掲載日:2018年07月23日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
ヘッドライトはLEDでロービームの際は左側のみが点灯する。ライト上部には跳ね上がった眉毛のようなポジションランプを装備。ウインカーはクリアレンズにオレンジのバルブを採用している。写真はハザード点灯中のもの。
ヘッドライトユニット自体はMT-09トレーサーと共通だが、周囲のカウルは新設計だ。従来モデルにあったハチの巣状のパネルなどがなくなり、滑らかなデザインとなった。
スクリーンの面積は大きくなり、高速域での防風性がアップした。高さは5mmごとに10段階調節が可能で、内側中央のパーツをつまむことにより、片手で簡単に行える。
メーターの左奥にはDC12Vのシガーソケットを装備する。下に見える十文字のノブはヘッドライトの光軸調整用で、右側にも同じものがある。
GT専用装備となるTFTフルカラー液晶のメーターはとても見やすい。燃料計、時計、シフトインジケーター、外気温、平均・瞬間燃費などのほか、走行モードやトラクションコントロール、グリップウォーマーの設定状況など、多くの機能を表示できる。背景の基本は昼が白、夜は黒だが、任意の設定が可能だ。
左グリップにはライトの上下切り替えやハザードのほか、トラクションコントロールと走行モードの設定スイッチを備える。GT専用となるクルーズコントロールの設定、操作スイッチも装備。中央でクルーズコントロールモードのオンオフを切り替え、シーソースイッチで速度の設定や微調整が可能だ。
右グリップにはスターター兼キルスイッチと、メニューダイヤルを装備。クルクル回すとメーターの表示内容が変わり、押し込むことで選択を行う仕組みだ。
ハンドルバーは中央部の径が太いテーパータイプを採用。従来モデルより車体幅が狭くなったのに伴い、実測はしていないがグリップ部は少し内側、そして手前になった印象で、より日本人にも乗りやすいポジションとなった。
GTのフロントフォークはフルアジャスタブルタイプ。トップ部の右には伸び側、左に圧側の減衰力調整用ネジを装備する。
ブラッシュガードはMT-09トレーサーに比べるとかなり小ぶりでスッキリとしたデザインになり、バーエンドのウエイトも省略された。腕への防風効果は多少弱まったかもしれないが、風によるハンドルへの影響も減ったはずだ。
シートはデザイン、形状ともに一新。シート高が5mmアップしたがその分スポンジが厚くなり、快適性が増した。グラブバーもスッキリとしたデザインに変更されている。
シートは簡単にハイとローを調節可能。作業は樹脂製のパーツをガイド穴に合わせて前後に変更、シートを差し込む部分を変えるだけなので数分で完了する。
シート高はローが850mm、ハイが865mm。高速道路を長時間走り続ける場合などはハイにしたほうが膝の曲がりが少なく、楽になる。
GTの専用装備となるクイックシフター。アップのみ対応というのが惜しいが、クラッチを握らなくても素早くシフトアップできるのはライダーの負担をかなり減らしてくれる。
フレーム形状はダイヤモンド。スリムで軽量でありながら高い剛性を誇るCFダイキャストアルミニウム製だ。
GT専用装備として、リアショックにはダイヤルにより工具なしで簡単にプリロード調整ができるリモート操作機構を採用している。伸び側の減衰力調整はショック下に調整ダイヤルを備える。日本仕様はヘルメットホルダーも装備する。
CP3と呼ばれるMT-09シリーズ共通の水冷DOHC4バルブ直列3気筒エンジンは、最高出力85kW(116PS)/10,000r/min、最大トルク87N・m(8.9kgf・m)/8,500r/minを発生する。吹け上りは極めてスムーズだ。
エンジンの左サイドはラジエターやウォーターポンプからの太いパイプとエキゾーストパイプが、有機的かつ官能的な曲線美を見せる。
マフラーは従来モデルと同様のショート&ダウンタイプで、スパルタンなイメージを醸し出すとともにマスの集中化に貢献している。奥に見える触媒部分の存在感がかなり大きい。
ツアラーモデルらしく、センタースタンドを標準で装備している。チェーンやリアホイール周りのメンテナンス時には特に重宝する。
タンデムステップ&ホルダーも形状が見直され、パッセンジャーがより快適に乗れるよう改良されている。
車載工具は12/14mmのレンチのほか、リアシートの裏側にドライバーとヘキサゴンレンチを備えている。また、ヘルメットホルダー用のワイヤーも付属する。
フロントフォークはインナー径41mmの倒立タイプで、ゴールドのアウターチューブとリムストライプはGT専用となる。298mm径フロントディスクブレーキには対向ピストン4ポットラジアルマウントキャリパーが組み合わされ、強力な制動力を発揮する。ABSも標準装備だ。タイヤサイズは120/70ZR17M/C (58W)。
リアのディスク径は245mmとなっている。ホイールは軽量アルミ製の10本スポークタイプだ。タイヤサイズは180/55ZR17M/C(73W)で、銘柄はダンロップのSPORTMAX D222を履く。
従来モデルよりも60mm延長した新設計のロングリアアームを新たに採用し、高速走行時や旋回時の安定性が増した。よりツアラー指向が高められたが、切り返しの軽さやキビキビ感は変わらない。
従来同様テールランプはLEDを採用する。ウインカーはクリアレンズとオレンジバルブだ。グラブバー下のサイドケース取り付け部分もすっきりしたデザインに変わったほか、リアフェンダーの形状も変更されている。
ヨーロッパではGTに標準装備だが、日本ではオプションとなるサイドケース。容量は片側22Lで、純正だけあって取り付けた姿もスッキリしている。ハンドル幅とほぼ同じ張り出しのため、狭い道でも気苦労は少ない。フルフェイスの収納は無理だが、Bucoのジェットヘルメット(M帽体)はギリギリ収納できた。
トラクションコントロールのモードが強/弱/オフの3段階選べるので、滑りやすい路面でもより柔軟に対応が可能だ。アップライトなポジションのためフラットダートでもそこそこ走れるが、跳ね上げた石でオイルパンにダメージを受けやすいので過度な期待は禁物だ。
テスターは身長170cmで足短め、体重72kg。片足では親指の付け根が着くか着かないか、ぐらい。両足だとツンツン状態だ。足つき性のいいマシンではないが、見かけの割に車両重量は軽めなので、慣れれば空荷であればそれほど不安はない。愛機であるMT-09トレーサーよりも5mmシートが高いがほとんど気にならなかった。
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