【ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650 試乗記】シルキーフィーリングなコンパクトツアラー

掲載日:2023年02月01日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/ロイヤルエンフィールド東京ショールーム 取材・文/河野 正士 写真/長谷川 徹

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Royal Enfield Super Meteor 650

ロイヤルエンフィールドが長年培ってきた
クルーザー・シリーズの最新版

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2022年11月にイタリアで開催された世界最大級のモーターサイクルショー/EICMA2022(エイクマ)で、ロイヤルエンフィールド(以下RE)が世界初公開したのが新型車「スーパーメテオ650」だ。2018年に市場投入されたコンチネンタルGT650やINT650と基本骨格を同じとする、排気量648cc空冷OHC4バルブ並列2気筒エンジンを、「スーパーメテオ650」のために開発した新型フレームに搭載。ゆったりと構えるライディングポジションを採用したクルーザースタイルを造り上げている。

REは、2020年にメテオ350を発表。REにおけるクルーザーモデル再編をスタート。この「スーパーメテオ650」は、クルーザーファミリーを充実させるスーパーメテオ・シリーズの兄貴分といえる。REは1950年代から、クルーザーモデルを展開してきた。当時それらのモデルは巨大な二輪市場を持つ米国市場に輸出され、英国生まれのREブランドの発展を下支えした。また80年代から90年代に掛けてはREがリリースしたインド市場向けのツアラーモデルたちが、インドにおけるツーリングカルチャーを盛り上げ、いまに続くインドの巨大なバイク市場とバイクカルチャーの礎を築いたといえる。

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2000年頃から日本に輸入されていたREモデルは、ブリットと呼ばれた、英国スタイルのクラシカルな単気筒モデルだったが、同時期のインド市場では、サンダーバードと名付けられたクルーザーモデルが発売され、人気となっていた。

現在REがラインナップするスーパーメテオ・シリーズは、そのサンダーバードの進化版であり、サンダーバード・シリーズが350と500の異なる排気量モデルをラインナップしていたように、スーパーメテオも350モデルとともに、より排気量が大きなモデルの拡充は必須だったというわけだ。

ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650 特徴

クルーザー用に開発した新型フレームに
滑らかでトルクフルなツインエンジン搭載

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最大の特徴は、エンジンを低い位置に搭載する新型フレームを開発したことによって低重心化を実現。走行安定性を向上させていることだ。同系エンジンを搭載するコンチネンタルGT650やINT650が、ダブルクレードルフレームと呼ばれる、鳥かごの中にエンジンを抱えるように収めるフレーム型式を採用しているのに対し、スーパーメテオ650はステアリングヘッドから車体後ろへと背骨のように伸びるバックボーンフレームがエンジンを吊り下げる、スティールチューブラー・スパインフレームを採用。エンジン下側にフレームが通らないことから、エンジンを車体の低い位置に搭載することができるのだ。そしてエンジン下側に通るフレームを省略したことによるフレームの剛性バランスを整えるため、シリンダーヘッド前側にエンジンマウントを追加している。

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またもうひとつの特徴はクルーザーモデルにカテゴリーしながら、ネイキッドバイクのような立ち姿を持っていることだ。側面から見る車体は、一般的なクルーザーモデルのような、大きく後ろが下がったシルエットとは異なり、ネイキッドバイクとクルーザーバイクの中間的な、少し前上がりのシルエットを採用。それに跨がるライダーのライディングポジションは、上体が後ろに傾く一般的なクルーザーモデルとも、前傾するネイキッドやスポーツモデルとも違う、ごくごく自然なものだ。

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そのフレームに搭載するエンジンは、とてもトルクフルで扱いやすい。そもそも排気量648cc空冷OHC4バルブ並列2気筒の、REの2気筒エンジンは低回転から力強く、そして滑らかなトルク特性が特徴だ。それにくわえ、新型フレームに合わせて造ったエアクリーナーボックスの容量や形状、新たに開発したエキゾーストパイプやサイレンサーと言った排気系、それらの変更に合わせてプログラムし直したECUによって、いままで以上に低回転域でのトルクが豊かに、そして滑らかになっている。

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ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650 試乗インプレッション

バランスの良い車体が生み出す
クルーザーらしからぬ軽快さ

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クルーザーという言葉のイメージから想像する走りとはまったく違っていた。どちらかと言えばネイキッドモデルに近いが、それも的を射ていない。気の利いた言葉で表現出来ないのだが、スーパーメテオ650は、クルーザーとネイキッドの中間にあるバイクであり、とにかく乗りやすい。

そう思わせる要因のひとつはエンジンのフィーリングにある。並列2気筒エンジンはとにかくスムーズで、しかも力強い。お尻を蹴飛ばされたように、エンジンの強烈な鼓動感とともに加速する大排気量Vツインエンジン搭載のクルーザーとは、そのフィーリングがまったく異なる。そして、そのスムーズなエンジン回転から想像するよりもずっと力強く、そして低回転域からでも車体をどんどん前に押し出して行く。淡々と長距離を走るためだけでなく、混雑した街中でもキビキビと走ることを想定し、力強く、そして扱いやすいトルク特性を造り込んだと、開発陣は語っていた。

