【スズキ ジクサー SF 250 試乗記】この品質でこの価格!?真価は油冷エンジンだけにあらず!!

掲載日:2020年06月01日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI GIXXER SF 250

マーケットの主戦場とも言える250ccクラスで、GSR、Vストローム、GSX-Rと立て続けにヒットモデルを打ち出してきたスズキの最新モデル「ジクサー250」。油冷エンジンを搭載するロードスポーツバイクだ。

スズキのお家芸である油冷エンジンを、新たな技術で復活
ビギナーもエキスパートも気になる1台に仕上げられた

普通自動二輪免許で乗ることができ、高速道路を使えて、なおかつ車検の必要のない126~250ccクラスのバイクは、免許を取得したばかりのビギナーライダーはもちろん、バイクに返り咲くリターンライダーや、エキスパートライダーのセカンドバイクとしても重宝されており、昔からバイクマーケットにおいて主戦場とされてきた。よってどのメーカーも、長年培ってきた技術と蓄積した経験を用いて、マーケットニーズに応える渾身の1台を作り上げてくる。2020年に登場したジクサー250は、80年代以降スズキが得意としてきた油冷エンジンを約20年ぶりに復活させたことが大きなトピックスとして取り上げられているが、真の見どころはそこだけではなかった。強豪が乱立する中で、独自性と高いコストパフォーマンスが与えられたジクサー250、実際に触れて感じたことをお伝えする。

スズキ ジクサー SF 250 特徴

人気スポーツモデルのGSX250Rとの差別化、
そこにはジクサー250の独自性が秘められる

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ここ10年程の間に、GSR、Vストローム、GSX-Rと250ccバイクにおいて立て続けにヒットモデルを輩出してきたスズキ。すべての車両をテストしたうえで、それらに共通して言えることがある。それは他にはないキャラクターと、どのように使っても楽しめる深い懐を併せ持っていることだった。圧倒的なパフォーマンスを誇るものであったり、驚くほど積載能力が高かったりすることはないとしても、どちらも良い線を備えている。それが、私の印象だ。そのような中、新たにジクサー250/SF250が登場したので、その内容について紹介していこうと思う。なおジクサー250にはバーハンドルのネイキッドモデルとセパレートハンドルでカウル付きのSFが用意されており、今回は後者のテストとなっている。

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ジクサー250は2019年の東京モーターサイクルショーで初披露され、その際最も注目を集めたのが油冷エンジンを採用しているということだった。そこで簡単にだがスズキと油冷エンジンの関係について触れておきたい。スズキは1985年に発売したGSX-R750で、二輪車としては初となる量産油冷エンジンを採用する。エンジンオイルと共にエンジンブロックに備えた空冷フィンも併用して冷却するSACS(Suzuki Advanced Cooling System)という技術であり、これは2008年に生産を終了したGSX1400まで、23年もの期間採用されていた。このようなバックボーンがあるため、古くからバイクに親しんできたライダーの中にはスズキ=油冷というイメージを抱いている人も多い。

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ただし新型ジクサー250に用いられている油冷システムは、さらに進化したSOCS(Suzuki Oil Cooling System)であり、以前のSACSとは異なり、空冷フィンを持たずエンジンオイルのみの冷却方式となっているのだ。そのためにコンパクトで軽量なエンジンを実現でき、なおかつ高回転、高出力にも耐えるものとなっている。

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スズキは同クラスのロードスポーツモデルGSX250Rという人気モデルも有しているが、それにはGSR系で採用されていた2気筒エンジンをベースにブラッシュアップが図られたエンジンが搭載されており、最新の油冷シングルエンジンを搭載したジクサー250とはライディングフィール的に差別化が図られているうえ、出自そのものが異なると言える。そのようなジクサー250を実際に走らせていくとしよう。

スズキ ジクサー SF 250 試乗インプレッション

軽量なシングルエンジンらしい快活さと、
上質な高級感を高い次元で両立させる

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開発陣が直感的にカッコ良いと思ってもらえるようなデザインを目指したというジクサーSF250のスタイリングは、ダイナミックでありながらもミニマムに纏められている。サイドカウル周辺はボリューミーでありクラスを超えた存在感を持たせながらも、フロントやテールカウル類は低くコンパクトにまとめられている。そして単色のボディカラーとされているのでプレミアムな印象を抱かせる。実際に街中を走らせていると、視線を集めることも多く、強い存在感を持ち合わせている。

スズキイージースタートシステムにより、スタートボタンを軽くひと押しするだけでエンジンは目覚める。クラッチレバーは軽く、シフトもすんなりと入る。ラフにクラッチレバーを放しても息つくそぶりも見せずにトントンと車体を前へと押し出してゆく。当たり前のようなことだが、すべてにおいてスムーズであり、これならばライディングに慣れていないライダーでも気軽に楽しむことができる。

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エンジンやタイヤが温まってきたことを確認して徐々にペースを上げる。普段大型バイクに慣れ親しんでいることや、最近は排気量約1800ccもある新型ハーレーのインプレッションをする機会が多いこともあり、正直なところ乗り出した当初は非力に感じる部分もあったが、しっかりと感触を確かめながら走らせてみると、全体的なバランスが良いことが分かる。シングルエンジン特有の低回転から軽い吹け上がりを見せ、それでいながらレブリミットは1万という高回転まで楽しめる味付けは、街中、高速、ワインディング、どのステージでも扱いやすい。

ジクサー150をベースとするフレームは、メインパイプの厚さを0.3mm増して約12%のねじれ剛性を向上。φ41mmと太目のフロントフォークと相まって、かなり剛性感が高い。そして超軽量な車重のため、かなりのスポーツライディングを楽しむことができる。ちょっと寝かせるだけでスッと曲がっていくし、膝が着地するほどダイナミックに倒しこむことも容易にできる。スポーティーかつイージーな乗り味。これがジクサーSF250の大きな魅力と言えよう。

