【ヤマハ MT-09 試乗記】エンジンもハンドリングも歴代最高傑作!

掲載日:2024年06月17日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA MT-09

"ザ・ダークサイド・オブ・ジャパン"という刺激的なキャッチフレーズを掲げたプロモーションムービーを引っ提げて初代MT-09が世に送り出されたのは2014年のこと。それから10年が経ち3.5代目となる新型MT-09が登場した!

走らせることに大きな快感を得られる
CP3エンジンはスポーツライダーを魅了

いまでこそヤマハのスポーツネイキッドモデルの代名詞となったMTシリーズだが、このように周知されるきっかけとなったモデルこそ、2014年に登場した初代MT-09だったと私は考えている。発売後瞬く間に大ヒットを遂げ、その後MT-07、MT-25、MT-10と排気量やエンジン形式を変えたモデルを拡充。現在のMTシリーズは125ccから1000ccまで幅広くラインアップされるようになった。

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なぜここまで受け入れられたのか。それはMT-09が野生馬と揶揄されるほど刺激的であり、それを乗りこなす喜びをライダーにもたらすキャラクターがスーパーネイキッドの指標的存在となったからである。そして初代モデルの登場から10年の時が流れた今年、新型MT-09がストリートに降臨した。

今回はマイナーモデルチェンジで3.5代目ということだが、フェイスマスクやシート形状などスタイリングからして大きく変更されており印象も一新している。そんな新MT-09の感触を確かめていきたいと思う。

ヤマハ MT-09 特徴

スタイリングも構成も飛躍的に進化
むかうところ敵無しの存在

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初代モデルの登場よりも前からヤマハが並列3気筒エンジンを開発しているという情報は入っていたが、私が初代MT-09の実車(まだ走行できないプロトタイプだが)を目の前にしたのは2013年のヤマハ主催メディア向け一気乗り試乗会でのことだった。CP3(クロスプレーン3気筒)エンジンが奏でる3発特有のサウンドを耳にし、それだけでも心がときめいたことを覚えている。その時に書いた記事を読み返してみると、「実際に乗ってみないとなんともいえないが、エンジンキャラクターはある程度元気に、でも全体的にはしっとりした味付けが個人的希望」と残している。デリバリーがスタートした後のインプレッションでは「楽しく、気持ちいいが、相応のスキルは求められる」と記している。

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そうなのだ。初代MT-09は乗った瞬間から手足のごとく扱えると思わせてくれたが、それを甘んじて走らせると急に牙をむいてくることがある。ライダーを振り落とさんとしてくるその性格は、野生馬そのものであり、まさしくロデオマスターという異名がドンピシャで当てはまるものであった。

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その後、2017年、2021年とフルモデルチェンジが行われ、刺激的なキャラクターは残しつつ、よりセーフティライドを楽しめるように車体設計や電子デバイスの追加などが施されてきた。最新の2024年モデルではマイナーチェンジが行われたのだが、その主なポイントは、ライディングポジションの修正、それに伴う車体剛性バランスの見直しとサスペンションのリセッティング、トリプルエンジンサウンドの強調化、新形状の燃料タンク、YRC(ヤマハライドコントロール)やクルーズコントロールシステムなどの走行支援、ナビアプリ連動対応の5インチフルカラーTFTメーター、そして新たなデザインだ。

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これはもはやフルモデルチェンジと言っても過言ではないほどのアップデートだと私は考えている。それでは実際の乗り味をはじめ、どのように進化したのかを探っていきたいと思う。

ヤマハ MT-09 試乗インプレッション

ソリッドな乗り味は淡泊で薄口?
いや、ライダーを情熱的に誘う!!

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今年のモーターサイクルショーでその姿を目にはしていたが、新型MT-09を目の前にすると、やはりヘッドライトまわりのデザインが変更された顔つきが気になって仕方ない。アイアンマンのようなウォーズマンのような……、とにかくどこか見覚えのあるキャラクターを連想させるのだが、それがバイクのフロントマスクとなっているのだから、脳裏に印象が残る。個人的にはこれまで2代目MT-09のシャープな2灯ヘッドライトが好きだったが、新型のアクの強さはそれ以上に好みかもしれない。

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エンジンを始動し走り出す。歴代MT-09がそうであったように、初めて乗ることを忘れさせるほどの手足感覚で扱える。一つ目の交差点からフルバンクだ。特に低速域での操作感は従来モデルを凌駕しており、これはライディングポジションのリセッティングによる恩恵が強い。こういった話をすると”体格は一人ひとり異なるから一方で乗りにくくなっているライダーも存在するのではないか”と返されることもあるのだが、そもそもハンドル、ステップ、シッティングの三点の位置関係から成るものであり、基本的にはほとんどの人が乗りやすくなったと思えるはずだ。これは”軽い”と感じられることにも通じており、諸元的には従来モデルと比べて若干の重量増であるにも関わらず、体感的な動きは軽くなっている。

