掲載日:2024年10月08日 試乗インプレ・レビュー
写真/山下 剛 取材・文/小松 男 川上 礁太
YAMAHA XSR900 vs YAMAHA XSR900GP
禁断の果実『対決(比較)』、これほど人を魅了してやまない企画は無い。ただ一歩間違えば炎上することもある諸刃の剣でもある。心意気を持つ猛者が集う集団、バイクブロスマガジンズチームではあえてそこに挑戦する。
今回は本年登場したニューモデルショーレースにおいてアワード筆頭と噂されるヤマハ・XSR900GPと、そのベースモデルとなったネオクラシックスポーツモデル、ヤマハ・XSR900だ。同門対決であり、もはや親族の戦いとも言えるこの勝負。どっちがどうなの?
このたびの比較企画はですね。担当様から「こういった企画をお願いしたいです」と連絡が入り、ロケ(撮影取材)日を調整した後、ロケの前日に物凄く詰め込んだ香盤表を渡され、しかも締め切りは数日後という驚愕のステップで始まったわけですけれど、このようにぶっちゃけた話を前面に押し出して進めることこそが「比較企画」を面白くできるのではないものかという書き出しをしてみたわけなのです。
そして今回担当様から選ばれてきた車両は、今をトキメクおっさんホイホイ【ヤマハ・XSR900GP】と、ネオクラシック的でありながら過激な香りがプンプン漂う【ヤマハ・XSR900】。エンジン、フレームなどを共通とするいわゆる兄弟モデルですね。
これを20歳の差を持つライダーが乗り比べて、どのように感じたのかをクロストークとしてお届けしようと思うのです。
ちなみにライダーのプロファイルは、私こと小松 男(コマツ ダン)はバイクメディア業界歴20年、年間50モデルからのバイク試乗インプレを行っている現在47歳のアラフィフ。ヤング代表は駆け出しカメラマンとして目下売り出し中の川上礁太(カワカミ ショウタ)さん28歳。サーキットで鍛えられ昨今はオフロードにハマり中。この2人でお届けしていきます!
XSR900は2015年に初代モデルが登場し、2022年にフルモデルチェンジを受けています。基本的なコンセプトが踏襲されているので、旧モデルであってもまだまだ新しい感じがしますね。
80年代に活躍したGPレーサーを彷彿させるアッパーカウルや、クリップオンハンドル、強化した足まわりなどを纏い、今シーズン登場したばかりのXSR900GP。案の定ヒットモデルとなり、結構見かけます。
XSR900のシート高は810mm。バーハンドルによるアップライトなライディングポジションにより足つき性は割と良いですし、取り回しも楽。特にXSR900GPと比べると差は歴然。
クリップオンハンドルにより前傾姿勢が強いられること、そもそもシートが835mmと高めの設定であることからXSR900と比べると取り回しはしにくい感じ。ライダーは身長177cm、体重71kg。
小松 男(以下・ダン):80年代から90年代のレーサーレプリカブームを間近に見てきた世代としては、XSR900GPの登場は結構嬉しいものがあったんだよ。中には厳しい意見を言うユーザーもいるようだけれど、TZR250(3MA)を所有していたこともある身とすれば、ディテールを含め、XSR900GPに対して断然肯定派。走らせても楽しいし。
そのベースとなっているXSR900もかなり良いよ。まあ個人的な好みでは現行のMT-09がこのCP3(ヤマハのクロスプレーントリプル)エンジン搭載シリーズの中ではデザインも走りも最高だと思っているけれど、街中にすっと置いた時にXSR900がカッコいいことも良く知っている。平成生まれライダー的にはXSR900やXSR900GPはどのように見えているの?
