掲載日:2023年02月17日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
KAWASAKI Ninja 400
ニンジャ400が現行の形になったのは、2018年のこと。それ以前は600ccクラスのフルカウルモデルER-6fをベースとした、ツアラーとしての性格が濃いモデルだった。しかしこの年フルモデルチェンジを受けて登場したのは、ニンジャ250をベースにしたもの。600ccベースから250ccベースになったことでキャラクターも大きく変化し、ツアラーからスポーツ性を重視したモデルへと生まれ変わったのだ。
ボディデザインは新世代のニンジャシリーズに共通のシャープで迫力のあるものとなり、フレームもニンジャH2からインスパイアされたトレリスフレームになるなど、かなりスポーティなものとなった。また、LEDヘッドライトやアシスト&スリッパークラッチ、ABSを標準装備とするなど、装備面でも刷新が図られた。
この新生ニンジャ400はカラーリング変更はあったものの、登場以来大きな仕様変更は受けていない(2023年モデルでは平成32年[令和2年]排出ガス規制をクリアしたため認定型式が変更された)。これは、大きな改良をしなくても高い戦闘力を維持している、と見ることもできるだろう。
最大の特徴は軽さだ。車両重量は167kgで、これはニンジャ250と比べてわずか1kg増えただけ。同じ2気筒のカウル付きロードスポーツであるホンダのCBR400Rが192kgなのを考えても、相当軽いことがわかる。さらに搭載される心臓部もパワフルだ。並列2気筒398ccのDOHC4バルブエンジンは、35kW(48PS)/10,000rpmを発生する。この値は、CBR400Rの34kw(46PS)/9,000rpmというスペックよりも高いものとなっている。また、走りを支える足周りも、大型車と同等の41mm径フロントフォークやプリロード調整可能なリンク式リアサスペンションを装備するほか、フロントブレーキにはZX-14Rと同径の310mm径セミフローティングペタルディスクを採用、デュアルピストンキャリパーと組み合わせることで、確実な制動力を確保している。
軽量な250のボディに400のパワフルなエンジンを積み、本格的な足周りとレーサーライクな車体デザインを持つマシン……こう聞いただけで、ニンジャ400がいかに高次元でバランスの取れたマシンなのかがわかるだろう。当然ライダーからの人気もあるわけで、モデルチェンジ以来、400ccクラスの車種別販売台数では常にトップクラスであり、カウル付きのロードスポーツではライバル車が少ないとはいえ、ダントツの人気を維持し続けている。
ニンジャ400の車体は250と共通ということで、フルカウルを身に纏っているが意外とコンパクトだ。車体を押し引きしての取り回しも400ccクラスとは思えないほど軽く、気をつかわずに行える。シート高も785mmとそれほど高くなく両足が着くので、立ちゴケや押している途中で倒してしまう不安がかなり低い印象だ。セパレートハンドルを採用しているものの、上半身の前傾もキツく無く、ごく自然なポジションが取れる。エンジンをかけると、アイドリングでの排気音は「ジダダダダ…」という地味めでおとなしい音だ。
走り出して最初に驚いたのはクラッチレバーを引いた時の軽さだ。アシスト&スリッパークラッチを装備しているので軽いのは予想していたが、指一本でも引けるかも、と思うぐらい予想外に軽く、昔の感覚で言えばMTの原付と錯覚するぐらいだ。これだけでも街中でのライディングのストレスは相当緩和されるが、それに加えて低速でも粘り強くトルクフルなエンジンのため、無駄にスロットルを開けて回転数を上げなくても機敏な動きが可能だ。普通に走る分には4000回転程度で十分で、軽い車体のおかげもあり混雑する一般道でも泳ぐようにスイスイと走ることができる。
