掲載日:2019年05月29日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/栗栖 国安 写真/井上 演
ポジションは、いわゆるストリートファイター系に近いもので、従来からのネイキッドモデルと比較すると、上体はわずかに前傾する。だが、そこに窮屈さは微塵もない。シート、ステップとの位置関係も自然だ。シート高は820mmとやや高めだが、タンクとのつながり部分が絞り込まれたシート形状や、1Gでのサスペンションの沈み込みもあり、足つき性に大きな不満はない。
エンジンの始動性は非常にいい。セルスターターを操作したと同時に水冷直4は目覚める。スズキイージースタートシステムが功を奏している。カウルレスでエンジンはむき出しだが、メカノイズなどの耳障りな音はなく、右に取り回されたマフラーからの低く力強いサウンドが頼もしい。
意地悪く2,000回転以下でクラッチミートしてみるが、エンジンがストールすることなくスルスルと走り出す。低速トルクの太さに加えて、低回転走行時に、エンジン回転数、ギアポジション、スロットル開度、クラッチスイッチの情報を用いて制御するローRPMアシスト機能が効いているのだ。渋滞の中を低速走行したり、Uターンする場面は日常的によくある。こうした極低速での取り回し時に立ちゴケしてしまう例は少なくない。ローRPMシステムはそうした不測の事態を招きにくいありがたい機能だ。
スロットルレスポンスは非常にリニアで吹け上がりも素早い。そしてパワー感も十分に伝わってくる。にもかかわらず、凶暴なところがない。アクセル操作に敏感すぎるとギクシャクした走りになりがちだが、GSX-S750ABSのエンジンにはそれがない。パワフルなのに低速で使いやすいのだ。
装備するトラクションコントロールシステムは3モード+オフ。通常走行では2が標準で、1はスポーツライディング、3がレインなど滑りやすい路面状態に適したものとなっている。したがって、一般道を走行する限り、2もしくは3の設定でつねにタイヤは路面をしっかりと捉えてくれる。モード切り替えも左手のスイッチで簡単に操作できる。モードはフルLCDインストルメントパネル内に表示されるので一目瞭然だ。
フレームやサスペンションも基本的にはGSX-R750をベースとしているが、サーキット走行のようなハードライディングで進化を発揮する設定ではなく、市街地の低速走行からワインディングでのスポーティな走行まで、あらゆる走行状況に応じて最適な性能が発揮される設定になっている。そのため軽快な中にも安定感があり、素直でニュートラルなハンドリングを実現している。このハンドリングはエンジン特性ともマッチしているので、だれにでも操作しやすい。だからこそGSX-S750ABSは、ストリートというステージで最高のパフォーマンスが発揮できるのだ。
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