川上 礁太(以下・ショウタ):レプリカブームというのは話にしか聞いたことがありませんが、それでもXSR900GPはカッコいいと思います。今どきのフルカウルスポーツモデルとは違った個性があるのは、僕らのような若い世代にもウケています。
どちらかというとキャラクター的にはむしろXSR900よりも分かりやすくて良いですよね。カウルがついていてクリップオンハンドルなので、スポーツモデルだと直感的に伝わってきますし。
でも乗ってみると結構スパルタンで驚きました。広い通りや峠道をガンガンに走ったり、サーキットなどクローズドコースに持ち込むならばXSR900GPは良さそうですが、狭い路地などはライポジや足つき性などから結構きつい印象を受けました。
一方でXSR900はとても乗りやすいですね。サスペンションなどの足まわりの装備はXSR900GPから見劣りしますが、公道での通常走行シーンでは十分以上の性能だと思います。
アラフィフのオトーサン世代代表のダンからすると、見た目的に間違いなくXSR900GPが刺さるのだが、他人様には乗りやく、長く付き合えるであろうXSR900をお薦めする。
28歳駆け出しカメラマンのショウタくん(左)と、バイクの免許を取得し早30年以上、バイクメディア業界で活動をはじめ20年の時間が経過してしまったダン(右)。それぞれ感じ方が違うようだ。
ダン:XSR900GPの乗り味って結構スポーティだから、多少やせ我慢して付き合う部分があるじゃない。まあ普段からジムで体を作るようなタフガイなら屁でもないだろうけれど、アップハンドルでドカッと座って乗ることに慣れてしまっているオトーサンはキツイと感じるかもしれないと思っている。
そこにこそ魅力があるとは思うけど、乗るのが億劫になってしまったら身も蓋もないので、普段から日常的にバイクと付き合いたいとか、買い物やツーリングが主体だと言うのであればXSR900をお薦めしているよ。
ショウタ:僕もその意見には賛成です。XSR900とXSR900GPは似て非なるキャラクターじゃないですか。カッコつけて乗るだけとか所有欲を満たすためと言うのであればXSR900GPですが、ラクに付き合えるのは断然XSR900。
XSR900GPはおっさんホイホイとか言われているようですが、むしろワカモノに向いているバイクなのかもしれないと思いました。
ダン:でも車両価格を見てみるとその差もなかなかのものだよ。XSR900が125万4000円(税込)なのに対してXSR900GPは20万円近く高い143万円(税込)。ちょっと高嶺の花子さんじゃない?
ショウタ:それでもリッタークラスのスーパーバイクモデルは軒並み200万円以上が当たり前なので、無理して手を出すワカモノも多いかもしれないと思っています。そういったユーザーはむしろXSR900には見向きもせずに、XSR900GP一点買いなのかもしれませんね。
ダン:現金無くてもローンが通れば買っちゃうか(笑)。どっちのモデルを所有してもそうだけど、簡単に乗れる分、扱いは注意して欲しいし、自身のライディングスキルを高めるきっかけになってくれるといいよね。
XSR900なんてスロットルワークでポンポンフロントが浮くほどトルク感があるので、そこを上手く使えるようならさらにバイクを操ることを楽しめると思うよ。
最近はオフロードにハマっているというショウタくん。元々サーキット走行なども良く通っていたそうでバイクの扱いには慣れている。でもXSR900GPのシート高とライポジに難儀している様子だった。
ダン:当たり前だけれど走らせてみると両車結構違う印象を受けるじゃない。ちょっと前にバイクブロスマガジンズのインプレ記事のためにXSR900GP単体で乗った時には、ぶっちゃけXSR900よりもXSR900GPの方がソリッドで断然好みだと感じていたことを覚えているけれど、今日XSR900と乗り比べてみると、楽ちんなXSR900の魅力がさらに増大した感じなのね。
足まわりの装備を見ると絶対XSR900GPの方が上級仕様なのだけれど、通勤通学、ツーリング、ワインディングロードという多くのライダーの日常的な使い方をイメージした上でお薦めするのはXSR900の方だね。
純正オプションのロケットカウルとシングルシートカウルを装着すれば、レーシーな雰囲気も楽しめちゃう!
ショウタ:僕はXSR900GPが良いですね。普段の足にはセカンドバイクを用意すれば良いですし、週末スペシャルや峠仕様として使えたら贅沢じゃないですか?
ダン:なんだか考え方が僕より大人だなあ(笑)。そうそう、XSR900GPは男ウケが良くて、XSR900は女子ウケが良いというのは個人的な統計結果です(笑)。これも大きなポイントとなるのではないかな!?
XSR900GPの圧倒的な存在感を持つ大きな要因となっているのが柔らかなラウンドを描くアッパーカウル。対してXSR900はオーソドックスな丸型ヘッドライトがポイント。ゴツいフレームも魅せるデザインとなっている。
XSR900GPは今シーズン登場した新型MT-09と同等の5インチTFTディスプレイを採用。アナログメーター表示に胸キュン。XSR900は多少小さい3.5インチTFTディスプレイが使われている。
XSR900GPのアッパーカウルステー形状やβクリップを使っているところを見るとレーサーレプリカブーム世代としてはホクホクしてしまう。ただ前傾姿勢はややキツイことと、バーエンドミラーはイマイチ苦手。XSR900とXSR900GPはスイッチボックスも異なるタイプが使われている。
XSR900GPは専用開発のKYB製フルアジャスタブルフロントフォークを採用。キャスター角0.2度、トレール量2mmXSR900GPの方が大きく、安定傾向のディメンションとされている。ホイールやタイヤサイズに違いはない。
フロントフォークと同様にリアサスペンションもXSR900GPは専用開発となっており、より細かなセッティングが可能なうえ別体式のプリロード調整ダイヤルも備わっている。両車ともにリアサスペンションからのインフォメーションは良い。
パッと見同じだと思っていたシートも良く見てみるとステッチが違ったり、シート下のカウル形状も異なることが分かった。付け替えはしてみなかったが、シートベースこそ同じかもしれないが、互換性は無いように思えた。
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