郊外の空いている道路やちょっとした峠道では、それほど気合を入れずにリラックスしてのんびりと走っても楽しい。しかしスロットルを開け6000回転以上になると、エンジン音は「クォォォン」と雄叫びのような迫力あるものに変わり、走りの性格も一変して鋭いものとなる。高めのエンジン回転をキープしながら軽めの車体を活かしてヒラリヒラリとコーナーをかわしていくのは、大排気量車とはまた違った走りの楽しさを味わえる。
車体が軽いと高速道路での安定性が気になるところだが、レーンチェンジの際や多少路面のうねりがある場所でも不安は全くない。120km/h巡航は楽にこなせるし、車の流れをリードできるほど、さらにまだ余裕がある。セパハンとはいえハンドル位置は低すぎないのでツーリング時の疲れも少ないし、少し飛ばしたい時には伏せ気味に乗れば上体への風の影響がグッと減るので、スポーティな走りにも対応してくれる。
混雑する市街地から高速道路、峠道まで、どんな状況でもフレキシフルに対応できて、気負わずに乗れる……ニンジャ400は平均的な日本の道路や日本人の体格にジャストフィットするちょうどいいマシンなのでは、と感じる。海外では新たに4気筒エンジンのニンジャZX-4RRが発表されて話題だが、新モデルが日本で発売されたとしても、カジュアルに乗りこなせるニンジャ400の人気は当分衰えることはないだろう。
フロントマスクはシャープで引き締まったデザイン。ヘッドライトはLEDを採用しているが、ウインカーはバルブタイプだ。
セパレートハンドル、トップブリッジともにブラックフィニッシュされ、ハンドル周りは精悍なイメージとなっている。
ハンドル左側のスイッチボックスはヘッドライト上下とウインカー、ホーンのほか、前側にパッシングスイッチを備える。
ハンドル右側はキルスイッチとスターターボタンのみとシンプルだ。
メーターパネルは大きく配されたアナログのタコメーターと液晶パネルの組み合わせ。各種の警告灯が左側に集中するなど、見やすい表示となっている。
シートはライダーとパッセンジャーが完全に分かれたタイプ。レーサーライクだがクッション性はあまり期待できない。
リアシートはキーで簡単に取り外すことが可能。フロントシートはリアシート下のワイヤーを引くことで取り外せる。ETC2.0車載器はオプションだ。
フロントシート下に収納される車載工具はドライバーと六角レンチ、リアサスのプリロード調整用のレンチが入っている。
35kW(48PS)/10,000rpmを発生する並列2気筒398ccのDOHC4バルブエンジン。ニンジャ250と同じ車体にこのエンジンとくれば、走らせて楽しくないはずはない。
ステップはラバーなしのスポーティなタイプで、滑り止めのローレット加工が施されている。チェンジペダルは肉抜きされ、先端にはラバーを装備。
ブレーキペダルもチェンジペダル同様肉抜き加工されているが、ラバーは装着されていない。
車体左側にはコの字ピンタイプのヘルメットロックを装備しており、ツーリング先の駐車時などで重宝する。
リアサスペンションはリンク式で、5段階のプリロード調整が可能となっている。
リアフェンダーの根元部分左右に、荷掛けフックを装備。ちなみにタンデムステップホルダーの先端もフック状になっており、荷物の固定に便利だ。
フロントブレーキは310mm径のセミフローティングペタルディスクを採用。デュアルピストンキャリパーとの組み合わせで制動力は十分だ。
リアブレーキはディスク径220mmのペタルタイプにデュアルピストンキャリパーの組み合わせ。タイヤは前後ともダンロップのSPORTMAX GPR-300を履く。
リア周りは複雑な形状を採用しつつもシャープな造形だ。テール/ブレーキランプはLED、ウインカーはバルブタイプとなっている。
テスターの身長は170cmで足は短め。ニンジャ400のシート高は785mmで、片足ならかかとまでしっかり、両足でも母指球まで接地する。車重も軽いのでグラつきなどの不安はなかった。
愛車を売却して乗換しませんか?
2つの売却方法から選択可能!