【MVアグスタ ドラッグスター800 RR SCS 試乗記】クラッチ操作ほぼ必要なし! エキサイティングな走りがイージーに楽しめる

掲載日:2020年11月13日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/MVアグスタジャパン 衣装協力/KUSHITANI 取材・文/佐川 健太郎 写真・動画/星野 耕作 

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MV AGUSTA DRAGSTER 800 RR SCS

ドラッグスター800 RRの2020年モデルには革新的なスマートクラッチシステムが搭載されている。量産市販車としては唯一無二の最新システムの乗り味とは……。ドラッグスターのユニークな魅力とともにレポートする。

動画 『やさしいバイク解説:MVアグスタ ドラッグスター800 RR SCS』はコチラ

MVアグスタ ドラッグスター800 RR SCS 特徴

自動クラッチ搭載のストリートドラッガー

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アメリカ発祥のドラッグレーサーをイタリア流に解釈するとこうなった、というモデルがドラッグスター800シリーズである。その中でも「ドラッグスター800 RR SCS」は、最新のスマートクラッチシステム(SCS)を搭載しているのが特徴だ。

エンジンはMVアグスタの他の3気筒シリーズ同様、逆回転クランクシャフトを搭載した水冷並列3気筒DOHC4バルブ798ccで、最高出力はブルターレ800 RRと共通の103kW (140hp)、最大トルクは87Nm (8.87kgm)を誇るハイスペック仕様である。
これをスチールトレリス構造とアルミプレートを組み合わせたMVアグスタ独自のコンポジットフレームに搭載。ライドバイワイヤによる4種類(スポーツ/ノーマル/レイン/カスタム)のライディングモード、8段階設定のトラクションコントロールなども共通である。

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ベースモデルのブルターレ800 RRとの主だった違いは、よりアグレッシブにマス集中感を演出したフォルムの他、軽量アルミ製倒立フォーク、ワイヤースポークホイールに装着された200/50-17サイズのワイドなリアタイヤなどだ。

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そして極めつけは2020年モデルから新たに搭載されたSCS(スマートクラッチシステム)である。SCSはMVアグスタが米国・リクルス社と共同開発した自動クラッチシステムで、停止すると自動的にクラッチを切ってアイドル状態にしたり、再発進ではそのまま半クラ操作など一切必要なくスタートしたりできる優れもの。発進・停止や極低速域での半クラ操作から解放されるため操作が格段に楽になるだけでなく、ライディング自体も滑らかになるなどのメリットがある。そして、標準装備のクイックシフターと合わせると、ほぼクラッチ操作無しで乗れてしまうのが魅力だ。また従来のクラッチとの重量差はわずか36グラムで重量的なハンデになっていないことも驚きだ。

MVアグスタ ドラッグスター800 RR SCS 試乗インプレッション

前代未聞のUターンが得意なイタリアン

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ブルターレをストリートファイターとしたら、こちらはさらに尖がったヤンチャな感じ。アルミ鋳造ホイールにワイヤースポークと200ワイドタイヤでドラッグ感を出している。デザインも特にリアまわりがブルターレとは大きく異なり、車体の前後を大胆に切り落としたような凝縮感。一応タンデムもできるが、ほとんどソロ仕様に割り切った感じだ。デザインも面白い。ホットロッドのような躍動感のあるフォルムが印象的で、パーツのひとつひとつがイタリアンらしいアート感に溢れている。

そして、やはり目玉はSCS。リクルス製のSCSは数年前からオフロードレース界では名の知れたシステムで、滑りやすく半クラ操作が難しいガレ場などで絶大な効果を発揮することで名を上げた。

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乗ってビックリ。ニュートラルでエンジンを始動したら、クラッチを握らず1速に入れるとそのまま発進できる。通常の発進では半クラを当てるが、SCSはまるで上級ライダーがやるように“じんわり”と極めて丁寧にクラッチをつないで走り出し、止まるときはブレーキをかけて減速、そのまま停止すれば自動でアイドリング状態をキープしてくれる。その感覚はオートマに近いかも。違うのはクイックシフターと合わせれば左足の操作だけでシフトアップ&ダウンもできること。自分の意思で回転数やシフトタイミングを決められるしエンジンブレーキも使えるなど、スポーツライディングを積極的かつイージーに楽しむことができるのだ。まさにオートマとマニュアルのいいとこ取りだ。

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とりわけメリットを感じたのはUターン。クラッチ操作に気を遣う必要が一切なく、エンストもしないので、立ちゴケの恐怖からも解放される。「Uターンが得意なイタリアン」という前代未聞のマシンなのだ。。

直線番長かと思いきや、楽で快適で乗りやすい

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MAアグスタ独特の3気筒エンジンは荒々しく粒(ツブ)感があり、サウンドも金属質で、ある意味ノイジーだがそこが魅力でもある。アクセルを開けるとエキゾチックな3気筒サウンドが弾けるが、一定速で走っているとヘルメットの風切り音にかき消されてしまうほど静かだったのも意外だ。

走りについても、ドラッグスターのネーミングから直線ぶっ飛び番長をイメージしていたが違った。SCSの恩恵もあり、とても乗りやすい。想像してみてほしい。このクラスの高性能マシンでアクセル全開のまま発進することなど普通なら怖くてできないはずだが、デリケートなクラッチ操作をすべてSCSが代行してくれるため、文字どおりの全開加速が誰でも簡単にできてしまう(場所は選ぶが)のだ。シフト操作もスムーズでアップもダウンも左足の軽いタッチでこなしてくれる。結果的にライディングが楽で快適でもある。

