【カワサキ W230 試乗記】古く懐かしいだけではなく新鮮味もある

掲載日:2025年04月06日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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KAWASAKI W230

カワサキのWシリーズに新たに加わった「W230」。普通自動二輪免許で乗れるコンパクトなパッケージングでありながらWシリーズ特有のビンテージ色を前面に打ち出した本格派だ。

勢いを増すカワサキ!
Wシリーズらしい伝統的なデザイン

カワサキのニューモデル攻勢が続いている。少し前の話に遡ると、市販スーパーチャージドマシンとして登場し、世界最高速度記録を樹立したNinja H2R、ネオクラシックの真打ち的モデルであり現在も売れ続けているZ900RS、その弟分的存在のZ650RS、250/400ccフルカウルスポーツモデル界において再び4気筒エンジンを搭載したNinja ZX-25R/4R、若者を中心に大ヒットを遂げたエリミネーターなどなど、昨今注目されたモデルを挙げて行くだけでも枚挙にいとまがない。

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そのカワサキが2024年11月1日に新たにモデルラインアップしたニューカマーが今回紹介するW230だ。Wシリーズらしい伝統的なデザインがほどこされたレトロスポーツバイクである。W230を実際に見て、触れて、感触を探っていきたいと思う。

カワサキ W230 特徴

名機エストレヤの再来!?
生々流転はこの世の常か!

W230が世界初公開されたのは今から一昨年前となる2023年10月のジャパン・モビリティ・ショー2023でのことだった。その場では参考出品とされていたが、市販化に向けてすでに動き出していることは明白であり、多くのファンが登場を待ち望んでいた。それから約一年後の2024年11月についにW230は発売され、これもまたバックオーダー待ちの状況である噂を耳にするほど人気を博しているという。

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1965年に登場したカワサキ650-W1から始まったWシリーズの歴史は、その後長い年月を経てW650、W800、W400という復刻版的モデルを輩出してきた。だが、古くからバイクに親しんできたライダーからすると、「W230はエストレヤの復刻ではないの?」と思うことも少なくないと思う。

エストレヤというのは1992年にカワサキから登場したモデルで、そのスタイリングは後にカワサキと提携を結び吸収されることとなる目黒製作所が1950年代に手掛けていたメグロジュニアをモチーフとしていることは歴然としていた。奇しくも今回W230と同じくしてメグロS1が発売されたが、これらの史実をもとにすると、W230もエストレヤもメグロがルーツとなっていることが分かる。

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もちろん同じ物を復刻させるのではなく、今の技術を各部に散りばめて最新のモデルとして造り上げている。伝統を重んじながら今の世に送り出されたW230。その乗り味、感触をお伝えしていこう。

カワサキ W230 試乗インプレッション

安心して乗れ、必要にして十分
自分好みに仕立てる素材にも

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本当のことを言うと私自身も、先に述べたように”エストレヤ復刻”的なイメージをしていたことを白状するが、実はエストレヤとW230は結構違う。まずはエンジン。「よくぞ空冷で出してくれた!」と思ってしまうのがエンス―的な解釈で、空冷でも水冷でもあまり関係ないというのが一般的なことは重々理解したうえで、環境規制が厳しくなり多くのメーカーが空冷エンジンから手を引いている状況にあって、カワサキの努力をまず空冷エンジンをレギュレーションに通した点から見るのはバイク評論家としてしかるべきこと。ただエストレヤが250ccだったのに対してW230はその名称が示すように230cc(正確には232cc)シングルエンジンである。

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フレームワークもエストレヤから考えると小ぶりで、全体的に一回り小さくなっている印象だ。跨った際の足つき性の良さには感動すら覚える。これならば免許取り立てのライダーでも、小柄な女性でも、力に自信がなくなってきたエキスパートライダーでも気軽に触れることができる。

そしてスタイリングは好き嫌いの好みが分かれるところだと思うが、クラシックで丸みを帯びた優しいフォルムはどのようなステージに置いても嫌味が無く、そのシーンに溶け込んでくれるはずだ。これらはW230の持つ魅力の大きなポイントとなっている。

