掲載日:2018年06月26日 試乗インプレ・レビュー
取材協力/ヤマハ発動機
取材・文/青木タカオ 撮影/森下光紹
サイドスタンドを払って車体を起こすだけで、圧倒的な軽さを感じる車体。跨ってすぐに感じるのは、内ももをはじめとする下半身のフィット感の良さ。シート座面が全体にわたって拡大され、ライディングポジションの自由度が上がっているにもかかわらずニーグリップがしっかりできる。もともと車体との一体感が強く感じられるMT-07だが、その感覚を体格を問わず味わえるようになった。
そして、前後サスペンションの動きに落ち着きが加わっている。従来型はオフロードマシンのようにサスペンションがソフトに動き、前後のピッチングを大きく感じる足まわりだったが、新型ではしっとりとしたダンピング特性となり、車体の挙動に上質感が伴っている。サスペンションは単に硬くなったわけではなく、優れる路面追従性をそのままにしっかりと踏ん張り、スロットル操作やライダーの動きにクイックに反応してくれるように進化したのだ。
前後17インチの足まわりは、これぞニュートラルステアと言わんばかりの軽やかなハンドリングを生み、その旋回性の高さは相変わらずだ。コーナリングのキッカケは乗り手の腰を中心にわずかな挙動を与えるだけで、ハンドルには手を添えていればいい。尻をずらし、シートの着座位置をイン側に寄せるといったアグレシッブな体重移動をしようものなら、車体はさらにクイックな反応を見せ、思いのままに前輪をコーナーの出口に向かわすことができる。素晴らしいと声を大にして言いたくなる旋回力である。
エンジンは常用回転域で力強く、低中回転域で図太いトルクが漲っている。小型フル液晶型のマルチファンクションメーターを覗き込むと、4,000〜8,000のエンジン回転数のバー表示が太いが、まさにその領域でのトルク感は強烈と言っていい。アクセルをワイドオープンすれば軽い車体が弾け飛ぶかのように鋭く加速し痛快きわまりないが、ワイドレンジで粘り強く力を発揮するから扱いやすく、いつでも自在に操れる感覚が持てる。
不等間隔爆発を生む270度位相クロスプレーン型クランクシャフトを採用した水冷DOHC並列2気筒688ccエンジンは、レッドゾーンまでスムーズに回って全域でしっかりとトルクを発揮し、絶えず路面を駆動輪がしっかり捉える優れたトラクション性能が伴う。これはMT-09などにも通じる、MTシリーズの持ち味と言っていい。
軽量、スリム、コンパクトな車体は舌を巻くほどに素晴らしきヤマハ伝統のシャープなハンドリングがあり、心臓部は強烈なまでに駆動力を路面へと伝えるリニアリティを追求したクロスプレーン思想に基づいた強力エンジン。アグレシッブだが、扱いやすくフレンドリーなので日常使いにも気兼ねなく乗れる。これぞヤマハMTシリーズ! とヘルメットの中で思わず頬が緩むのだった。
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