ジクサーSF250が手元にある期間、毎日乗り回した。軽くて扱いやすいため、それこそコンビニに行くのにも使いたくなるのだ。先述したが街を走らせていると人からの視線を感じるほど、なぜだか目立つ存在であるというのもなんとも面白い。

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そして同門対決となってしまうことが心配されるGSX250Rとの関係だが、ジクサー250がシングルエンジンなのに対し、GSXはツインエンジンという違いがまず大きい。しかもあのツインはロングストローク気味でトルクフルな味付けがなされており、どちらかというと高速ツーリングに向いている。ジクサーSF250はフルカウルモデルではあるが、フロントカウルがコンパクトに作られているため、上体を起こした姿勢だと走行風を結構受けるが、6000回転前後で時速90キロ、7000回転弱で時速100キロで走れる設定とされており、そのゾーンで走らせている分には快適そのものだ。

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むしろ着眼したいのはジクサー250の26馬力という最高出力はGSX250Rよりも2馬力高く、レブリミットは1万回転で作動するが、GSX250Rでも1万500回転で作動してしまう。GSX250Rの装備重量は178kgで、ジクサーSF250は158kgと20kgも軽い(ジクサー250は154kg)。そして極めつけとなるのはジクサーSF250の本体価格48万1800円(税込)というのは、GSX250Rより5万5000円も安い設定だ。個人的な意見を書かせていただくとすれば、もはや悩むことなくジクサーSF250の一点張りと言い切る。それほどコストパフォーマンスの高いモデルに仕立て上げられている。

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最後に余談となってしまうが、2020年3月19日にプレス向けとなるジクサー250/SF250の発表会が行われた。通常であれば会場が用意され、そこに様々なメディアのスタッフが集まり開催されるもので当初はその予定だったのだが、新型コロナの問題で急遽ネットによるライブ配信での発表会となった。これを書いている5月28日現在、全国の緊急事態宣言は解除され徐々に日本は以前の生活を取り戻してゆくことが期待されているが、ジクサー250の製造工場があるインドはまだロックダウンが続いている状況だ。もしかすると欲しくてもすぐには手元に届かないということもあるかもしれない。購入を検討している人はその点に関しても情報を収集すると良いだろう。

スズキ ジクサー SF 250 詳細写真

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新開発のエンジンにはSOCS(スズキオイルクーリングシステム)という新たな油冷技術が採用されている。エンジンオイルをオイルクーラーで冷やしエンジンブロックを循環させるものだ。軽量コンパクトかつ低重心なエンジンでありハンドリングが軽く、水冷と違いクーラント液のメンテナンスが不要。それでいながらオイルクーラーにファンが設けられており真夏の渋滞でも問題がない。

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新開発のフロントフォークはインナーチューブ径がφ41mmと太目の設定とされ高い剛性を得られている上に動きも良い。ABSは標準装備で、ブレーキキャリパーはブレンボ社の小型車両向けラインとなるバイブレが採用されている。

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精悍な印象を覚えるデザインとされたフロントマスクにはLEDヘッドライトを装備。横に広く配列することで、高い照射性とオリジナリティのあるデザインを両立させている。ロービームでは両脇と上部が点灯し、ハイビームはそれに加え中央部が点灯する。

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タイヤサイズはフロント110/70R17、リア150/60R17で、現在のこのクラスのスポーツモデルでは標準的なもの。スイングアームはジクサー250専用設計であり、ジクサー150と比べてねじれ剛性を約30%向上させている。マフラーのエンドパイプが2本出しとなっているのもポイント。

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リアの灯火パーツはLEDのコンビタイプとされ、ブレーキライトには通常のLED、テールライトには面発光のLEDを採用している。後方からもひと目でジクサーだとわかるデザインとされている。リアセクションから延長する形でメーター及びウインカーステーが備わる。

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新開発の7段階プリロード調整可能モノサスペンションが採用されている。剛性の高いフレーム、スイングアームと相まって、トラクションを掴みやすく、路面状況のインフォメーションもよく伝わる。

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ステップはわりとタイトなライディングポジションとなる位置にセットされている。ヒールプレートも大型で体重を預けやすい。タンデムステップはフレームに溶接されており着脱不可となっている。

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フル液晶のインストルメントパネルが備わる。コンパクトながらも視認性は高い。ギアポジションインジケーターが表示されるのが良い。レッドゾーンの1万回転でレブリミットが作動。フロントカウルの内側もデザイン及びペイントされており高級感がある。

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シートはライダーとパッセンジャー側がセパレートされているうえに、段付きとすることでスポーティな印象を高めている。表皮の素材も滑りにくく、クッション性も高いので、コンフォートもスポーツも疲れにくい。グラブバーは大型で握りやすい形状。

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フルカウルのジクサーSF250とネイキッドのジクサー250で共通とされる燃料タンクだが、サイドカウルの形状が異なるため、スタイリングの印象はかなり変わっている。タンク容量は12リットル。給油時に算出するのを怠ってしまったが、かなり燃費が良い印象だった。

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ジクサーSF250はセパレートハンドルが採用されており上体を前傾させるスポーティなライディングポジションとなっている。バーハンドルのジクサー250は、上に62mm、手前に57mm引かれた位置にハンドルが設置されているため、乗り味は大分異なる。

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車体サイドのオープナーシリンダーにキーを挿しこみ回すことで、パッセンジャーシートを外すことができる。書類や車載工具が収められているほか、多少のユーティリティスペースが設けられている。

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