
掲載日:2017年12月26日 試乗インプレ・レビュー
Text / Takeshi Goto Photo / Takao Isobe
Z900RSで驚いたのはエンジンを始動した瞬間の排気音と力量感に溢れたフィーリングだった。今までの水冷マルチとはずいぶん違う。カワサキが初めて取り組んだという排気音のチューニングが相当に効いているのだろう。チューニングされた空冷Zのような迫力がある。
そしてクラッチをつないだ瞬間、さらに驚いた。3000rpmくらいしか回していないのに素晴らしいトルクで車体が押し出されたのである。そのままスロットルを開けるとドロドロと4本マフラー的な排気音を発しながら加速していく。ここまでの排気音とフィーリングは、期待を完全に上回っていた。しばらくは5000rpm以下で走ってみる。実にいい感じだ。"エンジンに急かされる感覚"がない。この低回転での力強さと排気音がとても楽しいのである。
この領域でのハンドリングもずいぶん落ち着きがある。17インチホイールのネイキッドに乗った時、いつも思うのはバイクがバンクした瞬間、すぐに旋回していこうとすること。別に乗りにくくはないし、出来も良いのだけれど、Z1から乗り換えるととても味気なく感じる。
その点Z900RSは、17インチとしては落ち着きのあるハンドリングになっている。もちろんZ1のようなドッシリした感じや18インチ、19インチのマシンのゆったりとステアリングが切れていくような感じはないけれど、飛ばさなくてもマシンとの対話を楽しみながらコントロールすることができるのだ。
Z900RSは、サーキット走行でも相当に高いレベルまでいけてしまう。高回転を常用してもレブリミットまで気持ちよく回っていくしパワーも十分。そして先に説明したように落ち着きのあるハンドリングなものだから、コーナーの進入ではかなり思い切ったツッコミができる。
スーパーバイクを彷彿させるこのポジションでマシンをねじ伏せるように走るとテンションが急激に上がってくる。サーキットで走ってもまったく問題が出ないくらいに車体の出来もいいのだけれど、このマシンでコースに飛び出すとそういう雰囲気になってしまうのだ。
バンク角もそこそこにあるから、普通のライダーがたまにサーキットを走る程度なら問題ないはず。ステップあたりを変えてやるだけで相当なバンク角を稼げることだろう。
ツーリングからサーキットまでこなせるバイクは今までにもあったけれど、Z900RSの魅力はそこに空冷4気筒的荒々しさや迫力が常にエッセンスとして加えられているところ。乗ってみればわかるが、これが実に楽しい。
Z1乗りからしても十分に魅力的だ。ただ、もしも自分が購入して使うことを考えるとちょっとスポーティーすぎる。バイクをストリートで使っている平均速度は高速道路を使わなければせいぜい30km/hとか40km/hくらいのもの。オレがZ1に乗り続けているのは、そこの部分がとても楽しいからだ。そしてたぶん他の国産旧車に乗るライダーも似ていると思う。Z900RSに乗って“惜しい”と思うのはその点である。
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