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エンジンを始動し走り出す。排気量232ccOHC2バルブ空冷4ストロークシングルエンジンは、最高出力こそ18馬力とスペックシートで見ると非力に感じられるものの、低回転域からしっかりとしたトルクを発生し、力強く車体を前へと押し出してくれる。高回転も良くまわり、回転計のレッドゾーンに入ってから9500回転弱付近でリミッターが作動する。燃費も良く、耐久性も高そうな良いエンジンである。

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ただ一点気になったことと言えば、エンスト防止マージンが取られているのだろうが、アイドリングが2000回転近くとやや高めなところだ。もう少し低い回転でアイドリングし、トットットッ……とシングルエンジンの心地よい鼓動感を得られるともっと味わい深さが増すだろう。

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クラシカルなトレッドパターンを持つバイアスタイヤ、そして細身の幅でフロント18、17インチとしたタイヤサイズからなるハンドリングは、古き良き時代のロードスポーツバイクのそれをしっかりと表現している。そのようにクラシックな雰囲気で全体を包みながらも、操作感の軽いクラッチレバーやABSを標準装備し、しっかりとした制動力が持たされたブレーキシステム、LEDヘッドライトなどモダンバイクに必須と思われるエッセンスがあちこちに散りばめられていることもあり、ライディングはいたってイージーなのである。

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年中様々なバイクに乗りテストを行っているが、バイクというものはこれで十分であり、こういったモデルがライダーの生活を幸せにしてくれるのだとW230に触れて思うことができた。シンプルであるが故に自分好みの一台に仕立て上げることも楽しめるだろうし、今後派生モデルが出てくることも予想できる。メグロS1はリバッジモデルであり、実質W230と走りに関しての相違点は見つけることができなかったが、メグロS1は手を入れずに乗りたいプレミアムパッケージ版だと思えば良い。

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眺めて良し乗って良し使い勝手良しの三拍子が揃い、なおかつ誰がいつ乗っても気持ちよく思えるバイク、実はそのようなモデルは数少ないのだが、W230はそれに当てはまる一台となっているのだ。

カワサキ W230 詳細写真

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排気量232cc空冷4ストロークSOHC2バルブシングルエンジンを搭載。低回転域から粘り強く扱いやすいキャラクターだ。フューエルインジェクションが採用されているので常に最適な特性を得られる。

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ワイヤースポークホイールに90/90-18サイズのバイアスタイヤをセット。スチールフェンダーと相まってクラシックなイメージを助長する。2POTキャリパーの制動力は十分でABSも標準装備。スポークに装着されたバランスウエイトも雰囲気が良い。

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カラーは写真のパールアイボリー×エボニーとメタリックオーシャンブルー×エボニーの2種類が用意されている。燃料タンク容量は11L。メグロS1との違いはカラーリングとバッジのみで形状などは共通。

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排気口が細く絞られたキャブトンタイプのマフラーをホリゾンタルにセットしている。排気音もシングルエンジンらしく歯切れの良い快活なサウンドだ。

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”イマドキのバイクなのだな”と思える唯一の部分と言っていいのがLEDを使用したヘッドライトだ。ケースベゼルもメッキ処理されており顔つきはやや派手めの印象。

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トランスミッションは6段リターンで、高速道路の巡行性も考えられている。ステップ位置も自然でライディングポジションは快適。バンク角はやや浅めな印象。

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シート高は745mmと低めに設定されている。シート下に見えるサイドカバーが左右に張り出しており、これが足つき性を若干スポイルしているが、さほど気にならないと思う。座面も広くタンデムライドも楽しめる。

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個人的にはツインメーターとなっていることが刺さった。コストの兼ね合いなどで回転計を省くことも多い中、クラシックスポーツモデルらしいメーター周りが実現されている。ETCインジケーターが収まっているのもスマートだ。

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リアのタイヤサイズは110/90-17で前後ともに細身の仕様なので走りにも軽快感があり、ワインディングロードなども楽しく走ることができる。サスペンションはツインショックタイプだ。

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テールランプ類はリアフェンダーにセットされている。全体的に大柄なパーツが採用されていることが、クラシックな雰囲気を引き立てており好感が持てる。

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ハンドルバーはかなり高く、そしてライダーに近い位置にセットされている。これにより上体が起きたライディングポジションとなり、視界は広く取り回しも楽に行うことができる。

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シート下には純正のETC車載器を収めるスペースが用意されており、若干だがユーティリティスペースとしても活用できそうな余裕が持たされている。

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