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スイッチひとつで変えられる3種類のライディングモードも試してみたが、「レイン」はレスポンスも緩く穏やかで「スポーツ」は俊敏で爆発的、「ノーマル」はその中間的と明確にキャラが変わるところもイタリアンっぽい。とはいえ、1000ccのブルターレのように迂闊にスロットルを開けられない危うさはなく、ギリギリ扱える手の内感がある。その意味では公道でも十分走りのポテンシャルを堪能できるモデルと言える。

MVアグスタの中でも異彩を放つこだわりの逸品

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乗り味は全体的にカチッとしていて、他のMVアグスタ同様、車体と足まわりの剛性感の高さを感じる。これは独特のフレーム構造によるところが大きいと思う。スチールトレリスとアルミプレートからなるコンポジットフレームでエンジンを抱え込む独特の構造となっており、車体センターにギュッとマス集中した感じが伝わってくる。逆回転クランクの採用により加速時のフロントアップ、減速時のピッチングを抑える作用があるためか、ショートホイールペース(1400mm)の割に車体の姿勢が安定している。ムダな動きがない感じで、マルゾッキとザックスを組み合わせた前後サスペンションもしっかり減衰力が効いた高荷重型で、サーキットでも十分な仕事をしてくれそうなクオリティ。もちろん、ブレンボ製のラジアル4ピストンもいつもどおり盤石の安定感とコントロール性で一歩踏み込んだ走りを支えてくれる。また、ステム近くに機械式ステリングダンパーが付いているが、シンプルな構造ながらダイヤルで調整しやすく実用的だ。

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最後にライディングポジションについて。やはりシートは高めだが車体がスリムなので数値ほどは高さを感じない。ハンドルはワイドで近い位置に低めにセットされているため、腕を広げて前傾で乗っていく独特のスタイルになる。着座位置の自由度があまりないのだか、そこがMVアグスタの決めたベストポジションと理解して乗るといいかも。

アグスタというだけでも十分個性的だが、その中でもドラッグスターはこだわりの逸品と言える存在。高性能マシンに楽に美しく乗りつつ自己主張したい人、自分だけの世界観を持ちたい人にはおすすめだと思う。

MVアグスタ ドラッグスター800 RR SCS 詳細写真

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エンジンはF3 800/ブルターレ800 RRシリーズ同系のツインインジェクター装備の水冷並列3気筒DOHC 4バルブ798cc。最大出力103kW (140hp) /12,300rpm、最大トルク87Nm (8.87kgm) /10,100rpmに最適化され、カセット式6速ミッションとスリッパ―クラッチを装備。SCS仕様はリクルス製自動クラッチを装備する。

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マルゾッキ製ø43mm 倒立フォークとブレンボ製4Pラジアルモノブロックキャリパー&320mmダブルディスクにボッシュ製ABSを採用。軽量アルミ鋳造リムにゴールドニップル付きのワイヤースポークホイールを組み合わせた独特のデザインが目を惹く。

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リアサスペンションはSACHS製で、サブタンク付きのプログレッシブリンク式モノショックを採用。第一印象は比較的ハードな印象だが、アクセルを開けてしっかり荷重をかけていくと馴染んでくる感じだ。

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ブルターレ800 RR同様のアルミ製片持ち式スイングアームを採用。ゴールドのハブを持つセンターロック式のワイヤースポークホイールには200ワイドの極太タイヤを装着するなどこだわりのディテール。スラッシュカットの縦3本出しサイレンサーが挑発する。

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リアブレーキペダルの前側にもう一本のペダルが見える。シーソー式? と思いきやこれはペダルストッパー。パーキングブレーキ的にも使えるし、信号待ちなどで1速に入れたまま前後ブレーキを放してもクリープ現象で前進するのを防いでくれる。

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ブルターレ800シリーズと共通イメージのヘッドライトまわり。ハロゲンバルブで上がLO、下がHI、周囲はポジションランプになっている。よく見るとメーターバイザーのデザインは異なる。

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フューエルタンクもブルターレと共通デザインで上部のエラは張っているが、ニーグリップ部分は絞り込まれたスリムな形状だ。容量は16.5ℓ。

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スリムなシートまわり。ブルターレは前後セパレート形状であるのに対しドラッグスターは前後一体式でリアシートはさらにコンパクトに小型化されている。ほぼソロ仕様と言っていいだろう。

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異彩を放つテールまわり。ドラゴンの尻尾かサメの尾ビレの様にも見えるユニークなデザインだが、周囲の赤い部分がLEDテールランプになっている。

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ティアドロップ型のバックミラーは高さや角度も調整可能で、質感も高く取り付けもしっかり。見やすいがその分左右への張り出しは大きめだ。GPマシンのようなレバープロテクターが装着されている。

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ステム上部にステアリングダンパーを装備。コンパクトサイズでダンパー調整も素手でダイヤルを回すだけと簡単。ハンドリングがけっこう変わるので街乗りやサーキット走行など幅広いシチュエーションで使えそう。

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鋳造アルミ製サイドプレートを備えたALS鋼管トレリスフレームを持つMVアグスタ独特のフレーム構造。ヤグラの内側には赤色のヘッドカバーを持つ3気筒エンジンが見える。

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タンデムステップは収納式になっていて、使わないときはシートレールに沿うように固定できる仕組み。写真は引き出したところだが、機能的かつ美しくデザインされている。

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フル液晶タイプのマルチディスプレイを装備。シンプルなモノクロタイプだが速度、回転数、ギヤポジション、ライディングモードなどの情報が見やすく整理されている。

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