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また他のクルーザーモデルが大きく後ろが下がったボディラインを採用してるのに対して、スーパーメテオ650は極端に後ろ下がりなボディラインを採用していないことから、フロント荷重も多い。それによってフロントブレーキもしっかりと機能するし、イメージした走行ラインよりフロントタイヤが大回りするようなこともない。もちろんフロントにガッチリ荷重を掛けて旋回していくスポーツモデルやネイキッドモデルのそれとは違うが、とても素直なハンドリングで、あらゆるキャリアのライダーがそれぞれのペースで、スーパーメテオ650の走りを楽しむことができるだろう。

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新たに開発したフレームによって、低重心化やマスの集中化が図られていることも、素直なハンドリングの要因となっているだろう。クルーザーモデルらしい存在感と走行安定性を確保するため、スーパーメテオ650の車体は、他のREツインモデルに比べ、大きくて重い。しかしサイドスタンドから車体を起こすとき、そして走らせているときに、その重さや大きさはさほど感じない。それは低重心化とマスの集中化によるとろこが大きいと言える。

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低回転からスムーズで力強いトルクが発生することも、車体の大きさや重めの車重を感じさせない、スーパーメテオ650の走りの個性を造り上げている。わずかなアクセル操作で車体がドンドン前に出て行ったとき、交差点を曲がったり渋滞でクルマの後ろについて走ったりするときに車速が落ちてもアクセル操作だけでスルスルと走ることができたとき、そのエンジンフィーリングによって車体を軽いと感じることができる。また高速走路で6速巡航状態からアクセル操作のみで追い越し加速をするときの力強い加速や加速状態に入る素早さも、排気量650cc足らずで最大出力47PSのエンジンからは想像が付かないほどだ。それらはすべての車体の反応が、ライダーが感じる車体の軽さに繋がり、ライダーの気分をスポーティにさせる。そして6速100km/hを越えた辺りから、それまでシルクをなぞったときのように滑らかだったエンジンに、270度クランク採用の並列2気筒エンジンが高回転で回るとき特有の振動=ビート感が増してくる。そうするとさらに気分がアガって来る。スーパーメテオ650はゆったり走るだけのクルーザーじゃないのである。

ロイヤルエンフィールド スーパーメテオ650 詳細写真

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スーパーメテオ650には、フロントに大型スクリーンとともに、快適性を高めた肉厚なダブルシートと、シートブラケット&グラブバーを装着したバリエーションモデル「スーパーメテオ650ツアラー」もラインナップされている。

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エンジンの基本構成は、REがラインナップするツインモデルと同じだが、カバー類のデザインをスーパーメテオ650用に一新。モダンなルックスを造り上げている。エキゾーストフランジの上に、追加したエンジンマウントが見える。

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フレームはエンジンを吊り下げるように配置するスチールチューブラー・スパインフレームを採用。ネック周りは鋳造、スイングアームピボット周りは鍛造、その他の結合部にはプレス材と、異なる素材を組み合わせてフレームの剛性バランスが整えられている。

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REとして初の倒立フォークを採用。φ43mmのSHOWA製SFF-BPがチョイスされている。フロント19インチホイールを採用。ブレーキレバーおよびクラッチレバーは調整式。

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リアサスペンションを支えるリアフレームはループ形状となり、スタイリングにおいてもスーパーメテオ650の重要なアイテムとなる。リアサスペンションもSHOWA製。16インチホールを採用する。

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リアアクスルシャフトからステアリングヘッドへと伸びる、躍動感溢れるボディラインを強調する、ティアドロップ型の燃料タンク。新たに造り込んだ3Dのエンブレムもデザインされている。

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スタンダードのスーパーメテオ650には、ライダー&ピリオンシートが分かれた、セパレートタイプのダブルシートを採用。シートフォームに掛かる面圧を測定し、快適かつ操作性の良いフォーム素材や形状が選択され設計されている。

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RE初となるLEDヘッドライトを採用。LEDの利点を最大限に活かしながら、しかしモダンになりすぎないデザインを追求したという。ヘッドライトのほか、テールライトにもLEDに。クラシカルなデザインを踏襲している。

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シンプルで機能的なメーター周り。速度計、燃料計、距離計、選択ギア、時計、気温などが表示される。専用アプリと連動した、ターン・バイ・ターン式のナビゲーションシステムを採用し、サブメーターに表示する。

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左右2本出しのサイレンサーは、可能な限り車体に近づけてレイアウトされている。それによってバンク角を確保するとともに、重いサイレンサーを車体に近づけることでマスの集中化も図っている。

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ステップはクランクケース前側に配置され、足を投げ出すようなポジションとなるフォワードコントロールを採用。チェンジペダルはシーソータイプが採用されている。

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