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CP3エンジンは相変わらずトルキーであり、ラフなスロットル操作をしようものなら、即座にフロントタイヤを浮き上がらせようとしてくる。ただ電子制御システムの進化は偉大で、ライダーがフロントアップしようと思えばフロントを浮かせ、不意にフロントの接地がなくなりそうな時には車両側が抑えてくれる。この計算式を煮詰めたテストライダーや技術者は素晴らしいと思う。

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先述したように低速域での扱いやすさが増したことで、ストリートでの縦横無尽感はさらに向上している。細い路地が続くようなルートであっても排気量を忘れるほどスムーズかつストレスフリーにパスできるし、Uターンもお手の物。さらにワインディングに持ち込めば狂ったように大胆に、そしてシャープなコーナーリングを楽しむことができる。ハンドリングのヤマハ大復活! 心底そう思え、もはや目からウロコ状態だ。

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ただ一方でその乗り味はソリッドで淡泊にも思えてしまう。というのも、武器である軽さがその強さを見せ、走りの重厚感を薄めている。まあこれに関してはあえて行っているMT-09のキャラクター付けなので好みが分かれるのだが、羽のように軽く、パワフルなものだから、おのずとペースアップしてしまう。

1週間に渡るテスト期間中は、高速道路も何度か利用した。首都高のようなステージでは高い運動性能を活かした抜群の走りを楽しめるが、流れが早く、直線が続くような郊外の高速道路では、6速トップ時速100キロで4000回転で、ロングディスタンスのツーリングを頻繁に行うのであれば、オーバードライブギアが欲しいとも思えた。ただクルーズコントロールは使いやすいので、そこで相殺できるとも考えられるが……。

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初代MT-09に乗った時に感じた乗ったライダーが持つスキルの限界越えを誘う危うさは無く、むしろエキサイティング度を引き上げつつ気持ちよさを残し、その奥に懐の深さを感じられるようになった。最新型MT-09は、本気で欲しいと思える気持ちにさせてくれる一台に仕上がっているぞ。

ヤマハ MT-09 詳細写真

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MT-09の大きな魅力となっているCP3(クロスプレーン3気筒)エンジンを採用。排気量888cc、最高出力120馬力、最大トルク93Nmというスペックに変更はない。低回転から高回転域まで気持ちよく吹け上がる。

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軽量かつ高い剛性を誇るスピンフォージドホイールを引き続き採用している。フロントフォークは高次元でのスポーツライディングを安心して楽しめるようバネレートが高められた。

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従来モデルと大きく異なる印象を受ける新型フロントマスク。エッジーでありながらも有機的なラインを描いており、MT-09の新世代化を強く感じさせる。

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5インチTFTメーターを採用。 専用アプリ「Y-connect(Yamaha Motorcycle Connect)」と接続し、YRCのセッティングや電話やメールの着信通知などもできる上、「Garmin StreetCross」アプリを使えばメーター画面上にナビも表示できる。

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新設計のハンドルスイッチを採用している。キャンセルボタンを持たないウインカーや直感的な操作が可能な十字コントロールボタン、従来モデルではSPグレードのみの設定だったクルーズコントロールなども備えている。なおハンドル位置は約3.4cm下方にセットされる。

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アウターレンズを上下に分割し、それぞれカラーリングを変更することで縦幅を細く見せる新型テールランプ。MT-09のスポーティなイメージを、より一層強調している。

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スイングアーム、ホイールの変更は無い。標準タイヤはブリヂストン製バトラックスS23Rで、車両との相性が良く、タイヤの端までしっかりと寝かせて使うことができる。

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内臓剥き出しのようなエグミを感じさせてくれるサイレンサーのデザインは踏襲し、独特なトリプルサウンドも健在。吸気系を見直し、高速・高回転域での吸気音を強調している。

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第3世代QSS(クイックシフトシステム)を採用しており、加速中のシフトアップと減速中のシフトダウンはもちろん、加速中のシフトダウン、または減速中のシフトアップにも対応。ステップ位置も修正されている。

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セパレートシートを採用(従来モデルは一体型)。ライダー側のシート高は825mmとなっている。シート形状も見直され、足つき性が向上している。

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リアサスペンションのリンク設計がリセッティングされており、コーナリング中の車体姿勢、荷重配分をそれぞれ最適化した。リアタイヤの接地状況をはじめとしたインフォメーションが伝わりやすくダイレクト感がある。

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新たな製法「高意匠プレス成形」にて形成した燃料タンク。燃料タンクの容量は維持しながら全高を抑えたことで、ハンドル切れ角が従来の28度から32度へと片側4度ずつ増え、低速時における取り回しがしやすくなっている。

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シート下にはお約束の電装系が収められているほか、USB Type-Cソケットが用意され、さらに+αのユーティリティスペースが確保されている。

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