズキが日本のブランドであることを誇りに思えます!!
リアタイヤサイズは、ジクサーSF250=150/60R17で、GSX250R=140/70-17と、ジクサーSF250の方が若干太くなっています。ハンドリングに関しては両者とてもナチュラルで、安心して深々とバンクさせることができます。ジクサーSF250は単気筒でありながらマフラーエンドが2つに分かれている点に注目。
ステップはライダー側もタンデムステップもGSX250Rの方がしっかり作られている感じです。ディテールをよく見ていくと、ジクサーSF250はコストが抑えられていることが伝わります。
”それではお前ならどっちを選ぶんだ!?”と問いただされたならば、ジクサーSF250と答えると思います。乗り味が好みであるということもありますが、13万円の価格差があれば、ツーリングに行き、おいしい食事や温泉に入ることができますし、カスタムに費やしてもいいですからね!!
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